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普通のおじさんの異世界鑑定譚  作者: あいら


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第26章 買い出し

冒険者ギルドを出た瞬間、アキラはふうっと息を吐いた。


「……登録だけで、こんなに疲れるとは」


 横を見ると、ナイトは対照的に元気いっぱいだ。

 羽を小刻みに揺らしながら、街の景色を興味深そうに眺めている。


「クゥン!」


「分かった分かった。まずは買い出しだな」


 ダンジョンに行く前に必要な物。

 それは冒険者ギルドでも、きちんとリストとして渡されていた。


 ――保存食

 ――水袋

 ――食器

 ――簡易調理具

 ――寝具


 テント・・・石だと留められないか?

 寝袋を買っておくか


 他、ナイフも欲しいな。


 ――予備の衣服

 ――ロープ

 ――松明、火打ち石


 合理的で、無駄のない一覧。


(……でも)


 アキラの脳裏に、前世の記憶がよみがえる。


 週末のキャンプ。

 準備段階が一番楽しくて、

 「使わないかもしれない物」をつい買い足してしまう、あの感覚。


「……キャンプ、だよな」


 思わず、独り言が漏れた。


 ダンジョン。

 本来なら命懸けの場所だ。


 だが――

 ナイトが隣にいて、

 マジックバッグがあって、

 鑑定という切り札がある。


(不思議と、怖さより楽しさが勝ってるな)


 まず向かったのは、食料品を扱う露店通りだった。


「保存食、干し肉、硬パン……」


 ギルドのリスト通りの品を、手際よく選んでいく。

 価格と量を見比べ、自然と最適解を導き出すあたり、

 前世の課長時代がしっかり染み付いている。


「……あ、これもいいな」


 燻製チーズ。

 干し果実。

 ナッツ類。


「長持ちするし、栄養もある。……士気も上がる」


 完全にキャンプ目線だった。


 ナイトは魔物を狩ってそのまま食べるだろうから、いらないだろう。


 次に向かったのは、雑貨屋。


 ロープは一本多めに。

 布は、汚れた時用と、応急処置用を兼ねて。


「……これは、いらないかな」


 そう思って手に取ったものも、

 一度鑑定してみると意外な耐久性が分かり、

 結局バッグに入れる。


(容量、余裕あるし)


 マジックバッグの存在が、判断を甘くする。


 気づけば、ギルドのリストを大幅に超えた量になっていた。


「……まあ、最初だからな」


 自分に言い訳しながら、

 調理器具の店にも立ち寄る。


 簡易鍋。

 折り畳み式の皿。

 木製のカトラリー。


「……本当に、キャンプだな」


 笑いがこぼれる。


 前世では、仕事に追われて、こういう準備をする時間すら、贅沢だった。


 異世界に来て、命の重みは増したはずなのに――なぜか、心は軽い。


「クゥン?」


 ナイトが、不思議そうにアキラを見上げる。


「なんでもないよ」


 頭を撫でるとふさふさの毛が指に絡んだ。


「……楽しいだけじゃ、駄目だけどな」


 アキラは、ふっと表情を引き締める。


 ダンジョンは、遊び場ではない。

 油断すれば、命を落とす。


 だからこそ――準備は、やりすぎるくらいでいい。


 最後に、薬草屋で簡易回復薬を数本購入し、水袋を補充する。

 それらをすべて、マジックバッグへ収納。


 見た目は何も変わらないのに、

 中にはこれだけの物資が詰まっている。


「……すごいな、これ」


 改めて感心する。


 夕方の風が、心地よく頬を撫でた。


「さて」


 アキラは、ナイトを見る。


「明日はいよいよ、ダンジョンだ」


 ナイトは、一瞬だけきょとんとし、

 次の瞬間、全身で喜びを表現した。


「ワン!!」


 羽がばさっと広がり、

 尻尾が止まらない。


「……本当に、好きなんだな」


 その姿を見て、

 アキラは自然と笑っていた。

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