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普通のおじさんの異世界鑑定譚  作者: あいら


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第25章 冒険者登録

冒険者ギルドは、商人ギルドとはまた違った熱気に満ちていた。


”鑑定”の仕事で、もう何度も足を運んでいるが、やはり独特の気配はいつも感じる。


 金属の擦れる音。

 革鎧がきしむ音。

 酒と汗と血の匂いが、混ざり合って漂っている。


 隣では、ナイトが落ち着きなく尻尾を振っている。

 羽は畳まれているが、白く長い毛並みと、ただならぬ存在感は隠せていない。


 受付の冒険者ギルド職員――筋肉質な男性が、二人を見て一瞬固まった。


「……従魔、ですか?」


「はい。天犬です」


 アキラが淡々と答える。


 次の瞬間。


「て、天犬!?」


 声が裏返った。


 周囲の冒険者たちが、一斉にこちらを見る。

 ざわり、と空気が揺れた。


「本物……?」「羽、生えてるぞ……」「白い……」


 ナイトは、そんな視線を気にする様子もなく、

 アキラの足元にぴたりと座る。


 それだけで、周囲のざわめきは一段落した。


「し、失礼しました」


 受付職員は咳払いをして姿勢を正す。


「今日のご用件は?」


「ダンジョンに行こうと思って」


「ダンジョン利用の登録ですね?」


「はい」


「……即時承認です」


 迷いは一切なかった。


「むしろ、登録して頂かないと困ります」


(そういう扱いなんだ……)


 アキラは、天犬という存在の重さを改めて実感する。


 登録が終わると、次に案内されたのは、ギルド奥の保管室だった。


「ダンジョンに入る際、必須なのがマジックバッグです」


 職員が説明する。


「基本、販売はしていません。

 高価ですし、悪用される恐れもあるので」


「なるほど……レンタル制ですか」


「はい。死亡時の回収も含めて、です」


「……回収?」


 アキラが聞き返すと、職員は何の躊躇もなく答えた。


「万が一、ダンジョン内でお亡くなりになった場合、

 マジックバッグの中身は、冒険者ギルドに帰属します」


「……なるほど」


 アキラは、思わず苦笑した。


(保険と相続が一体化してるな……合理的だけど)


 棚に並べられたマジックバッグは、見た目はどれも似ている。

 革製で、地味な色合い。


「容量と耐久は、ランダムです」


「鑑定、使っていいですか?」


「どうぞ」


 アキラは、一つ一つに手を触れた。


 ――鑑定。


 容量。

 耐久。

 劣化状態。


(……これと、これ。あと、これだな)


 三つほど候補を絞り、その中から最もバランスの良い一つを選ぶ。


「こちらで」


「……それ、当たりですよ」


 職員が感心したように言った。


「容量大、耐久高。

 普通の冒険者なら、引き当てるのに何度も借り直します」


「運が良かったです」


 そう言いながら、内心では確信していた。


(鑑定がなかったら、絶対に分からない)


 バッグを受け取り、背負ってみる。

 見た目よりも軽く、体への負担は少ない。


 ナイトが興味深そうに匂いを嗅ぎ、

 「クゥン」と一声鳴いた。


「……これで準備完了ですね」


「はい。あとは、ダンジョンへ向かうだけです」


 冒険者ギルドを出ると、外の空気がやけに澄んで感じられた。


 アキラは、バッグの紐を調整しながら呟く。


「万が一死んだら、中身はギルド行き、か……」


 ナイトが、不思議そうに首を傾げる。


「いや、なんでもない」


 アキラは笑って、ナイトの頭を撫でた。


「死なない前提で行こう。……散歩なんだからな」


 ナイトは、理解したのかしていないのか、

 ただ嬉しそうに尻尾を振った。

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