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普通のおじさんの異世界鑑定譚  作者: あいら


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第18章 男爵叙任

それは、あまりにも何気ない報告から始まった。


 いつものように商人ギルドの執務室。

 書類に目を通していたグラハムは、アキラの表情を見て手を止めた。


「……何かあったかね?」


「はい。従魔が孵化しましたのでご報告を」


そうなのだ!昨日とうとう従魔の卵が孵化をした、

自分の部屋に帰ると、小さな犬が走り回っていてびっくりした。


普通産まれたての犬は、目も開いていず、

恐らくだが走り回ったりはしないだろう。


外見は犬だが、確かに魔物だとかんじさせた。


いや、外見は犬というには、少し問題がある。

産まれた従魔には羽が生えていたのだ。


グラハムさんの従魔にはこんなのはなかったと思うが、

まあ、魔物だしと、そんなものだろうと思う事にした。


 グラハムは椅子に深く腰を下ろし、腕を組む。


「ふむ。卵は無事に孵ったのか?」


「はい、従魔は犬型をしていて、犬にしか見えないのに、

 うちの子は羽が生えていて、やっぱり魔物だと感じました」


 次の瞬間。


「…………は?」


 空気が凍りついた。


 グラハムは聞き返した。

 それも、ギルド長としてではなく、一人の人間として。


「……もう一度言ってもらえるかね」


「え?はい、従魔に羽が生えていて・・・」


 沈黙。

 次いで――。


「馬鹿な……」


 グラハムは、思わず立ち上がっていた。


「……君は、どれほどのものを手に入れたか分かっているのか?」


「え?」


 グラハムは、深く息を吐いた。


「羽が生えた従魔は一種類しかない……天犬だ……ほとんど伝説の神獣だぞ、

 ……これは、私の一存で済む話ではない」


 その日のうちに、王宮へ急報が送られた。


 ――鑑定士アキラ、天犬の従魔を取得。


 王宮は、文字通り騒然となった。


 数日後、アキラは王宮に呼び出された。


 まさか王宮に足を踏み入れる日が来るとは・・・


 白い石造りの白は、荘厳だがどこかこじんまりとしている。

 本当に最小限の機能しか備えていない感じだ。


 内部も質実剛健といった感じで、華やかさより、

 重さを感じる、要塞といった雰囲気だ。


 この城とは全く違った外見を持つ、華やかな離宮もあると聞いているので、

 賓客のもてなしなどはそこで行うのだろう。

 

 そんな、どちらかと言うと質素な城の内部だが、

 謁見の間に入ると、今までの雰囲気ががらりと変わる。

 威厳と尊厳に溢れ、ここが王宮である事を改めて認識させられるような空間が広がっていた。


 赤絨毯の先、玉座に座るのは――王、バルティウス。


「鑑定士アキラ。よく来てくれた」


 その声には、威圧よりも好奇心が混じっていた。


「報告は聞いている。天犬――それも、神獣だそうだな、

 結論から言おう。君を――男爵に叙する」


 ざわめきが走る。


 平民からの叙爵、それが何を意味するか、アキラは理解していた。


 天犬という存在は、個人が持つには危険すぎる力だ。

 だからこそ、国家は「責任を持たせる」必要がある。


 貴族位。

 法と義務。

 そして、国家への忠誠。


 こうして。


 陣内玲――アキラは、平民の鑑定士から、

 **男爵アキラ・(名は後日付与)**として、新たな立場を得た。


 ギルドに戻ったその日、職員たちは一斉に立ち上がった。


「お、おめでとうございます……!」


「男爵様……!」


「いや、今まで通りでいいですから」


 慌てて手を振るアキラに、ロイドが腹を抱えて笑う。


「ははっ! 無理言うなよ! 平民が男爵だぞ!」


 グラハムは、静かに頷いた。


「……君は、もうただの鑑定士ではない。だが」


 その目には、いつもの老獪な光が宿っていた。


「それでも君は、君のままでいるだろう」


 アキラは、胸の奥に不思議な重みを感じていた。


 誇り。

 責任。

 そして――守るべきものが、確実に増えた実感だった。

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