悪女と呼ばれた継母の本心
「今日からわたくしが、あなたの母親を務めます」
ある日突然我が家に現れたアリアンヌという女性は、顔を合わせるなりそう挨拶した。
綺麗な長い銀髪でとっても美人。だけど、なんだかその表情は暗かった。
「母親……?」
「だあれ?」
人見知りな幼い弟のレオンは私の後ろに隠れて、様子を伺っている。
継母が来るなんて聞いてない。
アリアンヌの隣でいつも通りのつまらなさそうな無表情の父に、どういうことだと私は詰め寄る。
「お父様! 一体どういうつもりで……」
「父上との約束だ。お前たちには母親が必要だろう。お前たち姉弟を引き取る条件として、数年のうちに結婚し継母を用意することは最初から決まっていたことだ」
私、ローズと弟のレオンは訳あってサリフェス侯爵家に引き取られた身だ。
父親である侯爵とは血の繋がりはなく、人嫌いでニコリとも笑わない父はいつも何を考えているのかよく分からない人だった。
他人を寄せつけない性格もあってか未だに独身で、将来はレオンを後継者とするつもりなのだろう。
それなのに、急に私たちの知らない女性と結婚してこの家に連れてくるなんて。
しかも、あのアリアンヌという女性、これまで何度か老いた貴族の男性と結婚し遺産を貰い受けるという詐欺まがいのことを繰り返しているのだと。
「まあ、旦那様がお選びになった方ですから私共からはなんとも言えませんね……。しかし、旦那様は社交嫌いですのにいつの間にお知り合いになられたのかもさっぱりでして……」
継母のことを尋ねれば、教えてくれた執事は困った顔で歯切れの悪いことばかり言っていた。
お父様は人付き合いが苦手で、私たちにすらいつも興味が無さそうな態度だった。
それなのに、評判の良くない女性と知り合って間もないのに結婚するなんて、普段のお父様だったら絶対にありえない。
私たちの実の親は、お父様の姉夫婦だった。
それで、二人の両親からは結婚することを条件に付けられていたのは私も知っている。
けれど、だったら尚更結婚詐欺師のような人を選んだりするだろうか?
間違いない。
お父様はあの人に騙されている。
「レオン。私が良いって言うまで、絶対にあの人に近づいちゃだめよ」
「ねえしゃま、でもぼく……」
「大丈夫よ、レオンは私が守ってみせるから!」
レオンの小さい頭をわしゃわしゃと撫でてやれば、かわいい笑い声を上げて膝に抱きついてくる。
レオンをなだめつつ部屋に残し、私は一人偵察へと向かう。
「あの人の部屋は確かこっちに……」
この家のお金を奪うつもりなのかもしれないが、そうはさせない。
絶対に悪事の証拠を掴んでやる。
そう意気込んだ時だ。
「あらローズちゃん、こんにちは」
「ひっ!」
背後から急に声をかけてきたのは、今まさに探していたアリアンヌだった。
「ご、ごめんなさい! 驚かせちゃったわね。今は何をしているの? かくれんぼ、それとも探偵さんのごっこ遊び?」
「……え?」
引きつったような笑みを見せながら、アリアンヌは私の頭を撫でる。
「あ、あのね、ローズちゃんたちにプレゼントがあるの。よっ、よかったら貰ってくれないかしら?」
ぎこちない喋り方で、アリアンヌは私を部屋へ引き込むと大きな箱をいくつも持ってくる。
「いらなかったら捨てていいわよ! だから、その、気にしないで! わたくしがあげたいだけだから」
アリアンヌは恥ずかしそうにしているが、私の目は箱の中身に釘付けだった。
「な、なんで、このくまさん……」
なんと、かわいいふわふわの白いくまのぬいぐるみが入っているではないか。
今すぐ抱きしめて頬ずりしたい気持ちをぐっとこらえる。
私はもう十二歳だ。貴族の子女へのプレゼントととして、子ども扱いしすぎではないだろうか。
「侯爵様は家を空けることが多いのでしょう? だから、この子が入ればベッドが寂しくないかなって……」
指摘してやろうと思ったのに、アリアンヌはちゃんと選んで買っていたようだった。
アリアンヌの優しそうな顔を見て、反論する気が失せてしまう。
「お父様と一緒に寝たりなんか……」
「そっ、それもそうね……! おかしなことを言ってごめんなさい」
「でも、この子は嬉しいかも……」
そっとくまを抱き上げると、アリアンヌは涙目になりながら嬉しそうにしている。
断じてくまさんに釣られたわけじゃないわよ。
本当はかわいいものが好きなのにもうそんな年齢じゃないだろうとお父様から言われたのを気にしてたとか、全然、そういうのじゃないから。
でも、一人で寝るのが寂しいのは本当のことだった。
広いお屋敷はしんとしていて、みんなが寝静まった夜は誰の声も聞こえない。
お父様も帰ってこないし、レオンも口には出さないが寂しさは感じているはずだった。
「それでね、こっちはレオンくんへのプレゼントよ」
「わあっ! すごい、とっても綺麗!」
幼子が読むにしては少し分厚つすぎる本だと思いきや、開くと絵が飛び出る仕掛け付きの絵本だった。
綺麗な景色がばっと飛び出てきて、きらきらした星空や異国の風景など、絵だけでも十分楽しめるぐらい。
「ローズちゃんも気に入ってくれた? じゃあ、ローズちゃんの分も新しく用意してあげるわね。この絵本、たくさんシリーズが出ていてとっても面白いのよ」
「……なんで詳しいんですか?」
アリアンヌは結婚歴があるとはいえ、子どもはいないとの話だった。
やっぱり、私たちを手懐けるためにわざわざ用意したんだろう。
「ち、違うのよ! 実はね、作者が知り合いの人なのよ。それで、あなたたちと仲良くなりたくてプレゼントしようと思って……」
「知り合い?」
「ええ。今度、アトリエに連れて行ってあげるわよ。とっても面白い人なの。きっと楽しいわ」
絵本作家と知り合いなんてすごい、とわくわくしかけたが誘惑に負けてはいけない。
これだけで信用できるものか。
「おねえしゃま……」
ドアの隙間から覗いていたのはレオンだった。慌てて駆け寄る。
「レオン! 来ちゃダメって……」
「まあ、レオンくん。こっちへいらっしゃい。一緒に遊びましょう」
アリアンヌに言われて、レオンはぽてぽてと歩いてくる。
人見知りのレオンがこんなに簡単に懐くなんて、信じられない光景だった。
レオンはアリアンヌの膝の上で楽しそうに絵本を読んでいる。
アリアンヌの朗読も優しい声音で、聞いているとなんだか眠たくなってきた。
このままではアリアンヌの前で眠ってしまう。
「レオン、行くよ」
「おねえしゃま……だめ?」
眠気に抗いながらレオンを連れ出そうとすれば、レオンはきゅるきゅるした瞳で私を見つめてくる。
「疲れちゃったかしら? そうね、みんなでお昼寝にしましょう」
そう言いながら、アリアンヌはふわふわのブランケットを私とレオンにかけてくれた。
もちもちのクッションに肌触りの良いブランケット、そしてレオンのあったかい体温……抗えるわけがない。
「目が覚めたらおやつにしましょうね。大丈夫、これからはわたくしが一緒よ」
アリアンヌの優しい声がだんだん遠くなっていく。
私はすっかり寝落ちしてしまった。
それからというもの、アリアンヌは私たちにばかりやたらと構ってくる。
食事は毎回一緒に摂る、毎日おはようとおやすみの挨拶は欠かさない、晴れた日は庭でピクニックもしてくれる、などなど。
レオンや私と遊んでくれるだけじゃなくて、勉強も教えてくれるのだ。
普通に考えて、もしアリアンヌが詐欺師ならばおかしいだろう。
最初に子どもたちを手懐けておく、という作戦ならまだしも、アリアンヌはお父様にまるで関心がない様子なのだ。
食事の席にお父様だけいないのも気にしていないし、そもそもアリアンヌからお父様の話題を振られることがほとんどない。
お父様がたまに帰ってきても、形式的に出迎えるぐらいで私たちといる時のような表情はちっとも見せない。
アリアンヌはもしかして、本当は悪い人じゃないんだろうか……。
「あら、ローズちゃん。そんなに難しい顔をしてどうしたの?」
「アリアンヌ……」
思い切って私はアリアンヌを直接問いただすことにした。
「私、知ってるんだからね。アリアンヌがお年寄りの貴族と何度も結婚して、遺産を貰ってるって」
アリアンヌはショックを受けたように目を見開くも、すぐに元の優しい顔に戻った。
「あらまあ、誰かが話してしまったのね……」
アリアンヌは、私たち一家のお金を狙っているのか。それとも、本当は良い人なのか……。
「そうね。ローズちゃん、わたくしの生まれた家のことを、少しだけ聞いてくれるかしら」
私は覚悟を決めて、アリアンヌの話を聞く。
「わたくしのお父様はね、とっても怖い人でお金が大好きだったの。だから、わたくしはお父様に命令されて色んなお家にお嫁に行かされたわ」
「そんな……!」
「でもね、どんなに余命わずかなお相手でもわたくしは最後まで看病して、心残りなく天国へ行けるように誠心誠意尽くしてきたわ。お金を貰ったっていうのは、この先わたくしが一人でも生きていけるようにとお礼をくれた人がいたからよ。それが、あの絵本の作家さんなの」
最初にレオンにプレゼントしていた仕掛け絵本の作家のことだ。
その人はアリアンヌが看取った貴族の息子さんだという。
「じゃあ、どうしてうちに来たの?」
そのお金があれば、私たちの家に来なくても生きていけるはず。
じゃあやっぱりもっとお金が欲しくてここへ来たのか。
どうか違っていて欲しい。
私は知らず知らずのうちに自分がそう祈っていることに気づかなかった。
「それはね、侯爵様が助けてくださったからよ。お父様が今度はわたくしを外国に嫁がせようとしたんだけれど、どうしても行きたくなくて。そうしているうちに、侯爵様が現れてあなたたちのお母様になって欲しいって言ってくれたのよ」
結婚を申し込んだのがお父様からだったなんて、思ってもみなかったことだった。
「もちろん、わたくしがあなたたちを大切に思っているのは頼まれたからじゃないわ。あなたたちがとっても素敵な子だったから、仲良くなりたいって思ったからよ」
ここまで聞けば、もう疑いなんて心残りどこにも残っていなかった。
「じゃあ……ママって呼んでもいい?」
私の言葉にアリアンヌは瞳を潤ませながら頷いてくれた。
私とレオンはアリアンヌ……ママともっと仲良くなった。
使用人のみんなも、このお屋敷がこんなに明るくなるなんてと喜び、どこか寂しい空気が漂っていてこの家は、ずっと賑やかで楽しい場所になった。
そう、ただ一人を覗いて。
「アリアンヌ。これはなんだ」
久々にママとお父様が会話をしているところを見た。
私は柱の影から様子をうかがう。
お父様は額縁を指さして不思議そうに首を傾げていた。
「あっ、それはレオンが描いてくれたんですよ。わたくしとローズとレオンです。とっても良く描けていますでしょう」
「そうか」
家族がテーマの絵なのに、お父様はいない。
そのことに、お父様は疑問を抱いているだろうか。
だが、お父様自身がまるで私たちに関わろうとしないのだから仕方がないだろう。
しかし、無表情のお父様に対して、ママは熱心にレオンの成長について語っている。
ママはお父様のことをどう思っているのかは分からない。
けれど、こんなに素敵なママなのに、どうしてお父様は冷たくするのだろう。
納得いかない。
「お父様に、ママの素敵なところを認めさせてあげるんだから……!」
そうと決まれば行動あるのみだ。
まずはお父様がいる間、二人きりにさせてたくさん話をする時間を作ってあげなければ。
「いいですか、レオン。お父様とママを二人にさせてあげるんだからね」
「はい、おねえしゃま!」
「まあまあ、わたくしがどうかしたの?」
レオンを連れ出そうとしたのに、ママにはすぐ気づかれてしまった。
「お父様と、お話した方がいいと思うの。二人は新婚なんだし……」
「あら、ローズは優しいのね。でも、わたくしはあなたたちと過ごせるだけで十分幸せなのよ」
私の言わんとしていることを理解したのか、ママは私たちの頭を撫でてから優しく抱きしめてくれた。
ママからのアプローチが出来ないのなら、お父様を動かすしかない。
「お父様! ママとちゃんと話をしてるの!?」
「どうした、ローズ」
執事が止めるのも厭わず書斎に飛び込んだというのに、お父様は手元から顔を上げることすらしなかった。
書き物をしているみたいだけれど、空気が冷え冷えとしていて、勢い任せだったけれど少しためらいが出てきてしまう。
「だ、だってママとは新婚なのに、お父様は仕事ばっかりで……」
「ローズ。わがままはやめなさい。欲しいものがあるのなら買ってやるから」
「違います!」
かんしゃくを起こしているわけではないのだ。
ただ、お父様とママに仲良くなって欲しいだけなのに……。
だが、そこで私はあることに気付く。
欲しいものがあるのなら買ってやるとお父様は言った。
ならば、私の欲しいものをお願いしてみるしかない。
「ううん。あのね、お父様……」
結局、『一日私たちと一緒に過ごす』という無茶なお願いをしたのに、お父様は頷いてくれた。
朝食は一緒に、その後は外でピクニックをする。
その間、仲良しな私たちを見てお父様は少し驚いているようにも見えた。
庭でレオンのかけっこに付き合っていれば、木陰に腰掛けたお父様がこちらを見ている。
「……レオンはずいぶん背が伸びたな」
「おとうしゃまみたいになる!」
外でも仕事を持ってきたらどうしようかと思ったが、お父様は私たちの様子をじっと観察しているようだった。
「ローズ、お前は刺繍は嫌いだと言っていただろう」
走り疲れたレオンはママの膝の上に寝かせ、私は先日からママに教えて貰っている刺繍の続きをする。
「ママに教えてもらっているの。ママはすごく手先が器用で、私やレオンの服も縫ってくれたんですよ」
ママの手さばきは素晴らしく、一緒に見ていた家庭教師も驚いていたぐらいだ。
上手なだけじゃなくて、私の好きなものを取り入れたデザイン案も考えてくれる。
レオンも、大きくなったらぼくもやると羨ましそうに見ていた。
「そうか……いつの間に……」
お父様はそう呟いてから、なにやら深く考え込んでしまった。
あれから数日経って、どういう風の吹き回しなのか、お父様はまだ私たちと食事を共にしている。
もちろん毎回一緒というわけにはいかないが、朝は必ず顔を合わせておはようと言ってくれるようになった。
今日はお父様もお休みのようだから、もっとママとの時間を作ってあげられないかと考えていた時だ。
突然、私たちのおばあ様が屋敷を訪ねてきた。
「お久しぶりです、おばあ様……」
「あらあ、ローズ。久しぶりね。まだぬいぐるみなんて持ち歩いているの? やっぱりちゃんと教育を受けなきゃダメねぇ」
急だったので、ママがくれたくまさんを隠す時間もなかった。
わかっている。
もうすぐ大人になるのに、未だにくまのぬいぐるみを持っているなんて、社交界では馬鹿にされてしまうだろう。
けれど、ママがくれた大切なプレゼントをけなされるのは嫌な気分だった。
「レオンも大きくなったわね。もうあと数年したら、婚約者探しに忙しくなりそうだわ。おばあ様がとっても良い人を紹介してあげるからね」
「こんやく……?」
レオンが首を傾げていると、お父様がやって来る。
「母上。そんな話、レオンにはまだ早いですよ」
「いいじゃない。あなた一人じゃ面倒を見きれないだろうから、私たちも心配してるのよ」
遠慮がちにお父様の後ろにいるママに対して、おばあ様は厳しい視線を向ける。
「勝手に結婚なんかして、その女が子どもたちに悪い影響を及ぼすかもしれないのに……」
おばあ様は他人に対して嫌味をよく言う人だった。
ママのことを認めていないようで、おばあ様はママを厳しい目で睨んでいる。
嫌だけれど、おばあ様が怖くてどうして良いか分からない。
けれど、私が動く前に口を挟んだのはお父様だった。
「母上、それ以上は妻への侮辱と捉えてもよろしいか」
「ど、どうしたのよ、そんなに怖い顔をして」
まさかお父様が庇うとは思わなかったのだろう。
おばあ様が狼狽えている。
「アリアンヌは、私が選んだ妻だ。アリアンヌがこの家に相応しいかどうかは、私が決める」
「でも、この女は結婚詐欺を……」
「詐欺だと? この国の法制度に基づくれっきとした婚姻であり、これまでの婚家からも彼女の看護に対して感謝の言葉が寄せられている。彼女からの被害を訴える者がどこにいたと?」
確かに、ママの結婚歴について悪い噂はあれど、直接ママに被害を訴えるような人は見たことがなかった。
「じゃ、じゃあお金を貰ったっていうのはどうなのよ!」
「それは……」
お父様を遮って、いつの間にかレオンがおばあ様に駆け出していく。
「このひとからだよ! ぼく、このせんせいだいすき!」
レオンがおばあ様に自慢げに掲げて見せたのは、あの仕掛け絵本だ。
この前アトリエに連れて行ってもらい、サインとメッセージカード付きで新作を貰ったばかりだった。
メッセージは私とレオン宛、そしてママ宛のものがある。
「えっ!?」
それを読んで、おばあ様は目を丸くしてしまった。
なぜなら、メッセージカードにはママの優しさを褒める言葉や、励ましや労いの言葉が並んでいたからだ。
「ここに、彼女を糾弾する言葉がひとつでもあっただろうか? 私の愛するアリアンヌは噂のような悪女などではない」
お父様の直接的な言葉に、おばあ様だけでなくママも驚いている。
初めて、お父様がママを愛していると口にした。
「で、でも……」
「母上ともあろう方が、証拠もない噂を鵜呑みにして妻を裁こうなどと、浅はかなことを考えたりはしないでしょうね?」
あまりの怒りっぷりに、おばあ様は反論を諦めたようだ。
「そ、そうね! ごめんなさい、誤解があったみたいだわ。皆さん仲睦まじいようで何よりですこと」
大焦りで急いで出ていってしまった。
こんなことは初めてだった。
嵐のように過ぎ去っていき、屋敷はやっと平穏を取り戻す。
「わたくしのことは、愛さないのではなかったのですか?」
「そうだ……。私は君に酷いことを言ってしまった。どうか撤回させて欲しい」
お父様とママが見つめ合っている。
お父様の表情は、いつもの無感情ではなく、申し訳なさがはっきりと現れていた。
「ローズたちは、私の姉の子どもなんだ。若くして無くなったが、幼いころは私の面倒をよく見てくれた。母上はあの性格だから、実家に渡しては窮屈な生活を強いられると思い引き取ったのだが……私は人とどう接して良いか分からず……」
「分からないのなら、手を取りあっていけば良いではありませんか。わたくしたちは家族です、接し方に正解なんてありませんよ。あなたの思うように、子どもたちを大切にしてあげれば良いんです」
優しく微笑むママに、ようやくお父様も笑顔になる。
「アリアンヌ……ありがとう。これからは夫婦として、家族として心から向き合うことを誓おう。愛している、アリアンヌ……」
「侯爵様……!」
お父様とママがぎゅっと抱き合っている。
私は邪魔しないようにレオンの体をくるりと反対方向に向けた。
「まま、どうしたの?」
「お父様とママは愛し合ってるの!」
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