おっちゃんと僕と500万
知らないままでいたくない。僕は23年間、この気持ちを胸に宿していた。していたつもりだった……。
僕は〇〇。幼い頃から父親に口癖のように言われてきたのは、
「疑問を持つ癖をつけなさい」
という言葉だった。
そして、教えることが好きな父親から勉強のあり方を教わってから、様々な知識を得ることが好きになった。運動は少し苦手だったが。
「勉強しろ」と言われることは一度もなく、むしろ自由に育ててもらった結果、望んだ難関大学の経済学部に進学することもできた。
何事も経験してみたくて、珍しいことでも一度は手をつけた。さすがに犯罪には手をつけなかったが。大学時代にしたアルバイトのうち、大学3年の夏にした「雀荘の店員」で僕の物語は大きく動き出す。
「今AIで収入得るのがアツいんだけど一緒にやらんか?」
一緒に働いていた50歳のおっちゃんが僕に話しかけてきた。だが僕はそっけなく返す。
「そうですね。でも大手企業や資本家も同じこと思ってますよ。」
「せやねん。ただ、大手になればなるほどリスクの高い行動は取れん。ましてや新事業なんか特にな。」
「そうですが......。」
確かに聞けば聞くほど筋は通っているように感じた。
「そこであんたや。知識あり。探究心あり。行動力あり。ワシがあんたの動きをサポートしたるから、一緒にAI特化の会社を立ち上げへんか?」
「......。」
悪くはない。他人に縛られる人生は好きではなく、どこかに就職するという意識も正直低かった。話を詰めていくと、おっちゃんはどうやら別の店を既に始めており、会社の立ち上げは経験しているらしい。大体のことは知ってるとはいえ、一緒に動く仲間がいたほうが気は楽だろう。
「新宿あたりで事務所探しとくから〇〇はその沿線で家を契約しといてな。」
「分かりました。進捗あったら連絡ください。」
あっさりと話が進んでしまった。今まで人に頼ることがそこまで無かったのだが、このおっちゃんにはそんな僕を信用させる何かがあったように感じた。そしてその日を境に少しずつ条件を擦り合わせていくのだった。
——そして少し月日が流れ、卒業を控えた2月末に事件は起きた。




