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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

忘祀ノ猫

作者: 野宮ゆうり

今夜は流星群が来るらしい。僕はカーテンを開いて窓を見た。しかし窓は雨も降っていないはずなのに不自然に濡れていた。僕は不思議に思いながらも窓を開け外を見た。何かがおかしい、生臭い。ふと下を見るとそこには水ではない何かが滴り落ちていた。血だ。僕は恐怖で小さく悲鳴を上げ、咄嗟に窓を閉めた。おかしいおかしい。こんな事があって溜まるかと僕はネット掲示板を開いた。


無名

雨も降っていないのに窓が濡れてて生臭かった。それは水じゃなくて血だった何かがおかしい誰か助けて


僕は誤字をしながらも必死に書き込んだ。しかし今は深夜の二時だ。こんな時間に見てくれる人がいるのかと半分諦めていたが数分後返信が来た。


無名1

夜中に失礼します。それって近くにガラスの破片落ちてなかった?


ガラスの破片...僕は気になって恐る恐る窓の下を見た。確かに赤っぽいガラスの破片が散らばっていた。


無名

ありました。でもなんで?


そう掲示板で聞き返したが朝になるまで返信は来なかった。

結局僕は怖くて一睡もできなかった。何回もあの現象について調べたが一件もそれらしいものがヒットする気配はなかった。今日は仕事だというのに朝から憂鬱だ。僕は支度を済ませて駅へ向かった。


しかし電車は運休見合わせしており、不思議に思った僕は駅員さんに訊いてみた。

「あー実はね、線路に猫が飛び出してきて轢いてしまったんだ。ご迷惑をおかけしてます。」

猫?人身事故じゃない分少しはホッとしたが猫でも死んでしまったのは悲しい。とりあえず僕は会社に遅刻の電話を入れ、バスで向かうことにした。

バスには無事に乗れ、僕は一息つき空いていた席に座った。

「う、うわああ!!」

突然運転手さんが叫んだかと思えば窓の外にはカラスの死体が転がっていた。それも数羽。運転手さん曰くもう死んだ状態で突然落ちてきたらしい。何かが引っかかる。まるで僕を邪魔するように不可解なことが起きている。僕は後ろの席に移動し、掲示板を立ち上げた。この時間なら誰かいるだろうと助けを求める一心で書き込んだ。


無名

至急。僕が会社に行こうとすると邪魔するように猫が轢かれて電車が見合わせになったりバスに乗ってもカラスの死骸が落ちてきたり。誰かわかる方いますか?


僕は早く早くと無意識に貧乏揺すりをしていた。すると返信が来た


アカネ

こんにちは、趣味で神話を調べてるものです。それってハイナ様だと思います。


ハイナ様?僕は気になって検索にかけたがやはり引っかからない。ここまで引っかからないのはどうも怪しい。この人が適当に言ってるだけでハイナ様なんて存在しないんじゃないか?僕は不審に思いだしふとパソコンを閉じた。


そこから退勤まで特に奇妙なことは起きなかった。僕はあの現象たちについて調べるために足早に家へ帰った。

家のドアに手をかけると謎に水槽のような匂いがした。朝はこんな匂いはしてなかった。そして床に目をやるとそこには金魚が数匹死んでいた。

「う、うわあ!?」

僕は思わず後ずさり金魚を避けて玄関へ飛び込んだ。なんなんだ、この現象を引き起こしてるなにかは僕に恨みでもあるのか?僕はどっと疲れて玄関に座り込んだ。

なんとか立ち上がりなにか食べようとキッチンへ向かった。

「ひっ...?!」

僕は腰が抜けて座り込んだ。なんでこんなものが家に...そこには見るに耐えないものがあった。猫の頭だった。僕はどうしようもできず寝室に逃げ込み布団にくるまった。どうしようどうしよう誰か助けて。掲示板に聞く気にもならず僕はひたすら朝まで隠れるように丸まっていた。


またしても朝になってしまった。今日は仕事がないのでまだいいが、今日もあの気味の悪いことが起きると思うと気が気じゃなかった。

僕はあのハイナ様たるものを教えてくれたアカネという人物がまた来てくれないかと掲示板を立ち上げた。

僕は昨日から起きていることを全て書き込み、誰かの返信を待った。すると今日は休日だからかたくさん返信が来た


無名1

それってハイナ様じゃね?


ガラクタ

>>>無名1 それな。でもあんま話題にすんじゃないぞ。


話題にしちゃだめ?ハイナ様、みんな知っているようだ。


無名

この現象を止めるにはどうすればいいんですか?


無名1

儀式をしなきゃいけない。でもほっといたほうが身のため。


ほっとけだと?こんな事件まがいの事が起きていてほっとけるわけがない。

儀式...でも踏み込むなと言われたら聞く気が起きない。するとまた返信が来た。


・・・

feuxj03t/9


...なんだこれ?意味不明な文章が謎の人物から送られてきた。すると掲示板に反応があった。


ガラクタ

やばい。


無名1

うp主今すぐここ閉じろ。


そう言われて焦ってすぐさまパソコンを閉じた。

なんなんだ。あの意味不明な文章、どういう意味なんだ?僕は意を決してもう一度パソコンを開いた。


無名

僕はどうなってもいいのでその儀式とやらを教えてください。


無名1

まじか


ガラクタ

>>>無名1 どうする?


無名1

>>>無名 わかった。教えるけど絶対冗談半分でやるなよ。


こうして無名1さんが儀式を教えてくれるとのこと。

要約するとこうだ。

1.最初に落ちていた赤いガラスの破片に動物の血液を垂らす。

2.そのガラスを白い布で包み、ポストがある場合はそこに入れる。(ない場合は玄関ドアの前)

3.「ハイナ様お返しします。忘れられし神の名をここにお返しします。」これを3回唱える。

4.振り返らずに家に戻る。


僕はスーパーで鶏肉を買ってきてそこから血を抜き、赤いガラスの破片に血を垂らし、白い布で包んでポストに入れた。祈りを3回唱えたあと、僕は体が軽くなったように眠りについた。


次の日ポストを見ると白い包みは無くなっていた。そして何日経っても奇妙な現象は起きなかった。ハイナ様とは何者だったのだろう。そして謎の人物から送られてきた謎の文章。それはまだ僕の心の中にひっそりと佇んでいた。

謎の文章のヒント:キーボード

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