指導
桜木に船から降りろと言われた石本たちは、本当に降ろされるかどうかを話し合うため、海軍本部に来ていた。
石本たちの横を2人の男子海兵が通り過ぎようとした。
「こら!お前ら!
中将に挨拶せんか!」
薪の怒号が飛ぶ。
「申し訳ありませんでした!
桜木中将!」
2人は慌てて桜木に敬礼した。
「おはよ」
関係のない挨拶をする桜木。
「お、おはようございます!」
2人は慌てて挨拶を返した。
「急ぎなら、先行っていいよ」
全く気にしていない桜木。
「よろしいのでしょうか?」
桜木と薪を交互に見つめる2人。
「…構わん」
薪はため息をついた。
「失礼します!」
「あの2人今年入った子たちだよね?」
2人が立ち去ったあとで、桜木が指宿に聞いた。
返事をする指宿。
「今年入ったなら、訓練期間で徹底的に教え込まれてるはず。
尚更、できて当然だ」
薪は少し怒っている様子だった。
「でも、訓練期間だけじゃ足りないよね〜?」
「そりゃあな。
その後も船や支部で指導してく必要がある」
薪は今度は冷静に答えた。
「だよね…」
歯切れの悪い桜木。
そして、会議室に着くと、そこには志摩監査主任と桐生元帥が向き合っていた。
監査官見習い達はそっと志摩の後ろに並び、強鷲号のメンバーは桐生の周りを囲んだ。
桜木だけはかなり離れた後ろの窓に寄りかかった。
「こちらとしては降りていただかないと、船員に危険が及ぶという結論に達しました」
「しかし、監査業務は続けないと…」
冷たい雰囲気の桐生と緊張気味の志摩。
監査官見習い達たちも何も言えずにいた。
「なら、別の監査官を用意してください」
「それなら、他の船と交換というのは?」
「それではその船に危険が及びます」
「そうですね。
しかし、他の監査官は忙しくて呼べませんし…」
「なら、呼び戻せばいいじゃないですか?」
桜木の言葉が室内に響いた。