態度の変化
次の日。
起床後すぐ兵士たちが列を作って桜木に挨拶していた。
そう言えば、この光景は石本たちが来てから毎日繰り返されていた。
「あの光景って、桜木中将がこの船に来たときからずっと続いてるんですか?」
「いや、最初は誰も挨拶してませんでしたよ」
と植村。
「それは、けしからんな、中将に挨拶せんとは」
言葉のわりに、薪は怒った様子ではなかった。
「仕方ないですよ。
噂が噂でしたからね…」
服装や態度は噂通りだが、その他に、女使って媚売って昇進したという話があったのだ。
では、そこから、この光景に至るには何があったのか…
「まあ、事件が起きていく中で技術や知識、実力は手に取るよにわかったし、他の上の人たちとの関係性も間近かで見せられて、これはやばいと思ったんでしょうね。
その上、2週間前までこの船にいた監査官が昇進の本当の謎を解き明かして、更にその人と組んで、カイル国と戦争になりかけたのを止めて見せてからは尊敬の意を込めて挨拶するようになりましたよ」
植村が淡々と説明した。
「特にあの」
と一人の女性海兵を指さした。
「あの平木なんかは元々、桜木中将に憧れて海軍入ったんですが、4年前の桜木中将の船で、自分含め全員の名前を覚えないことに憤慨して悪く言うようになりましたが、結局名前を覚えてもらっていたことを知って、また手のひら返しましたからね」
「それでか!
あの子この前、俺に聞いてきたんだよ。
どうすれば来年も桜木中将と同じ船でいれますか?って…」
薪は納得した。
「そんなことを聞いたんですか…
それでなんて答えたんですか?」
植村はため息を漏らしていた。
「推薦だけはしとくと言ったさ」
薪の回答に植村は「ですよね」と呟いた。
昨日の平木の態度は憧れから来るものだと石本たちはわかったが、なぜ服装も態度もしっかりしていない桜木に憧れるかはわからなかったのだった。