バカか?
監査官見習いたちはある裏の任務もあった。
それは桜木が何かを調べているから、内容を突き止めろと言うことだった。
そして、植村要する強鷲号にも新たな命令が下されていた。
それは現在リアン最強と言われるベンテルス海賊団を全員抹殺することだった。
その日は早くもやってきた。
遠距離ではあったが、ケイセイ諸島近海で長く続く激しい攻防戦。
次第に兵の疲れも見えてきた。
「一華(植村の名前)、ケイセイ離脱」
戦況を眺めていた桜木は落ち着いた声で言った。
「何言ってるんですか?!
命令に背くつもりですか?」
石本は興奮していた。
他の監査官見習いも同様だった。
「バカか?
立て直さないと負ける!
負けたら、島民にも影響が出かねない!」
桜木は監査官見習いたちを睨みつけた。
その迫力に監査官見習いたちは負けた。
「撤退!
ケイセイ離脱!」
植村が船員に指示を出した。
無事に離脱できた。
しかし、違う意味で船内は無事ではなかった。
「バカ共が!
玉を無駄にしてどうする?
戦闘中に集中力を切らすような奴は要らんぞ!」
薪が大砲を担当していた船員たちを次々に殴りつけた。
「すいません!」
大砲を担当していた船員たちが殴られながら謝る。
そう、船内は死者を出さなかったのに敗戦モードに近かった。
無線で本部に報告していた植村の声も元気が無かった。
その後、怪我人の手当をしていた医務官たちの様子を見ながら植村がぼやいた。
「このままで全員抹殺なんて本当にできるのかな…?」
「無理だね〜」
桜木は最新の戦況図を見ながら、明るい声で答えた。
「あなたね、そんなふざけてていいんですか?」
九条が桜木に突っかる。
「バカか?」
本日2度目。
「負けたみたいな雰囲気出してたってしょうがないじゃん?
離脱は負けには入らないよー」
桜木は監査官見習いたちにピースした。
「本当にそうかな?」
相変わらず元気のない植村。
「立て直さなきゃ勝てなかった。
離脱は間違えじゃない」
桜木は植村の肩をポンポンと優しく叩いた。