桜の木の下に立つ
桜の木の下で
桜が咲いた
満開だ
頭の上に広がる桜花の空
桃色に染められた空に触れると
優しい香りがほんのりと広がる
儚く、ただ美しい花の下
私は春に染まり
春に埋もれる
今日は桜が泣いている
雨の雫をハラハラとこぼして
うつむいて手放しで泣いている
雨にさそわれてつられて泣いているのか
伸びた枝の上で小鳥たちは囀り
気持ちよさそうに羽を振るわせ
ちょっと首を傾げて花の中を覗き込む
桜の木の下に立つ
スッポリと包まれて
ふわりと浮かぶ
思い出が柔らかい火花を散らす
胸が膨らむ
目の奥が熱くなる
私も西行法師のように
そんな最期なら幸せだ・・・






