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魔王を目指して  作者: 骸骨
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第3話 魔法使いへの第一歩


 あの日、「英雄カイロス」という本を読み聞かせた事でノアは魔法がこの世界に存在する事を知った。

 その日は興奮で眠れず、次の日の朝はなかなか起きれなかったが、昼から両親と買い物を無事に済ませてから魔法を勉強しようとしていた。

 しかし、帰ってきたのが夜の時間帯だったので子供の身体では眠気には逆らえずそのままベッドに沈んでしまったのだ。


「ぅん……んぅぅう、はっ!もう朝!」


 そして今日、ノアは珍しく早朝に早起きをした。


「あれ?まだ誰も起きてない?」


 いつもは母親のミラが朝の支度をする為、一番早く起きるがそれよりも早く起きてしまっていた。


 初めは寝ぼけていたが、徐々に頭が冴えてきて、今なら何も気にせず魔法の練習が出来るではという考えに及んだ。


 そうしてノアは、この時間を無駄にしてはいけないと思い、素早くベッドから飛び降り、本棚に向かう。


「どこにあるのかな?」

 

 手当たり次第、魔法に関連する書物を探すが中々見当たらない。


「もしかしてこの家に置いてない?」

 

 不安になり、隅々まで探していると、棚の上の方にぽつんと置いてある一冊の本を見つけた。

 手を伸ばして掴み、表紙を見ると、「魔法について【初級編】」というシンプルなタイトルが書かれていた。


「これだ!良かった、あった」


 その本は長年、誰にも読まれていなかったのか、上面には埃が被っており、ノアはそれを手で軽く払い落とした。

 そしてその場で床に寝転び、本も置いてニコニコと眺める。


「さぁ!何が書かれているのかな?」 


 歓喜に満ちた表情と嬉しさのあまり高くなってしまった声を出しながら表紙を捲る。

 早く魔法を知りたいと思う反面、これまでの夢が叶うことに対する緊張で本を開くスピードはとてもゆっくりで丁寧だった。


 ノアにとっての希望しかない、魔法の本。

 その本の最初の1ページにはこう書かれていた。


「えぇ〜、何々?……魔法とは魔力によって起こされる現象であって、奇跡や神の御業などでは無い。と」


 その一文にはまるで何かをひどく否定するかの様な断言がされていた。

 ノアはその文を不思議に思い、続きを見てみる。

 しかしそれ以降はただ単に魔法についての知識が綴られているだけなので、ノアは特に気にせず下の文を読む。


 そこには、魔法の源である魔力の見つけ方、そしてそれの使い方が載っていた。


 そもそも、魔力とはこの世界にあるエネルギーの一つであり、空気中や生物、更にはそこらに生えている草などのあらゆる場所に存在している。

 そしてもちろん人間にも魔力を宿しているが個人差により、魔力の多さは人それぞれ違う。

 それにどんなに多くの魔力を宿していてもその力を認識し、自分の思い通りに制御させることが出来なければ意味はない。


 つまり最初は体内にある魔力を見つけるこたが魔法使いとして重要なのだ。

 

「えぇ〜と、まずは楽な姿勢になって、その次は目を閉じ、深呼吸する。そこから、意識を身体の中に向け、渦を巻いているものを見つける。ふむ、この渦巻いているものが魔力なのだな。まぁ、ようは瞑想しろってことか」


 早速、本に書かれている通りに行動する。

 魔法を使おうとする人は普通、楽な姿勢と言われると椅子に座るが、ノアは何も考えず、仰向けに寝転んでいた。

 目を閉じると息を大きく吸って、吐く。


 そして体内に意識を向ける。

 すると何故かすんなりと自分の中にある渦巻きを発見することが出来た。


「おぉ!これが魔力なのか!」


 普通、この魔力の渦巻きを見つけるのには相当な時間をかける必要がある。

 何故なら、今まで感じていなかったもの急に見つけろと言われてもどんなものがどこにあるかなんて分からないからだ。

 見つける早さは平均で2年、遅い者だと4年もかかり、更には一生見つけられない人もいるくらいだ。

 それをノアは一瞬でいとも簡単に成し遂げてしまった。

 それだけノアには魔法の才能があるのだろう。

 

 そんなことは知らず、ノアは魔力を見つけれて喜んできた。


「よっしゃ!これで俺も魔法が使える!!」


 ノアは、嬉しさのあまりテンションが舞い上がり、寝た姿勢のまま手を大きく振り上げる。


 見た目は子供なので不自然ではないが、精神はもういい年した大人なのに恥ずかしげも無くはしゃいでしまっていた。 

 しかし、それは無理もないだろう。

 皆、誰もが子供の頃にテレビや本で一度は魔法や超能力などのフィクションでしか存在しないもの使ってみたいと思ったことがあるはずだ。


 ノアはその思いが人一倍強く長く続き、そして今、自分は憧れの魔法を使えることが分かったのだ。

 これを喜ばないはずがない。

 身体が思わず動いてしまう程、ノアの心には歓喜や感動などの嬉しい感情が溢れていた。


 だが、いつまでもそうしている訳にはいかない。

 それに、魔力を見つけることは魔法使いとしての最低ラインだ。 

 これからその魔力を自分で操り、魔法へ変換するためのコントロールが出来なければ一端の魔法使いにはなれない。


 「魔法について【初級編】」の本にもそう書かれており、少し冷静を取り戻したノアは次の工程を見る。

 そこには魔力の操作方法が書かれている。

 

「次は見つけた魔力を自分の思った所へ動かす、か。よっしゃ、やるぞ!」


 そう言い、ノアは身体の内側に意識を向け、すぐに見つけることのできた魔力に動け、動けと強く念じる。


 すると魔力は僅かだが振動し始めてる。

 それを知ったノアは先程よりも強く、そして明確に手に向かって動けと念じた。


 それに応えるかの様に魔力はゆっくりと身体の中心から腕の方へと行き、そして時間は掛かるもののしっかりノアの命令通り、手に魔力が動いてきた。


 手のひらに魔力が集まっているのを確認すると今度は、逆の手や左右の足、頭等色々な場所に自由自在に動かし始める。

 この短時間で、随分とスムーズに動かせるようになっていた。


 この動作も通常で有れば数ヶ月の時間が掛かるはずなのだが、やはり才能があるのか、たった数分で魔力を動かし、そして完璧なまでに至る所へ自由に動かしており、魔力操作はもう既にほぼマスターしていた。


 本にも書いてあるがこの後、魔力を操作して広がっている魔力の渦巻きを練るというものがある。

 が、ノアはそんなことを知らず既に色々な事を試していた。

 魔力を大きく伸ばしたり、縮めたり、そして広がったのを練るのでは無く、その上位の技術である圧縮を行なっている。


「おぉ〜!出来た!コンパクトになった」


 ノアの言う通り、先程までは禍々しく渦巻いていたが今は、大きなビー玉くらいの大きさに変わっており、色は更に濃く、暗くなっていた。


「この魔力、色んなこと出来て楽しいな。粘土で遊んでいるみたい。他はなんかあるのかな?」


 ようやく本を読み出し、順序をすっ飛ばした練るという行為をやってみるも難なくこなしていった。


 そして魔力の操作方法を覚えたことで次のステップに移る。

 次のページに書かれているのは操作した魔力を魔法へと変える呪文についてだ。


 魔法には様々な種類があり、代表的な物だと属性魔法というものがある。

 基本的なものは火、水、風、土、光、闇の五つだ。

 しかしこの五つの属性魔法はあくまで基本的なもので、この他にも種類があり、上位魔法ではその五つが進化した属性が使われることがある。

 だが、「魔法について【初級編】」の本にはタイトル通り、初心者向けなのでその五つの属性魔法と無属性魔法しか書かれていなかった。


「やっぱり火とか水ってのは定番だよな。それに何も属性がない無属性というのもラノベを読めばよく出てくるよな」


 ノアはウキウキしながらページを捲り、とうとう魔法の呪文が書かれている項目にたどり着いた。


「うぉ〜!!色んな魔法が書かれてるぞ!」


 そこには各属性の下位魔法が載っており、それぞれ魔法名、呪文、効果が書かれていた。


「文字読めるようにしといて良かった。何が書いてあるかしっかりとわかるぞ!」


 確かに、文字を習得していなかったら、折角本を見つけても読めず、諦めるしかなかっただろう。

 しかし、3歳になるまでノアには膨大な時間があった。

 普通の幼児はハイハイから二足で立つことを覚え、ある程度自我が芽生えると年相応に遊んだりするが、ノアは中身が30を越えているせいでそういった幼児の遊びは全くしてこなかった。

 まだ1人で外に出かけることが出来ないので、その空いた時間はとても暇にしていたのだ。

 そのおかげで、部屋にある沢山の本を読み漁り、必然的に文字も習得していった。


「やっとだ!ようやく魔法を唱えられるぞ!今日は記念すべき日だな」


 魔法が使えると思うと、ノアは口角が勝手に上がるほど興奮する。

 それと同時に失敗するかもしれないと思い、緊張する。


 だが好奇心は抑えきれず、不安を吹き飛ばし、頭にあるのは早く魔法を使いたいという思いだけになる。 


「さて!最初の魔法は何にしようか?やっぱり定番の火魔法かな?いや、でも家の中だし、そうすると水も土も駄目だな。なら!」


 ウキウキした表情で何の属性にするか悩むが、家でも安全に使える物と条件を絞ると一個一個消していってすぐに決まった。

 そしてペラペラと該当するページに捲る。


 魔法にはそれぞれ、位があり、下から初級、下級、中級、上級、超級の5つに分かれている。

 ノアはまず、魔法の中でも最弱の初級魔法を選んだ。


「えっと、風魔法の呪文は……舞い上がる風よ、」


 ノアは手を広げ、前に構える。


「我が手に集い、」


 目を閉じ、集中して体の中心にある魔力を練り上げる。

 そしてできたのを魔力操作で手に来るよう動かす。

 

 手のひらに集まった魔力が詠唱している呪文を自動で読み取り、風へと変換しようする。


「靡かせ〈プチウィンド〉!」


 最後に魔法名を唱えると、手から強い風が吹き荒れる。


 風は手を向けていた方向へ真っ直ぐ突き進んでいき、手元の本は勢いよく次々とページが捲り上がった。


 そして正面にある木のドアには風と衝突し、ドン!とそれなりに大きな音を出し、真ん中には少しへこみができていた。

 幸い、表面が凹んだだけで穴が空いたり、壊れたりしてはいない。

 それでも初級でこの威力が出せるのは相当な脅威だ。

 

 そもそも、初級魔法は魔法を安全に習得する為に下級魔法を改良して作られた物で、どの属性でも人や物を傷つける程の威力は無い。

 風属性であればせいぜい、軽い物を吹き飛ばす程度だ。


 では何故、木のドアを傷付ける事ができたのか、それは一言で言えば、ノアには魔法の才能、そして子供にしては多過ぎる魔力があったからだ。

 

 そのせいで、練った魔力が初級には必要ない程の物になり、またノアはこれが初めての魔法だった事もあり、どの位の魔力を込めればいいか分からず、通常よりも多めに込めてしまったのだ。

 

 普通、いくら木製とは言えドアが凹む時点でおかしいと思うはずなのだが、ノアには地球の常識しか持っていなかった。

 この世界での初級魔法が、どの程度の威力なのか知る訳もなく、これが異常だと気づかなかったのだ。

 それと興奮しているせいで周りがしっかりと見えていないことも理由の一つだろう。


「これが……魔法!俺にも出来た!」


 ノアは何も疑問に思わず、更にはドアを壊してしまった罪悪感すら抱かす、魔法が現実に存在して尚且つ自分で扱えると言うことに唯々、感動していた。


 ニヤニヤと喜びが隠しきれず、まるで夢の中なるかの様に幸せな感覚に浸っていた。

 

 しかしそんな時間も1人の怒号によってすぐに消えた。


「何の音だぁぁぁああ!?」


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