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プロローグ1
「来ますか?」
黒い人はそう言った。
当時、ゴミをあさり、空腹をしのいでいた私は、誰に言っているのだろうと思った。
反応を示さない私に、その人は膝をつき目線を合わせてもう一度言った。
「私の元へ来ませんか?」
黒いズボンと上着、中には白いシャツ。
その時の私は従者の衣だとは知らなかった。燕尾服と言うものであった。
彼自信の目は穏やかで、微笑は陽光に当たっている時のような気分になった。
だからだろうか。その人に何かされると言う類いの危機感が出なかった。
「はい」
それだけを言うと私は彼の手を取った。
「少し安らげる場所に行きましょう」
そう言い私たちは、路地裏を後にした。
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