3話 テスタの町で
あの橋での激闘から30年が経とうとしていた
重蔵はテスタという辺境の町にいた
「何故生きてるのじゃろ?」
「何故ここにいるのじゃろ?」
あの橋での出来事から今現在までの記憶がない
気づいたらここにいた
まずは何をするにも金がいる、冒険者ギルドへ向かうことにした
この町は魔物との最前線の町
巨大な壁によって魔物を食い止めている
壁の一歩外は魔物たちのテリトリーだ
なので町には冒険者でいっぱいだ
ランクの高い冒険者パーティーも多く集まる、大体がBクラスだろうか
重蔵がギルトのトビラをくぐるとヒソヒソと小声が聞こえてくる
「なんだあの汚いの…くさくね?…貧相…」
重蔵の格好は酷かった
布を巻いたような服はいつ洗ったのかと思われるほど汚れ、髪はボサボサで目が隠れて見えない
臭いも少し漂う
剣は2本差してはいるが、防具を一切身につけておらず見た目は最悪であった
受付へ向かいカードを出す
重蔵は前の街では仕事をしていなかった、いやさせてもらえなかったために未だにEランクであった
「随分古いカードですね、えっと重蔵様ですね」
「ランクがかなり低いようですが、この辺りの魔物は強力です、お一人ですか?」
頷くと
色々説明をしてくれた
ランク制限はなく、とにかく狩ればいい
証明部位以外でも材料となるものがあれば買い取る
以上、単純明快
「ではこれで完了です、ご武運を」
まずはセカンドベアという魔物を一匹狩る
証明部位は右手首
熊の手って珍味よね、左手と両足も買い取るとのこと
早速外門へ向かう
トビラの外は意外と静かであった、魔物の姿はない
獲物を探しに森の方面へと向かう
1時間ほど森をうろつくがクマさんどころか他の魔物も見当たらない
これだけ冒険者がいれば当然か、手前の魔物は狩り尽くしてしまったのだろう、更に森の奥へと向かう
川を発見すると…
セカンドベアだ
ヒグマの倍くらいある
「あれ?これ大丈夫かの?」
普通はあんなでかいクマに出会ったら逃げの1択だろうけど
遠距離攻撃もできないし、もう近づくしかない
すると向こうも気づき問答無用で突進してきた
「ふぅ」
心を落ち着かせ、冷静に心臓を一突き
しばらくして絶命した
両手首両足首を切断し持ち帰る
それだけでもかなりの大きさだから大変だ、持ちきれない
この魔物、危険度はDなのでもっと強い魔物でもいいだろう
報酬をもらいに戻ると
「え?もう終わったんですか?1人ですか?」
頷くと査定を始める受付の女性
「ではこちら報酬の銀貨5枚になります」
現代で5万くらいか、悪くない
外へ出てベンチでおにぎりを食べ始める
ムシャムシャ
ふと横を見ると小さな兄妹が見ていた
身なりから見て孤児と思われた
「お腹空いてるのかの?」
無言で頷く
「ここにお座り、ほれ」
ポンポンっとおにぎりを出し子供たちに手渡す
何これ?と見上げる子供たち
お手本とばかりに重蔵がおにぎりを食べ始めると、それを真似て子供たちも食べ始めた
「美味しい!中のこれなんだろ」
シャケ最強よね
この重蔵の出すおにぎりはでかい
お茶碗2杯分はある
具はシャケ、梅干し、昆布、オカカ
今のところこの4種類
「まだ食べるかの?」
という重蔵に
「他の子たちに悪いかな…」
「まだ他にもいるんじゃな」
聞けば、父親は冒険者で冒険のために家族でここに引っ越してきた
しかし、しばらくして冒険に向かった父親が帰って来なかったそうだ
それからは母親が頑張っていたが、無理がたたり病で亡くなり孤児となったそうだ
この町は辺境という事もあって統治が雑
孤児院なんて気の利いたものはないらしい
そんな過酷な立場の子供たちが数多くいるが誰も助けてはくれないという
子供たちの案内で孤児が集まるという廃屋へ向かうと20人ほどの子どもたちが座り込んでいた
みんなガリガリにやせ細っている
泣きそうだ
「さあさあ、おにぎり美味しいぞ〜い」
「遠慮せんとお食べ〜」
出せるだけのおにぎりを出した
寝込んでいる子供には途中買ってきたポーションを飲ませた
みんなでっかい口を開けてほうばっている
「いいかの、明日からはわしが食べ物を持ってくる」
「だからもう心配せんでいいからの」
子どもたちを元気づけた
よし!明日からはもっと頑張って稼がんとの!
奮起する重蔵であった