13話 再会
テスタの崩壊から10年が過ぎていた
帝都
「見ろ!勇者パーティーだ!魔物を狩ってきたんだ」
ワーワーキャーキャー
一際大きな魔物の死体を積んだ荷車にその勇者パーティー達はいた
黄金色の甲冑に身を包む勇者
その中にあのユイがいた、1人だけ笑っていない彼女の人気はすさまじく女性ファンも多い
その透き通るような白い肌に、エルフならではの美貌、細身で引き締まったそのスタイル
そして彼氏はいないし、作らないと断言しているのも人気の要因だ
俺が口説いてやると躍起になるからだ
勇者パーティーはギルドにいた
報告をし、報酬を分ける
「では、こちらがユイさんの報酬です」
「はい、では失礼」
「おっとユイさん、このあと食事にで、……」
「結構です」
「まーた勇者さんはフラれてるよ、こりないねぇ」
そんな声がギルドのあたらこちらから聞こえてくる
「きゃーユイさんー!」
「ユイさーんこっこっち向いて」
ユイは囲まれて身動きが取れずにいた
はぁ、もう1年もポンコツ勇者とパーティー組んでるのに何の成果もない
こんな人間たちにチヤホヤされたって嬉しくもない
「ニョホニョホニョホニョホ」
「ニョホニョホニョホニョホ」
「ニョホニョホニョホニョホ」
ん?んー?あれは?
「じゃあここで出すぞー」
「はーい」
民衆から脱出し、子供らを追う
あれは小さい人間?前はドワーフと間違えちゃったし
あの目が隠れた髪形と刀!
「はい、おにぎりじゃよーたんとお食べ」
はあー!重蔵じゃーん!夢じゃない?
ユイはフラフラと重蔵の前へと歩き出す
「おや?お嬢ちゃんもお腹空いとるかの?はい、おにぎりお食べ、おいしいよ」
ユイはボロボロ涙を流し、泣くのを必死に我慢しているため声が出ない
おにぎりを受け取り、モシャモシャ食べ始めた
後から勇者が追いかけてきた
「あ、いたユイさーん夕飯をご一緒しませんかー」
「なんで泣いておるのかの?お腹空いとるのか?おにぎりもっと食べるかの?」
「重蔵」
「おや?わしのことを?どなたさんじゃったかの?こんなべっぴんさんなら忘れるはずないんじゃが」
「重蔵、重蔵!ユイよ!あなたがつけてくれた名前!ユイよ!」
「ユイ?ユイはもっとこんなちっちゃい子だったはず?」
「何年経ってると思ってるの重蔵」
「ありゃそうかユイか、ありゃーべっぴんさんになって元気だったかの?」
「重蔵会いたかったの!」
ユイが唐突に重蔵にキスをして周りを震撼させた
「んむ!ユイ?なもご、」
ものすごい力で引き剥がせない
勇者がユイの後ろで固まっていた
「ハァハァごめん重蔵、気持ちが抑えられなくって、もう一回いい?重蔵」
「え?ぐああ、なんだこのチカラは」
「ねえ?重蔵いいでしょ?チューしよ?ね?ググググ」
執拗にキスを迫るユイを必死で止めようとする重蔵
周りも理解できないでいた
なんとか落ち着いたが…………
ベンチに座る重蔵の隣でピッタリくっついて離れないユイも座っていた
「重蔵〜重蔵〜まずはお酒飲み行きましょ」
「酒か!うむぅ、だがのぉわしお金持ってないんじゃよ……」
「私いっぱい持ってるから平気!重蔵養うくらい余裕よ、余裕ーのよっちゃんよ!」
「あ、じゃ、まあご馳走になろかな」
「うん!行こ!重蔵!ルンルンあ!あの店にしようよ重蔵!」
「ユイさんってあんなキャラだったっけ?しかもあんな笑顔で話すの初めて見た、すごい素敵な笑顔」
「なんだあのちっこいおっさんは?なんかユイさんがベタ惚れしてるように見えるんだけど」
そんな声聞こえる中、勇者はペタっとその場に座り込んでいた
「あ!ねえ重蔵!これ食べる?これねー私好きなんだーねえねえこれは」
「ユイさんや」
「なーに?重蔵」
「なんで隣なんじゃ?」
「だってくっつけないじゃん?」
「普通向かい合うのでは?」
「だってくっつけないじゃん?」
諦めた