10話 異変
夕飯を終えしばらくすると就寝時間となった
そこで子どもたちの重蔵の取り合いが始まった
僕だ私だ、ワーワーギャーギャー大騒ぎ
「重蔵さんは私の部屋でも…」
シスターが何か言っていたようだが
子どもたちの声にかき消され聞こえなかった
結論が出なかったので、とりあえず今日は食堂で雑魚寝となった
テーブルを端に寄せ、掃除をしてから布を敷いて各自布団を持ってきて寝ることに
当然始まる枕投げ
なんでやりたくなるんだろうね?
修学旅行みたいで楽しいかも
子どもたちも普段は多くて4人とかで寝ているからこういったのは楽しくて仕方ないのだろう
気持ちはわかる
子どもたちにギューギューにされながら眠る重蔵
こんな生活が続くといいのぉ
そんなフラグ的なことを思いながら
翌日
余った木材を使って将棋の駒やオセロを作ることにした
削りカスも出るので外で作業をしていると姫さんが遊びに来た
どうやら普段からちょくちょく遊びに来ていたらしい子どもたちとも仲がいい
「あら重蔵じゃない、何を作っているの?」
姫さんがオセロを見ていた
オセロはすぐできたのでルールを説明して遊んでみた
何回やっても勝てない姫さんが熱くなってきた
角をあっさり取られるから全然勝てない
そのうちシスターや大人たちも集まってきたのでルールを説明して姫さんの相手をしてもらった
オセロを3セットほど製作し将棋の駒を作り始める
文字を彫るのが大変すぎ
ちょっと雑なのが1セット完成
大人たちの所へ持っていきルールを説明して遊んでもらう
将棋はちょっと難しいかな?
そのうち姫さんはサッカーのほうに混じってた
サッカーは大人気だ
1ヶ月ほど経った頃
重蔵はクエストなどをする生活に戻っていた
相変わらずソロではあるが、高ランクの魔物も無難に狩ることができる重蔵に冒険者たちも一目置くようになっていた
狩りをしていると異変を感じた
「こんな場所に魔物おったかの?」
奥まで行くことなく魔物に遭遇するのは珍しいことだ
目的の魔物を狩ったあとも次々と魔物に遭遇するためなかなか町へ戻れなかった
「奥まで行ってしまったパーティーは大変じゃろなぁ」
近くの魔物を殲滅すると、重蔵は町へ戻ることなく奥へと進んだ
町を出発する際に見かけた、奥へと向かったパーティーのことが気にかかったからだ
時折遭遇する魔物を狩りつつ奥へと進む
材料を回収する暇はない
もったいないけど
すると魔物が集まっているのが見えた
その中心にいるのは人だ
「くそ!なんでこんなにいやがる!」
そう言う剣を持った冒険者の近くには横たわる者が1人
重蔵は唯一となる遠距離攻撃スキルを取得していた
「鬼斬り!」
凄まじい斬撃で衝撃波を飛ばす技だ
そのパーティーの前方を阻んでいた魔物たちを一掃する
「こっちじゃ!」
その声に反応してこちらにやってきた
男2人と女が3人
ぐぬぬ、うらやましい
「ありがとう!助かった!」
リーダーかな?
「あそこで横たわっているのは…」
重蔵が問うと
「いや、あいつはもうだめだ」
リーダーはそう言っていたが
「では、まだ生きておるんじゃな?」
そう重蔵が言うな否や魔物たちに向かっていった
「鬼斬り x10」
10の衝撃波が飛んでいく、こりゃ気持ちええ!
10体ほどいたでかいクマの体が次々と2つに
急いで横たわる人に駆け寄るとキレイな女性だった
ぐぬぬ、うらやまし
見た目から見て魔法使いかな?
抱え込んでリーダーの元へ、下手に触って訴えられたら嫌だしね
ってか1回見捨ててるけどリーダーで大丈夫かな?
パーティー全員が心配そうに集まる
「おい!しっかりしろ!」
リーダーの声にはかすかに反応はするが動けないみたいだ
ヒールは魔力切れ、ポーションも使い果たしたらしいので重蔵は自分のポーションをあるだけ渡した
まあ、3本だけど
しかし、のんびりしている場合ではなかった
血の臭いを嗅ぎつけたのか奥から更に魔物たちの声と気配を感じるのだった