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第13話 修業開始

 父さんとの訓練に向かう兄ちゃんを見送って、ギーラとプリシラと3人で秘密基地に集まった。三日月熊(クレッセントベア)に襲われてから来ていなかったから、約3ヵ月ぶりの秘密基地だ。


 午前中は戦闘訓練で、午後から魔物狩りの予定。

 まずは、ヘーゼルさんに憑依されたことで変わってるという感覚の確認。

 とりあえず、何回か素振りをしてみるように言われた。三日月熊(クレッセントベア)との戦いの後に作った新しい木刀と、ヒノキの木刀と、アスナロの木剣と、ハンノキの木刀の4本のうち1本をギーラが、2本を僕が使う予定だ。鉄の剣は父さんとの特別訓練で使うから、兄ちゃんが持って行っている。

 兄ちゃんは一日中訓練しているのに、剣術習得率低下の効果が付いた剣でやらなければいけないのはちょっともったいないけど、他にないから仕方ない。町で良い剣が見つかると良いな。

 ヘーゼルさんにそれぞれの木刀の性能を伝えて、どう組み合わせるか相談する。

 ちなみに新しい木刀はこんな性能の木刀だ。


 木刀

 材料:チェスナット

 付加能力:魔力成長量微向上、魔法制御力微向上、魔法剣術習得率向上

 潜在能力:なし


 間に合わせの材料で作ったから、あんまり僕やギーラ向きの性能じゃない。どちらかというと兄ちゃん向きだろうと思ってたけど、ヘーゼルさんはこの木刀の性能を気に入ったらしい。素振りはしばらくこの木刀を使うように言われた。ギーラの訓練用はいつも通りのアスナロの木剣。


 素振りだけなら、家の庭でもやり続けてたんだけどな。父さんが毎朝やってるから、邪魔にならない程度に近づいて一緒に。たまに教えてくれないかなと思って視線を向けてたんだけど、父さんは一心不乱に剣を振っていて、一度も目も合わなかったし、声をかけられることもなかった。


 数回、素振りを繰り返していると変化に気付く。魔法を使うときと同じように体内を魔力が流れる感覚がある。それも素材の加工に魔法を使ったときよりも力強い流れだ。


『家の庭で素振りしていたときは、私が意図的に抑えていたが、今の君の体内には私の魔力が巡っている。魔力は魔法にだけ使うわけじゃない。白以外の人間は、無意識に体内を巡る魔力を攻撃や防御、体捌きに使っている。魔力が乗ったときの攻撃力をつかめるように流れる魔力を意識してくれ』


 白とそれ以外の人間の違いは見た目以外にもあった。普通の人は生まれたときから、魔力が体内を流れているけど、白にはない。白が弱いって言われていたのは、これが理由だったんだ。


『魔力を意識し、流量を制御することは、魔法の初歩だ。普通の人は生まれたときから無意識に魔力を使っているから、感じ取ることが意外と難しいんだが、君にとっては私に憑依されてから突然生じたもの。簡単に感じ取れるだろう?』


 確かに、最初にヘーゼルさんが魔法を使ったときから体内を流れる魔力を感じ取れた。当たり前のものは気付きにくいけど、僕にとっては異物だったから簡単だったのか。

 ん? ひょっとして、僕のパンチの威力が低かったのも魔力がなかったせい?


『そのせい()ある。攻撃力は込めた魔力だけで決まるわけじゃないからな。単純な腕力の問題ももちろんあるよ。成長するに従って解消されていくだろうが、鍛錬は怠らないように』


 おぉ。ヘーゼルさんが師匠っぽいこと言ってる。

 ヘーゼルさんと僕の会話が聞こえていたのか、プリシラがヒノキの木刀を持って見よう見まねで素振りをしてみていた。魔力を感じ取ろうとしているみたいだけど、上手くいかないのか首をかしげている。


 魔力を意識しながら素振りをしていると魔力が多めに乗るときと、ほとんど乗らないときがあるのが分かる。基本的にはうまく力が込められたときに魔力もしっかり乗るみたいだ。

 加減を間違えると危険だから、これはしっかり修得しておかないと。


『よし、次だ。ちょっとだけ体の制御を貸してくれ。実演してみせるから、感覚をよく覚えておいて、真似してやってみろ』


 ヘーゼルさんは木刀の峰の所に左の掌を当て、親指と他の指の間で刀身を挟む。直接触れずに少し隙間を開けた状態だ。その状態でスッと根元から刃先まで左手を滑るように動かすと、刀身が氷で包まれた。しっかり研ぎ澄まされた刃のようになった氷の刀身で覆われている。


 氷刀

 氷の刃を持つ刀。込められた魔力に応じた硬度と切れ味を有する。

 材料:チェスナット

 付加能力:魔力成長量微向上、魔法制御力微向上、魔法剣術習得率向上

 潜在能力:なし


 名前まで変わってる。

 魔力の動きは覚えた。魔力を左掌から放出して氷の刀身を創り出すには、魔力の制御が大事みたいだ。刃の部分に流す魔力は多めの量を短い時間で込め、峰部分は量は少なめだけれど、やや時間をかけて込める。魔力を込める時間は密度に影響していそうだ。刀身がデコボコにならないように根元から刃先まで、木刀の形状をなぞるように魔力の流量や密度を制御していた。


「なんだ、それ! カッコいい! 氷の刀! どうやったんだ? なあ、オレもやりたい!」


 ギーラが興奮した様子で氷刀をのぞき込む。


「そうだろう? ギーラ君はこれから町で魔法を習うのだから、その邪魔にならない程度に基礎の基礎だけ練習しておくか? プリシラちゃんも興味がありそうだし、よかったら一緒にどうかな?」


 3人まとめて教えてもらうなら、三日月熊(クレッセントベア)と戦ったときみたいに、意思伝達を使った方が良さそうだ。僕に体の制御を返してもらった状態でもヘーゼルさんの声が2人に届くか試してみる。


『ほう。これも便利だな。4人で口を動かさずに会話可能なようにできるか?』


 今までは、必ず僕を経由して他の人に伝える感じだったけど、ヘーゼルさんは僕と同じという判定なのか問題なくヘーゼルさんから2人に話しかけられるようだった。

 でも、さらに4人同時となると難しい。プリシラを入れての3人までなら何とかなったけど、これはプリシラが意思疎通のスキルを持っているからだろうな。


『なるほどな。引き続き色々試してみる必要はあるが、できなさそうならマルドゥクが指揮官役になるしかないな』


 僕が指揮官になるより、兄ちゃんあたりがなった方が良い気がする。そうすると兄ちゃんの意思を他の人に直接伝えられるようにする必要があるわけか。


 3人で習うことをできるだけ揃えたいということで、氷の刀身を作るのは後回し。僕も魔力の制御を練習することになった。

 体を動かすなら、別に素振りじゃなくても構わないそうなので、プリシラは弓で練習。ヘーゼルさんが様子を見て、上手く魔力が乗っていたときは教えてくれるんだけど、プリシラは今一つピンと来ないみたいだ。

 ギーラも最初に素振りで感覚をつかもうとしていたときは、ピンと来ていないみたいだった。体術でもいいと言われて正拳突きをしていたら、しっかり威力が乗ったときと魔力が乗ったときが一致したみたいで、なんとなく糸口はつかめたと言っていた。


 僕は氷刀になった木刀を振るう。魔力を込めずに振っていると氷が解けて刃先が丸くなっていくから、魔力が乗っているかどうかが少し分かりやすい。斬撃飛ばしは刀に込めた魔力を刀を振った軌道に合わせて放つイメージで練習してみるように言われたから試してみたけど、意外と難しい。以前まで武器の潜在能力で簡単にできていたのが嘘みたいだ。

 数百回と振り続けて、最後の一振りでようやくできた。氷刀は魔力が切れてただの木刀に戻っていた。


『もうすぐ昼だな。いったん切り上げて昼食。その後は魔物狩りにしよう。持ち帰れるギリギリまで狩ったら、感覚をつかみやすいように魔力を流し込んでやる』

「えぇー。簡単な方法あるなら先にやってくれよ。感覚つかむのにこんな苦労したのに」

『他人の魔力を流されると気持ち悪くなるぞ? 体調不良の状態で魔物を狩りに行くつもりか?』

「ヘーゼルさん、僕はヘーゼルさんの魔力が体内を流れても気持ち悪くならないけど?」

『元々の魔力がないから反発が起きないからだと思うが、白は問題ないみたいだ。今までの白も憑依されて体調を崩した者はいなかった』


 ヘーゼルさんから魔法に関する講義を受けながら、昼食。飲み物はギーラはハイブリッドポーション、僕とプリシラはハイポーションを飲むように指示された。

 兄ちゃんも体力が尽きたらポーションを飲まされて一日中訓練を続けているらしいから、僕達もこのくらいは頑張らないと。


 ギーラはさっきまで目を輝かせて訓練に打ち込んでいたのに、座学中は目が死んでいる。

 プリシラはすごい真剣だ。


 講義内容は、魔法と魔力による身体能力強化の違いについて。

 自分の体外に魔力を放出して発動させるのが魔法で、魔力による身体能力強化は基本的に体内で魔力を消費する。魔法による身体能力強化もできるけど、自分自身にかけるなら、わざわざ魔法でやるのは魔力の無駄遣いだそうだ。

 もちろん、身体能力を強化する魔法を覚えておく意味はある。味方にかけられるからだ。いわゆる強化魔法だね。

 加工魔法と呼んでいる多くの魔法も強化魔法に類するものが多いらしい。ある意味、物を強化してるんだから納得だ。


 ◇


 昼食を終えて、魔物狩りに出発。

 魔物の生息域はよく分からないから、プリシラに感知術をお願いして、ヘーゼルさんに倒すかどうかを判断してもらう。

 一応、狙いはジャイアントスパイダーやジャイアントシルクワームなどの糸が得られる魔物だ。魔法陣を書くのにインクだと洗濯で消えてしまいそうだから、刺繍するか織り込むことにしたからだ。刺繍する場合は革よりも布の方が楽だから、布にできる羊毛が採れるホワイトシープなんかも歓迎だ。


 ヘーゼルさんは、ハシバミの木があった場所から少し北辺りを目指してるみたいだ。今まで住んでいた場所の付近の様子が気になるのかな。


『マル、変な魔物がいる』

 プリシラが感知術で見た魔物の姿を意思疎通で見せてくれる。


『上位種がいるな。ちょうどいい。魔女蜘蛛(ウィッチスパイダー)だ』

『ヘーゼルさん、ちょうど良くないよ! 上位種だし、周りに10匹以上ジャイアントスパイダーがいるみたいだよ。気付かれないうちに他の場所に行こう』


 ふふっといたずらっぽく笑って体の制御を奪い、ギーラのアスナロの木剣と僕の木刀に氷の刀身をかぶせると、蜘蛛に向かって一直線に走っていく。

 ヘーゼルさん!? 冗談じゃすまないんだけど!


『今回はサービスだ。よく感覚を覚えておけ』


 魔女蜘蛛(ウィッチスパイダー)を視界に納めると、氷刀を一振り。

 魔力を帯びた氷の斬撃が飛んでいき、魔女蜘蛛(ウィッチスパイダー)の首が飛ぶ。絵本に出てくる魔女がかぶっているような三角帽をかぶっているように見えたけど、帽子の下は普通に蜘蛛の顔だった。

 斬られた首の断面は凍り付いていて、血は流れてこない。


『さて、3体残して倒せばいいんだったな』


 そう言って周りを見渡す。12体のジャイアントスパイダーに囲まれている。辺り一帯の木々の間に蜘蛛の巣が張り巡らされていて、蜘蛛も簡単に逃げ出せないみたいだ。下の方は空いてるから、子供は楽々出入りできちゃうけど。

 この巣から蜘蛛の糸を採ったら相当な量になる。素晴らしいサービスだ!


 そんな呑気なことを考えていたら、不意に体の制御が戻ってきた。9体のジャイアントスパイダーが氷漬けになっている。本当に3体残して倒してくれたみたいだ。

 ――って、遠い所の9体を凍らせて、近くにいる3体を残してる! しかも、まだギーラとプリシラが追い付いてきてない!


『じゃあ、頑張ろうか。マルドゥク』

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