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第5話 行商人

 昼食に呼ばれた。母さんがギーラ達の両親に話しておいてくれて、ギーラとプリシラも家で食べることになった。


 隣に座ったプリシラと今年作った保存食の情報交換をしていたら、「隙あり!」って声とともにギーラのフォークがスイっとのびてきて、僕のおかずを取っていく。

 にやけ顔でおかずを口に運ぶギーラに兄ちゃんがチョップ。ギーラが頭を押さえてる隙に、ギーラの皿からおかずを取って、僕のお皿に。


 こういうふざけたやり取りって、家では起きたことなかったな。

 2人のやり取りが子供っぽくって、つい笑ってしまう。家でこんなににぎやかに食事をしたのは初めてだ。


 あと、1年半か。アブヤドって都市に行ったら、こんな時間は無くなってしまうのだろうか。



 食事が終わったら、いよいよ行商人さんのお店が開く頃だ。ギーラとプリシラの両親が迎えに来たから、2人とは別行動。蔵にあった冒険者用の大きなバッグに荷物を詰めて出発する。


 村役場の訓練場は思ったよりは狭かった。村の全員が集まっているんじゃないかと思うくらいの人が集まっている。人でいっぱいだから、狭く見えるだけだろうか。


「奥の3人が行商人さんよ。手前の武装してる人たちは、護衛の冒険者だけど、余った素材とかを売っているの」

 母さんが説明してくれる。顔は兄ちゃんを向いているけど、僕にもちゃんと聞こえる声で言ってくれている。


「先に家の買い物を済ませてしまうわね。奥の右側の行商人さんの店から行くわ」

 店と言っても、訓練場の一画に敷物を敷き、商品を陳列しただけの簡素なものだ。それでも、この村では見かけない物で溢れている。物珍しさで皆が集まるのも納得だ。


 右側のお店は、小麦粉などの穀類や香辛料などの食料を主に扱っているようだ。

 母さんはブラックボアや突進ウサギの干し肉と小麦粉、塩、香辛料を交換していた。目利きで見る限り、やや安めに干し肉の価値を見積もられているものの、そこまで不当な交換レートではなさそうだ。


 次に中央の行商人さんの店に行く。

 こっちは、糸などの素材と、衣類や武器・防具を扱っているようだ。売れ筋は防寒具のようで、村の人達が次々と手にとって見ている。

 母さんは、きれいに染色された糸をいくつか選んだ後、子供用の防寒具を見て、真っ白なコートを2つ手に取った。


「どっちがいいかしら?」


 僕の方を見てはいないが、サイズと色から言って僕用に買おうとしてくれているようだ。


 ホワイトシープコート

 ホワイトシープの羊毛で作った毛織物をフェルト状に加工して作ったコート。防寒具にしてはやや薄い。

 材料:毛織物、木綿糸、木のボタン

 付加能力:耐寒性微向上、敏捷性低下、睡眠耐性低下

 潜在能力:なし

 適正価格:20000ダハブ


 キルティングコート

 布の間に綿を挟んで作ったコート。綿が少なく、防寒具としては今一つ。

 材料:毛織物、綿、木綿糸、木のボタン

 付加能力:耐寒性微向上

 潜在能力:なし

 適正価格:25000ダハブ


 比べるとキルティングコートの方がいいけど、それほど良さそうに見えない。


「これは、いくらですか?」

 行商人さんに聞いてみる。

「40000ダハブだよ」

 高いな。そんな値段で買うのはもったいない。

 僕はバッグからラビットファーマフラーを取り出し、母さんに見せた。

「母さん、僕、自分で作るよ。これと同じ素材で作れば、十分あったかいから」

「おや、坊ちゃん、いいものを持っているね。良かったら、3000ダハブで買い取るよ」


 適正価格は5000ダハブ。普通の人は性能を見抜けないから、買い叩かれるのは覚悟していたし、先見の明でも予測済み。

 このマフラーについては、あんまり安いようなら売らなくてもいいと思ってる。プリシラや母さんにプレゼントして使ってもらってもいいし。

 母さんはマフラーを手に取って、ふわふわの手触りを楽しみながら「これ、フェンが作ったの?」なんて兄ちゃんに聞いている。結構気に入っていそうだ。


 値段によっては売っても構わないから、とりあえず価格交渉をしてみる。

「これと同じ素材でケープも作ってあるんだ。2つセットで買いませんか? 20000ダハブで」

 言いながら、ラビットファーケープも取り出す。前で紐を蝶々結びにして止めるかわいらしいデザイン。紐の先には丸いポンポンも付いてる。性能が分かってもらえなくても、見た目は評価してもらえるはずだ。


「いやいや、それは高すぎだよ。セットで13000でどうだい?」

「行商人さん、防寒具は売れ筋みたいだね。旅の途中で商品を補充するのは難しいけど、この先はどこを回るの?」

 行商人さん達は近くの町からやってきて、次はしばらく小さな村を回るって話だ。しばらく商品の補充は難しいだろう。

「……分かった。15000」

 行商人さんは買った値段に利益を上乗せして誰かに売ることになるから、適正価格では買わないだろう。このくらいで妥協してもいいけど、ちょっとだけ粘ってみよう。

「ねぇ、この木綿糸も付けてくれませんか? そしたら、15000で売ります」


 木綿糸

 綿花を紡いで作った糸。

 適正価格:300ダハブ


「う~ん、その糸は結構買い手が付くんだよ。代わりにこっちの糸ならつけてあげるよ」

 え? そっちの糸をくれるの? 表情に驚きが出ないように抑える。

「分かりました。交渉成立ですね」


 紬糸

 魔物の繭から採った太さが不均一な絹糸。加工工程で加えられた魔力の制御が甘かったため、太さが一定にならなかった。布にすると独特の美しい光沢を放つ。太さが不均一なため、刺繍糸には向かない。加工行程で魔力を含み、魔法との親和性が高くなっている。

 魔物の種類:極光蛾(オーロラモス)の幼虫

 適正価格:5000ダハブ


 これなら適正価格と同等での取引。この紬糸が何かに使えないと意味はないけど、得した気分だ。


「大丈夫かしら。フェン、コートが用意できなかったら、外に連れて行ってはダメよ。風邪をひいてしまうから。……さっきのケープ、売らずに着たらよかったんじゃないかしら」

 小さな声で母さんが兄ちゃんに言っていた。

 いやいや、僕が着るにはかわいすぎるデザインだ。ただでさえ、僕は見た目が女の子っぽいみたいだから、着る物はカッコいいのが良い。

「大丈夫。まだ素材は残ってるし、同じの作って着たらいいよ。さっきのは大人サイズだから、ちゃんと子供サイズで作らないと」

 兄ちゃんまで!?


 ラビットファーケープを着るように勧めてくる兄ちゃんに文句を言いながらも、次の店に向かう。行商人さんの店はここで最後だ。主に薬を売ってるみたい。

 でも、置いているポーション類の色が濁っている。ちょっと飲みたくないな。


 ポーション(偽物)

 体力の回復・ケガの治療に使われる薬品に似せた水。薬草の苦みを意図的に加えてあり、飲むと効きそうな気はするが効果はない。

 適正価格:0ダハブ


 偽物だった。

 母さんが買ってしまったらどうしようかと思ったけど、ポーションを見て首を捻っている。結局、何も買わずに店を離れた。


「フェン、作り方を教えるから10個くらいポーションを作ってもらえないかしら。さっきのお店のポーションは、質が悪そうだったから」

 兄ちゃんは「了解」って返した後、僕にウィンクしてきた。うん、ポーションなら、もう用意できてるね。

「実は家にいくつか用意してあるんだ。あとで渡すから、お小遣い、よろしく!」

「あら、準備がいいのね。分かったわ。1個750ダハブでどう?」

「そこは、実物を見て決めてよ」

「はいはい」

 ポーションは半額か。ヘーゼルさんの魔力は強すぎて、普通のポーションじゃなくてハイポーションになっちゃうから、正確にはリクエスト通りの品物じゃないしな。母さんは回復魔法が使えるらしいから、家の誰かが大ケガしたときに魔法と併用するんだろう。それなら、金額は気にしないでいいと僕は思う。


 冒険者さん達の店を眺めると、空のポーション瓶が並んでた。さっきのお金でこれを買いたいな。

 若い茶髪のお兄さんがやってるお店だ。お兄さんは腰に短剣、背中に矢筒を装備したまま座っている。弓は壁に立てかけてある。弓士さんだろうな。


「この空のポーション瓶はいくらですか?」

「いらっしゃい……って白の子供か。ポーション瓶はポーション作れないと買っても意味ないぞ」

「良いんです。上の子は魔法を使えるので」

 母さんがアシストしてくれた。

「そうでしたか。ポーション瓶は1個100ダハブだけど、君たちがもしポーションを持ってたら、売ってくれないか? ……森の近くを通ったときに魔物に襲われたから、手持ちのポーションが減ってて。同行してる行商人のポーションは激マズだったから、あれよりましなポーションがあったら補充しておきたいんだ」

 最後の一言は声を小さくひそめて言った。

 偽物のうえに不味いのか。なら僕の作ったポーションを買ってくれそうだな。

 先見の明でどの程度で買ってくれそうか予測をしつつ、ハイポーションを1つ取り出して見せた。


「色が濃いな。成分の濃いポーションは色が濃いって言われてるけど」

 そう言ってから、僕と兄ちゃんを眺め、少し考えるような表情になった。子供の作ったものだし、そんなに効果はないと考えてるんだろう。

「……1000ダハブでどうだ?」

「もう一声!」

「ダメだ」

 う~ん、先見の明で見た通りの展開ではあるんだけど、子供だからと安く買いたたかれるのは残念だ。


「買うのは1個だけ?」

「ああ、1個でいい」

「いいよ。最初の1個だけサービスで」


 買った1個の味を確かめて追加で買ってくれるかもしれない。ポーションなのに効果じゃなくて味で評価されるっていうのも複雑な気分だけど、効果はケガをしているときじゃないと確認できないだろうし仕方ない。

 売ってた空のポーション瓶は5個だったから、補充したい数は合計5個なのかな。

 追加で売るときには、改めて()()が必要になる。後で兄ちゃんと明日の追加販売のときの対策をしておく必要がありそうだ。


 この日は、なめし革とかウルフの牙を糸を売ってた行商人さんにいくつか売って、合計で45000ダハブ(と紬糸)の売上。

 明日は何か買いたい物がないか探そう。

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