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第3話 役に立ちたい

 今日は1日、秘密基地で過ごす日だ。午前中は一昨日と昨日に集められた肉以外の素材の処理。午後は体術の特訓。


 まずは、高く売れそうな絹糸から取り掛かる。

 家で余っていた糸巻きを持ってきたので、途中で切れないように気を付けながら繭から糸を巻き取っていく。

 冬場、家で母さんは機織りをしているらしく、空の糸巻きはたくさんあった。なんでも、税金の一部を織物などの加工品で納入することになっているらしい。織物だったり、なめし革だったりといった加工された素材が不足していることから、10年以上前にこの制度が取り入れられたそうだ。今では、ほとんどの家で時間のあるときに、織物を織ったり、皮をなめしたりしているらしい。用意できない家は、行商人や他の村人から買って納めることになる。

 それで、うちでは母さんが毎年織物をしている。いつも色とりどりの糸を行商人から買い上げて、布を織っているんだって。僕もやってみたいけど、母さんは相変わらず僕と目を合わせてくれないから、無理かな。


 そんなことを考えていたら、糸を巻き取り終わった。繭1つで糸巻き1つ分の糸がとれた。


 絹糸

 虫系の魔物の繭から採った糸。非常に美しい光沢がある。布にしたときの着心地もよく、ドレス等の高級な衣類に主に用いられる。糸のまま刺繍に使い、魔道的な効果を付与するためにも使用される。加工行程で魔力を含み、魔法関連の効果を得やすくなっている。

 魔物の種類:ジャイアントシルクワーム

 適正価格:4500ダハブ


 適正価格が高い。けど、これも価値を分かってもらえなくて買い叩かれちゃうのかな。

 7つもあるから、どんどん糸巻きに巻いていく。

 気がついたらプリシラが近くにいて手元をのぞきこんでいた。


『ごめん、気付かなかった。中に入ってた虫の魔物、気持ち悪くなかった?』

『少し。でも、冒険者になるんだから、これくらい大丈夫。それより、すごくきれいな糸ね』


 プリシラは絹糸の美しい光沢が気に入ったみたいだ。そして、何度か魔物の死体やら、剥がされた皮やらを見て慣れてきたのか、虫は大丈夫だったようだ。


『ねぇ、素材の処理の仕方を教えてくれない? 私も何か役に立ちたいの』


 役に立ちたいって気持ちは分かる。皮についた脂肪を落とすのとかは、プリシラにはきつそうだから、糸を巻き取るのを手伝ってもらおうかな。

 弓の練習をしたときみたいに意思伝達でイメージを伝えると、多少時間はかかったけど、ちゃんと巻き取ってくれた。

 午前中はずっと2人で作業をして過ごした。こういう穏やかな時間は大好きだ。


 午後からはギーラと体術の特訓だ。でも、体術ってやったことないんだよな。

 剣術のときと同じように、ギーラは即実戦! って感じで殴りかかってきた。とっさに腕を体の前に出したけど、間に合わずにそのまま吹っ飛ぶ。


「げふっ。ケホケホッ! ……うっぷ」

 危うく吐きそうになる。昼食後にこれはきつい。あわてて兄ちゃんが飛んできた。


「何やってんだ、ギーラ!」

「あ、わりぃ。剣はすぐに対戦形式で訓練できたから、体術もいけると思って。痛かったか? わりぃ」


 まずは基本の体の動かし方から兄ちゃんが教えてくれた。兄ちゃん達は、村役場での訓練で毎朝やっていることらしい。


「ギーラ、ごめん。ある程度慣れるまでは基礎練習やっとくよ」

「おう。期待してるぜ。フェンは、まったく相手してくれねぇんだよ。相手が欲しくて困ってんだ」

「お前が乱暴だから、誰も相手したがらないんだよ。少しは反省しろ!」


 それから、兄ちゃんにしばらく体術を教わっていたけど、作戦会議をすると言うので、一旦中止。


「昨日、俺とマルで話してたんだけど、目標金額は6万ダハブって考えてるんだ」

「大金じゃん。そんなにするか?」

「やや多めに見積もっといた方がいいだろ? 今まで見た中で1番高かったときを基準に考えたんだ」

「ふーん。で、今のペースでいけそうなのか?」

「毎年、行商人が買っていくものって違うだろ? 食料以外一切見向きもしない年もあれば、魔物の牙とか甲羅とか加工用の材料が多く買われる年もあった」

「今、集まってる素材で高そうなのは糸だから、糸を買ってくれれば目標金額に簡単に届きそうだけど……」

「ん? なんで糸が高そうだって分かるんだ?」

 あ、いけない。ギーラに目利きのことは話せないんだった。

『分かるわよ。だって蜘蛛の糸も絹糸もきれいだもの』

「きれいなら高いのか?」

「えっと、きれいなものはお金に余裕のある人に売ることになるだろうから、高めでも買ってくれると思うんだ。後は、足りないものなら、高くても買ってくれると思うけど、何が足りないかは分からないしなぁ」

「ほー、なるほどなぁ」

 ギーラ、興味なさそうだね。


「結論として、この森で採れる素材でどの種類が売れても6万ダハブに届くぐらいまで、がんばろうと思うんだけど、どうかな?」

「無茶言うなよ。6万だぞ。どの種類でも、って合計いくら分稼ぐつもりだよ!」

『売れなかったものは、どこに置いておくの? 秘密基地が物で溢れちゃわない?』

 兄ちゃんの空間魔法も秘密だったな。

「春になったら何人かで近くの町に買い出しに行くだろ? 護衛を兼ねて何人か戦える奴がついていくことになる。俺かギーラがそこに入って、余った物は町で売ってみるよ。ま、馬車に積める分だけになるけど」

「お、お前も護衛役を狙ってたか。オレも町に行ってみたいから、何とか潜り込むつもりだったぜ」

 兄ちゃんとギーラが居なくなると寂しくなっちゃうな。でも、町なら色々な物が売れそうだ。


 僕も付いていきたいな。どんな場所なのかな。町にはどんなお店が並んでいるんだろう。


 5歳児を連れてはいけないだろうから、町で余った物を売るのは、兄ちゃんとギーラに任せるしかない。

 僕が貢献するなら、売れる物の予測かな。それとも、素材を何かに加工したら良いだろうか。ものづくり関係のスキルも持っているらしいし。

 そう思ってイメージを浮かべようとしたけど、上手くいかなかった。作れるものを具体的にイメージしないといけないんだろう。

 今の僕でも作れるもの。兄ちゃんに相談してみよう。

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