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第10話 魔物狩り作戦会議

 今日の午前中は、アスナロの木剣作りを進めることにした。午後は兄ちゃんとギーラが作戦会議をしたいんだって。何の作戦を立てるんだろう。

 プリシラは今日も素振りだ。


 集中して作業していると、時間が過ぎるのが早い。あっという間に昼過ぎになり、兄ちゃんとギーラがやってきた。


「それでは、第1回収穫祭に向けた作戦会議を始めまーす!」

 ギーラの仕切りで作戦会議が始まった。僕はすかさず手を挙げる。

「はいっ、質問。収穫祭って何?」

「マルとプリシラは参加したことないよな。毎年、秋に行うお祭りなんだ」


 兄ちゃんの説明によると、冬に備えて秋に食料を集め、冬越えの準備が完了したことを祝うお祭りらしい。ほとんどの村で行われていて、1年で一番盛り上がるイベントなんだって。

 毎年やっていたはずなんだけど、僕やプリシラはまだ小さいから何も手伝ったりしていなくて、特に記憶に残っていない。言われてみれば、秋頃にちょっと村の中が騒がしくて、いつもよりご馳走が出た日があった気がする。


「うちの村では10月の終わりか11月の初めに行われることが多い。各地を回る行商人と役人と精霊術師が来て、そいつらがいなくなったタイミングで開始だから、年によってちょっとずつ時期がずれるんだ」

「行商人かぁ。どんな商品を持ってくるんだろ」

 行商人さんは、商品を色々な場所に持って行って各地で商売をする人だ。店のほとんどないこの村にとっては、行商人の持ってくる商品は物珍しい物ばかり。

 収穫祭よりも行商人からの買い物を楽しみにしてる村人も多いとか。


「マル、注目するのは行商人じゃなくて、精霊術師の方じゃないのか?」

「あ、そうだね。何のために来るの?」

「精霊術師は冬を越せる備えが足りない村のために来るんだ。備蓄をチェックして、不足しそうなら精霊術で食料の確保を助ける。だから、植物の成長を促進させられる土か水か光の精霊術師が来るんだよ」

「精霊術師ってそんなことできるの?」

「人によって力に差があるみたいだけど、ある程度は。マルは、将来のためによく見ておけよ」

「うん、分かった」


「役人は各村の人数調査と徴税のために来る。行商人には余剰の食料を買い取ってもらったり、足りない物を売ってもらったりするんだ。薪とか道具類とかチーズとかの村で作ってない加工食品とか。何を持ってきてくれるか分からないけど、掘り出し物がないか探すのは楽しいぞ」

「そこで、作戦会議が必要なんだよ! オレ、剣はもらったけど、防具はもらえてないからさ。手に入れたいけど、この村、雑貨店が1つあるだけだろ? 防具は売ってないから、行商人が来る収穫祭前のタイミングがチャンスなんだ」

「冬越えのために、村役場の蔵がいっぱいになるまでは食料は村に納めないといけない決まりだ。でも、それ以上に収穫した分とか、食料以外で集めたものは、集めてきた者が自由にしていい。行商人に売ってお金にしたり、物々交換で何かと交換してもらうこともできるってわけ」

「そっか。じゃあ、がんばって売れるものを集めなきゃだね!」

 すごく楽しそうだ。僕も何か売れるものを集めておきたいな。


 9月から村の周囲の魔物狩りが始まり、3週間くらいかけて安全を確保しつつ、魔物の肉を干し肉などの保存食に加工していく。その後、女性や子供も総出で穀類や木の実などを収穫していき、物によってはこれも保存食に加工。10月下旬までそれを続ける。これが収穫祭までのスケジュール。

 村役場では、集まった食料の種類とかを見て、足りない食料・売ってしまって問題ない食糧を確認し、行商人たちとの売買で冬への備えを整える。


「今年からオレとフェンは魔物狩りにも参加するからな。大量の肉を確保して、すぐに村の蔵をいっぱいにしてやるぜ」

「干し肉は結構、高く売れるよ。何なら、蔵を満たした後に追加で魔物狩りをしてきてもいいかもな」

 2人ともすごい張り切ってる。これは、精霊術師さんの出番はないかな?

「村の食料が十分だった場合は、精霊術師は何をするの?」

「去年は、森の様子だけチェックして何もせずに次の場所に行ってたな。森がやせてきてる、とか言ってたけど」

「精霊術師の力を借りる場合は、報酬が必要だからな。最近は特に困ってなかったから、今まで術を使うところ、見たことないんだ」


「話を戻すぞ。明日から7月だ。魔物狩り開始まで2か月。肉はあんまり早く狩っても保管に困るけど、皮とか牙とかが売れる魔物もいる。これから2か月はそういう素材を集めていこうぜ」

「ギーラ、焦りすぎんなよ。全員で行く訳にはいかないし、魔物狩りは交代で2人ずつ。悪いけどプリシラは秘密基地で待っててくれ」

『分かった。私は干し肉とかの保存食作りの本が読みたいな。フェンさん、貸してくれる?』

 プリシラは、一瞬悔しそうな顔をしたけど、すぐに笑顔で応じた。


「了解。明日、家から持ってくるよ。男子3人は順番で素材収集、昨日は俺とマルが行ったから、明日は俺とギーラでいいか?」

「僕は、作りたいものもあるし、魔物狩りはたまにでいいよ。足引っ張っちゃうだろうし」

「ダメだ。お前はオレの弟子として、戦闘訓練が必要だ。オレが一人前に育ててやるからな。3人でローテーション組んで2人ずつ順番に行くぞ」

 ギーラが胸を張って言った。

「おい、朝話しただろ。マルは俺と行くの。頻度は3回に1回。それ以外は仕方ないから俺とお前の2人」

「いーや。オレとも狩りに出掛けて、オレの体術や剣術を伝授する。その方がマルのためだ」

「お前じゃ、ケガしても治せないだろ。何かあったらどうすんだよ!」

「ケガがこわくて戦闘訓練ができるか! ちゃんと引き際は心得てるし、問題ない!」

 兄ちゃんとギーラがけんかを始めてしまった。


『もう! ケンカしちゃダメ』

「ケンカしないでよ、二人とも!」


 プリシラと2人で止める。

 兄ちゃん、ギーラ相手だと妙に子供っぽく突っかかるときあるんだよな。


「兄ちゃんとギーラの2人で狩りを1回、僕と兄ちゃんの2人で狩りを1回、全員秘密基地で僕がギーラに訓練してもらうの1回のローテーション。これなら、2人の意見をそれぞれ取り入れてるでしょ?」

 2人に任せていたら決まらないから、提案してみる。


「……分かった。オレはそれでいいぜ。慣れてきたらオレとも狩りに行こう」

「ん、まぁ、それなら俺はいいよ。ギーラ、どうせなら来年は、プリシラも連れて4人で狩りに行くのを目標にしないか? 今年の秘密基地で訓練する日は、プリシラにも参加してもらって」

『本当に? 来年になったら私も行ける?』

「プリシラも最低限の動きができるようになって、他の3人も他のメンバーをフォローできる程度に強くなってたらな」

「おう。オレがちゃんと守るから安心しな。来年からは4人で魔物狩りだ!」


 良かった。何とかまとまった。僕は、プリシラの夢を応援するためにも、訓練と弓作りを頑張ろう。

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