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第8話 目利きと鑑定

 夕食後、書斎で兄ちゃんと話す。


「マル、お前に聞きたいことがあるんだ。今日削ってた木材、どうやって調達したんだ?」

「どうって、木の枝を切ったんだよ」

「あんな太い枝、木の高い所にしかないだろ? 刃物を持って木登りするのは、もう少し大きくなってからにしような。木材が欲しかったら、俺が木に登って切ってきてやるから」

「木に登らなくても、斬撃を飛ばせば枝を切れるから大丈夫だよ」

「え? 斬撃を飛ばす?」

「うん、最初に作った木刀に斬撃飛ばしの潜在能力が付いてたでしょ? あれを使って木を切ってるんだ」


 兄ちゃんに真顔でじっと見つめられた。どうしたんだろう。小さく首をかしげる。すると、兄ちゃんは腕を組んで何かつぶやきだした。


「斬撃飛ばしって剣術≪中≫くらいまで習得してないと覚えないはず。マルのスキルリストには、剣術≪下≫もまだないし……、目利きか?」

 剣術≪中≫とか≪下≫とか、何の話だろう。


「明日、その技見せてもらってもいいか?」

「うん、いいけど。兄ちゃんやギーラもできるんじゃないの?」

 使うのに苦労しなかったから、特に難しいことじゃなくて、誰でもできるんだと思ってた。


「う~ん。俺はできないな」

「そっか。じゃあ、ギーラが切ってくれた木材が特別で良い木刀ができたんだね!」

「そう、かなぁ?」

 兄ちゃんは首をかしげているけど、きっとそうだ。木材を探しているときに、森の木を見渡したけど、中には「魔物を呼びやすい」とか、怖い表示がされたものがあったもん。きっといい性能の木材を選んでくれたんだ。同じ木を僕が見ても、普通の樫の木だったけど、きっとギーラには見抜けたんだ。


「なぁ、マルは物の性能が分かる、そうだろ?」

「うん、なんかじっと見てると頭の中に文字が浮かぶよね」

「それは、マルのスキルの一つだ」

「スキル?」

「才能みたいなものだよ。ひびが入ってるとか、刃こぼれしているとか目に見える場合は別だけど、ほとんどの人は、その物がどんな性能や特徴を持つのか、見ただけじゃ分からないんだ」

 僕のやってることが他の人はできない? 驚いて兄ちゃんの顔を見つめるけど、嘘や冗談を言っている様子ではない。


「あ、でも兄ちゃんやギーラはできるよね?」

「ギーラはできないよ。兄ちゃんもできない。兄ちゃんの場合は、物じゃなくて、人とか魔物のスキルを見抜けるよ」


 兄ちゃんは、人とかの生きている相手のスキルが見抜けて、僕は物の性能が見抜ける。兄ちゃんと対になるようなスキルを持ってるなんて嬉しいな。


「じゃあ、兄ちゃんはもらった鉄の剣の性能には気付いてないの?」

「ん? あの鉄の剣の性能? 何かあるのか?」

 僕が教えると、兄ちゃんは脱力してしまった。


「練習用には最悪の効果が付いてたんだな」

「うん、それで兄ちゃんたちの練習用の剣を作ろうと思って、今日は木材を集めたんだ」

「そうなのか。ありがとう、マル」

「へへへ、それに鉄の剣で練習するのは危ないってプリシラが心配してたから」

「よし、練習用の剣ができるまでは魔法の練習に切り替えよう」

 良かった。兄ちゃんの役に立てたみたいだ。


「あ、今日言ったスキルのことだけど、他の人にはナイショな」

「大丈夫だよ。兄ちゃんとギーラとプリシラの3人しか僕とは話してくれないし」

「ギーラとプリシラにもナイショな」

「どうして?」

 ギーラにはこの話をしないと練習用の剣を受け取ってくれないかもしれない。


「スキルっていうのは、この世界で生き抜くための大事な手段だ。それに、村で他に持っている人はいない貴重なスキルを俺たちは持っている」

「そうなんだ」

「他の人に知られると、いいように利用してやろうとする悪い奴が出てくるかもしれない」

「ギーラもプリシラも悪い奴じゃないよ?」

「それでも、ギーラはすぐ自慢したがって、他の人にしゃべっちゃうだろ? プリシラだけに話しても、きっとプリシラは兄のギーラにだけは話す。だから二人にも話しちゃダメだ」

 なるほど。確かに、ギーラは話して回りそうだ。そして、僕が兄ちゃんには何でも話せるのと同様、プリシラもギーラには何でも話すだろう。

「分かったよ。兄ちゃん。僕たち2人の秘密だね」

 兄ちゃんは大きくうなずいた。


「そうだ。兄ちゃん、プリシラが弓の練習をしたいんだって。だから、弓を作ってあげたいんだけど、どうにかして実物を見られないかな?」

「弓? プリシラが?」

「プリシラ、将来は冒険者になりたいんだって」

「冒険者か。あんまり向いてるとは思えないけど」

「向いてないって、スキルの問題?」

「あぁ。戦闘関係のスキルはほとんど持ってないな。練習を重ねれば、ある程度は伸びるだろうけど」

「ほとんどってことは、1つくらいはある?」

「う~ん。気配に敏感なのか、感知術っていうのを習得してるよ。魔物とかの位置が何となく分かるってスキルだ。だから、レンジャーならなれる可能性も――。いや、難しいな。魔物の気配を感知しても、話せないんじゃ仲間にそれを伝えられないし」


 せっかく役に立ちそうなスキルを持っているのに活用できないなんて。プリシラは冒険者になりたがっているのに、かわいそうだ。


「あ、でも僕はプリシラが言いたいことが何となく分かることあるよ。ギーラもそんなこと言ってたし」

「意思疎通のスキルもあるからな。伝わる相手には伝わる。でも、あれって伝える相手との相性があるんだよ」

「じゃあ、僕やギーラと組んで冒険者をやる分には問題ないってこと?」

「……ギーラがプリシラと組むのはいいとして。マルは冒険者やるなら、俺と組んでくれよ」

「うん、4人で組めたらいいよね!」

 なぜか、兄ちゃんは複雑そうな顔でうなっている。


「ねぇ、僕は竜騎士と精霊術師だったら、どっちに向いてる?」


 昼間のプリシラとの会話を思い出して聞いてみた。僕の持ってるスキルが分かるなら、ひょっとしたら、どっちに向いているか分かるかもしれない。


「どっちも向いてるぞ。どうやったら竜の卵を孵化させられるかとか、精霊と契約できるかが分からないけど、意思伝達っていうスキルがあるから竜との意思疎通に困らないだろうし、水と風の属性と相性がいい」

 なるほど。ちょっと希望を持てた。


「それから、剣術の技量が成長しやすいから、そろそろ訓練を増やそうな」

「えっ!? 僕、戦ったりするの得意だと思えないんだけど。それに、白は竜騎士以外は金属製の武器を持てないんじゃ?」

「戦えないと、冒険者は無理だぞ。まして、戦闘力に難のあるプリシラをパーティに入れるなら、他のメンバーは戦闘力が高くないとな。4人で冒険したいなら、竜騎士になるのがベストだな」


 意外と僕達4人が冒険者として組むのはハードルが高かった。でも、努力するだけしてみよう。


 それから兄ちゃんは、僕の持ってるスキルについて色々と教えてくれた。兄ちゃんは良いスキルをたくさん持ってるって言ってくれたけど……。


 竜騎士にならないと良い武器を持てなくて活かしきれない剣術の天才に、乗る竜がいないと使えない騎竜術。この2つは、せっかく持ってるのに活用できないかもしれないスキルだ。

 それに、詳しい効果が分からない明鏡止水に精霊親和力強化。例えば、精霊親和力強化は、精霊さんと契約しやすくなるならすごく助かるけど、精霊術を扱いやすくなるんだったら精霊術を使えるようにならないと意味がない。


 望む未来への道のりの長さに、焦りを感じる。

 プリシラが懸命に素振りに励んだり、使ったことのない武器を試してみようとしたりする気持ちが分かった気がした。

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