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第7話 プリシラの夢

 最近の兄ちゃんとギーラは、秘密基地でも鉄の剣を使って剣の練習をしている。


 兄ちゃん達が鉄の剣をもらった日から約2年経つ。

 僕は、作りかけの木刀はそのままにして、プリシラとおままごとしたり、本を読んだり、2人で楽しく遊んでた。たまに兄ちゃん達に呼ばれて、剣術や勉強を教えてもらったりはしてるけど。

 でも、今日はプリシラが遊ぼうとしてくれない。


『どうしたの? 遊ばないの?』

『マル、木の剣は作らないの?』

『うん、もう2人には必要ないから』


 素振りをしている2人に目をやる。


『2人には木の剣が必要だと思う。作って』

『なんで? 鉄の剣を持っているのに』

『鉄の剣でケガしたら危ない。兄さん、昨日もケガしてたし、練習に使うのは木の剣の方が安全』


 なるほど。兄ちゃんが魔法で治したからもう傷はないけど、ギーラは、訓練でしょっちゅうケガをしている。

 でも、僕の作った木刀は遠くの木の枝を切り飛ばせるから、結構危険な武器かも。鉄の剣よりは安全だろうけど。そう思って兄ちゃんたちの剣を改めて見る。


 鉄の剣

 使い込まれて、切れ味と品質の落ちた鉄製の剣。

 材料:鉄、ウルフのなめし革

 付加能力:剣術習得率低下

 潜在能力:なし


 兄ちゃんの剣は、こう表示された。

 次にギーラの剣を見る。


 鉄の剣

 使い込まれて、切れ味と品質の落ちた鉄製の剣。

 材料:鉄、ウルフのなめし革

 付加能力:集中力低下

 潜在能力:なし


 ん? ひょっとして本当に練習には向いてないのかな?


『分かった。何か練習向きの剣を作れないか考えてみるよ』

『ありがとう。あと、時間のある時でいいから、私に弓を作れない?』

『弓? なんで?』

『私、将来、冒険者になりたいの』

『そうなの!?』

『うん。お兄ちゃんも冒険者になりたいんだって。ちょっと無鉄砲だから、1人だと心配でしょ? それに耳の聞こえない私でも、自由に生きていける職業って他にないと思って』

『そっか。弓は実物を見たことないから、作れるか分からないけど、がんばってみるよ』


 プリシラはギーラと比べたらおとなしい。優しくて、おままごととかお姫様が出てくる絵本とかが好きな普通の女の子。そういう印象を持っていたから、冒険者を目指しているなんて意外だった。

 そういえば、僕が兄ちゃん達に剣術を教わっているとき、プリシラもギーラが前に使ってた木剣を持って参加していた。護身術として習ってるんだとばかり思ってたけど、将来のための訓練だったのかもしれない。ただ、残念ながら、剣術はあんまり得意じゃないみたいだ。別の武器に挑戦した方がよさそうだ。


 冒険者には、白でもなれる。精霊術師や竜騎士になっても、それほど稼げるわけじゃないらしく、収入を得る手段を確保するために冒険者をやる白は結構いるらしい。

 いつか、この4人で冒険者としてやっていけたら、きっと楽しい。もし、僕が生き延びることができたら、そんな将来も悪くないな。


 ともかく、頼まれた剣と弓を作ってみよう。まともな武器を1つも持ってないプリシラの弓から作ろうか。


『最初に作りかけの木刀。次に、お兄ちゃんたちの練習用の剣。最後に私の弓ね』

『……うん』


 心の声が聞こえたのかな。最初に弓を作ろうと思ったんだけど。


『フェンさんとマルの夢は?』

『兄ちゃんは魔導士だって。僕は精霊術師かな。兄ちゃんは僕に竜騎士になって欲しいらしいけど』

『竜騎士、カッコいいと思うよ? 目指さないの?』

『うん、とりあえず死なないで済むならそれでいいし、正直、なれるならどっちでも』

『ふ~ん。どっちにもなれるとしたら、どっちになりたいの?』


 あんまり考えたことなかったな。僕は白だから、死ぬのを回避することが第一目標だし、選択肢が竜騎士、精霊術師、奴隷の三択だ。


『僕は、役に立てるならどっちでもいいんだ。竜騎士は貴重な戦力になれるけど、普段の生活で役に立つのは精霊術師みたいだし』


 竜騎士は強い魔物が出たときとか、他国との戦争とかで活躍するし、精霊術師は雨不足の時に雨を降らせたりできる。どちらかになれたら、僕としては十分だ。


『弓のことだけど、後で兄ちゃんに相談してみる。きっと作るときにお手本になるような弓を探してくれると思う』

『ありがとう』


 よし、僕にもとりあえずの目標ができた。がんばろう。


『よし、まずは作りかけの木刀を仕上げちゃうよ。プリシラ、今日は本を読んでてくれる?』


 にっこり笑って、プリシラはうなずいてくれた。


 木刀

 風の精霊が宿るハンノキで作られた木刀

 材料:ハンノキ

 付加能力:素早さ上昇

 潜在能力:風の加護(要精霊との意思疎通)


 うん、潜在能力がよく分からないけど、悪くない気がする。

 木刀ができたところで、兄ちゃんと一緒に家に帰る。

 弓のことを兄ちゃんに相談したかったけど、兄ちゃんは何か考え込んでいる。何を悩んでいるんだろう?


 ◇


 翌日、少し早く家を出て、木刀を片手に材料にちょうどいい木を探す。

 手あたり次第に木を調べて、何本か気になった木があった。今回も木に「枝をください」ってお願いしたけど、何も返事は返ってこなかった。ハンノキのときのことは、気のせいだったのかな?


 とりあえず、4本の木材を確保した。


 ヒノキの木材

 美しい木目と芳しい香りが特徴のヒノキの木材。神聖な雰囲気をまとっている。


 アスナロの木材

 まっすぐに伸びるアスナロの木材。子供や若者の健やかな成長を象徴する。


 チェスナットの木材

 加工は難しいが弾力性が強く丈夫なチェスナットの木材。知識欲を象徴する。


 イチイの木材

 光沢が美しく弾力性の強いイチイの木材。


 さて、どれで練習用の剣を作ったらいいだろうか。まずは、兄ちゃん用。兄ちゃんの顔とそれぞれの木材で作った剣を思い浮かべる。

 ……兄ちゃんはどれでも喜んでくれそうだな。剣が嬉しいっていうより、弟からのプレゼントってだけで喜んでくれそうだ。しいて言うなら、ヒノキの木刀かアスナロの木剣がいい気がした。

 次はギーラだ。……どれも喜んでくれそうにない。ギーラは鉄の剣をあんなに喜んでた。もう木剣になんて魅力を感じていない。でも、ギーラもプリシラには弱いから、プリシラから練習用にって言ってもらえば、使ってくれるかな?


 とりあえず、ヒノキの木刀とアスナロの木剣を作ろう。

 顔を上げると目の前にプリシラがいた。


『早速、材料調達してきたのね』

『うん、がんばって作るよ』


 プリシラは僕が剣を作ってる間は、素振りをすることにしたらしい。一緒に遊んでいた時には見たことのない真剣な表情。本当に冒険者になりたいんだな。


 一日、木を削っていたら、兄ちゃんが「夕飯の後で話したい」だって。なんだろう?

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