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⑦松茸の炊き込みご飯
刻むことが好きな僕の妻。
妻は、なんでもかんでも刻みたがる。
だから、たまにもったいないと感じる。
高級なものは大きいまま食べたい。
大きいことに価値があるものは、特にそのまま味わいたい。
それが食いしん坊の性なのに。
松茸を友人に貰った。
だが、そのまま焼くことは絶望的だ。
妻の目に留まってしまえば、そこで試合は終了する。
やはり刻んでいた。
包丁を片手に2本、計4本持って、黙々と刻んでいた。
松茸は刻みすぎて、跡形もなく粉々になっていた。
粉々は、食感の消滅を意味する。
期待は、ぼやけて消えかかっていた。
どうやら、松茸の炊き込みご飯にしたらしい。
いい香りがする。
出てきた炊き込みご飯は、思っていた以上に美味しそうだった。
しかし、ひとつ気になったことがある。
それは、あんなに何でも刻み続けていた妻なのに、なぜかエリンギが切られずに、丸々入っていたことだ。