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④ポテトサラダ
何気なく道を歩く。。
そこは知らない町。。
導かれるように食堂に入る。。
隅の席に女性がひとり。。
ここにはその女性だけ。。
「おすすめ定食ください」
店内を見回しながら待つ。。
出てきたものは父のものに似ていた。。
父が不慣れに作ってくれていた朝御飯に凄く似ていた。。
もうその父はいない。。
そっと口に運んでゆっくりと噛み締める。。
焼き鮭も味噌汁も、心を生き返す。。
ポテトサラダを口に含む。。
ポテトサラダは、死んだ父の作る胡椒の利いたものによく似ていた。。
父を思い出して涙が溢れた。。
奥から、店主らしき人が近づく。。
その人は、僕のことを知っているみたいだった。。
「大樹くんかい?」
「はい、そうですけど」
「君のお父さんに、このポテトサラダの作り方を教えたことがあったんだけど、お父さんは作ってくれたかい?」
「えっ、あっ、はい。何度も」
「そうかそうか」
「とても懐かしい味です」
僕の目からは、また一粒、涙が溢れた。。