黙って考え込んでいるラキアを見て
ラキアの秘密と風の世界の情報が少しずつわかってきます・・
黙って考え込んでいるラキアを見て、
アルバは勘違いをして、
「ラキア、ごめんよ。言い過ぎたよ。
きっとそのうち好きな子ができるよ。うん」
そういって慰めるのでした。
聞きながら、ラキアはうなずいて
「あ~きっと
そのうち、すごく可愛い子を好きになって、告白するかもね。
美しい詩をプレゼントしたらいいかな。
でも、僕はあとどれくらい、この夕焼けの世界にいることができるんだろうか?」
急にそんなことを言うのです。
アルバが、「え?どういうこと?
僕らといっしょにずっと
夕焼けの世界にいるんだろう?
どこかに行く必要があるの?」
「うん、実はこの前、フォーリア長老に呼ばれただろ?
あのとき、僕を預けた世界の人からの手紙を見せられたんだ。
17歳になる前には見せるようにって言われてたらしい。
僕は、後半年で17歳になるだろ。それで見せようと
思ったらしいんだ・・」
「それで?」アルバは少し不安な表情になりながら
聞くのでした。
ラキアは、少し考えた様子で、しかしはっきりと
「僕は、夕焼け人ではないんだよ」といいました。
アルバは、わかっていたよという顔で
「うん、気づいていたよ。目の色も髪の色も違うからね。
どこの世界の住人かわかったの?」と聞きました。
ラキアは空色の髪を静かにかきあげながら
空色の瞳でアルバを見つめて
「あ~、うん、風の世界の風人らしい」と
言いました。
「ふうじん?」アルバが復唱します。
「はじめて聞く世界だよ」
「僕もさ。急に手紙を見せられて、手紙の中に
実は、あなたは、風の世界の風人で
風の世界の危機を救う、詩詠人です。
ですから、17歳になったら、すぐにお戻りください。
お待ちしています。
そのときまでは、われらが風の世界を守っていきます・・だってさ。
簡単に言うとそんな内容が書かれていたんだ。帰る方法も書かれていたよ。
僕は、ここにきたときは、5歳だっただろ?
うまれた場所のことは、かすかに覚えているんだ。
たぶん両親は殺されたんだ。
うん、思い出したくなかったから忘れようとしていたけれど・・」
そこまで言うとラキアは、遠い目をして外を眺めています。
アルバは、びっくりして
「そんな。じゃあ、風の世界は混乱しているってこと?
ラキアが救世主ってことなのかい?
でも、命を狙われているかもしれないんだろ」
ラキアは、「どうなんだろう。
きっと5歳のころは狙われていたから夕焼けの世界にワープしたのかもしれないね。
本当は虹の世界の知り合いに預けるはずだったらしいけれど
結界の先が、なぜか間違ってこの夕焼けの世界だったらしい。
僕は、よく覚えていないけれど、虹の世界と同じように
平和な世界みたいだと連れてきてくれた人が言ってたよ。
幸い、フォーリア長老に出会えて、育ててもらえることになったし
アルバやルシアもいて、僕の記憶から過去の記憶が消えていたんだ。
いや、消されていたんだ。
たぶん、心配しないようにだろうね。
戻るべきときがきたら、記憶を蘇らせて戻れるように
手紙を預けていたんだ。
そう、手紙を読み出したとたんに
いろんな思い出があふれでてきて・・たまらなくなったよ
でも、アルバ、君がいてくれたおかげで、
すごく心が軽くなって助かったんだ。
近いうちに話そうとは思っていたんだけれど、なかなかね。
やっぱり君たちといっしょにずっと暮らしたいじゃないか
僕のふるさとは、夕焼けの世界なんだよ。
でも行かなくちゃいけないのは、わかっているんだ。
風の世界の危機が今でもあるのか、
間に合うかどうか、
そして僕が役立つかどうかはわからないんだけどね」
いいながら、遠くの空を眺めています。
アルバは、
「よし、僕も手伝うよ、
風の世界にいっしょに行って
ラキアを助けるよ」
と力強く言うのでした。
ラキアは
「無理だよ。風の世界は空にあるんだ。
僕には、羽があるんだよ。
幼いころ使ったことがあるだけで、
忘れていたんだけどね」




