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オヤジ2  作者: 矢島大佐
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第9章2

 小田急の陸橋を渡って座間の市街に入る頃にゃ、燃料計の針がいよいよヤバくなってきた。

 こいつはジーゼルだから、燃料ポンプが空気を吸ったら、エンジンはいきなり止まるのよ。

 「何とか保ってくれよ…」オレは必死で祈ったんだが、今度ばかりは神様もソッポを向いてたみてぇだ。

 …ついに六輪駆動は、「がるん」と唸ったきりエンジンの回転を止めやがった。

 クラッチを切れば、惰性で数十メートルは走れるが、ゾンビ野郎の姿が見え隠れしてるから、まごまごしてもいられねぇ。

 とっとと飛び降りた桐山の後を追って、オレも自分の装備をひっ掴むと、トラックのドアを蹴り開けた。

 中島メガネ猿や三上の野郎も、オレに続いて荷台から飛び降りる。

 運転する者の居ねぇ軍用トラックは、のろのろとスピードを落としながら、中央分離帯に乗り上げて、遂に息の根を止めちまった。

 オレ達は、そいつを横目で見ながら、厚木バイパスの上を走り出したのよ。

 オレと三上は、二人して足が不自由だから、ロン毛やメガネ猿からは遅れがちになっちまう。

 それでも必死こいて走ってるんだが、横を行く三上の野郎はバックパックの他に何やら荷物を担いでた。

 MP5のサブマシンガンはオレが渡した「獲物」だが、一緒に背負う『円筒形の細長い筒』は、どうやらロケット弾みてぇだぜ。

 …三上の野郎に事情を聞くと、ありがたいことに相模原の補給廠で手に入れた「ブツ」が、未使用のまんま、トラックの荷台に放り出して有ったらしい。

 M72LAWって名前の携帯型対戦車ロケット弾は、たった一発しか無ぇから、めったやたらと撃てねぇが、それでも、南の国の奴等と対等に渡り合える武器が有るってのは嬉しいモンだ。

 裏切り者の伊東の野郎に、そいつで一泡吹かせてやるまで、何が何でも追い詰めてやる…。

 バイパスの車道を、必死に逃げながら、オレは、そんなことを考えていたが、それより先に、追いかけてくる死人野郎を、どうにかしなけりゃならねぇ。

 中島メガネ猿が振り返りながら、小銃の引き金に指を掛ける…。

 そいつを見ていた桐山は、咄嗟に「銃声を響かせると、そこら中からゾンビ野郎が湧き出してくる」って怒鳴りやがった。

 辺りは座間の市街地だから、奴の言うとおり腐れゾンビの巣窟よ。騒音立てたら、逃げ場を失うのは確実だろう。

 「どうすりゃ良いんだ」って仏頂面で怒鳴り返した中島に、ロン毛の奴は「兎に角、付いて来い!」って言い捨てると、息を荒げながら走り出した。

 追いかけてくる死人野郎は、最初のうちは十匹ほどの小集団だったが、奴等の唸り声が仲間を引き付けるのか、あちこちからボロ屑を纏った腐れ野郎が合流して来やがるぜ。

 二十匹程に膨れあがったゾンビ軍団に追われながら、バイパスの車道を必死に逃げる桐山は「こっちだ」って叫びながら歩道のフェンスを乗り越えて、側道の斜面を転がり降りた。

 奴の目指す先は、バイパスの両側に広がり始めた雑木林の奥なのよ。

 市街地に突然現れた緑地帯は、『市民の森』って奴だろう。…鬱蒼とした雑木林は、かなりの広さが有るらしい。

 オレ達は、公園のパイプフェンスを乗り越えて、春の日差しに、若葉が萌え出した、広葉樹の林に走り込んだ。

 「奴等は、犬みてぇに鼻が利くから、落ち葉や雑草を擦り付けて、こっちの臭いを紛らすんだ」ロン毛野郎が、小声で呟きながら、テメェの迷彩服に土や落ち葉を叩き付け、林の奥に進んでく。

 桐山の真似をしながら、オレ達もそそくさと木々の間に身を隠したのよ。

 何匹かのゾンビ野郎が、オレ達の後を追って、林の中に入り込んだらしいが、雑木林や枯れ草の下生えで、詳しい状況は判らねぇ。

 落ち着き払った桐山の奴は「このまま林伝いに南に進めば、厚木の飛行場に辿り着く」って言ってるから、市街地を突っ切るよりは、ゾンビ野郎にお目に掛かる機会も少ねぇだろう。

 それでオレ達は、なるたけ樹木や障害物の多そうな木陰を、足音忍ばせ移動した。

 公園から流れ下る川沿いに、南に向かいながら枯れ草の下生えの中を進んでいくと、杉の木立の向こう側に、ゾンビが二匹居やがった。

 腐れ野郎は、こっちに気付いちゃいねぇらしい。

 それでも奴らの気まぐれか、オレ達の方に向かって、フラフラ歩いて来やがるのよ。

 オレ達は咄嗟に、近くの木陰に身を伏せた。

 息を殺して気配を消した俺達だったが、動物並みに鼻が利くゾンビ野郎は「何か違う」と感じたらしい。

 鼻をひくつかせながら十メートルほどに近づいてくる。

 …ボロボロのスカートと、泥で汚れたGパンのアベックゾンビ二人組が、白く濁った四つのお目々で、周りを伺っていやがるぜ。


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