第8章3
ガチャリと閉じた鉄扉に、肩で息をしながらロックを掛けた桐山は「これで、一安心だが、ゆっくりしてる暇は無ぇぜ」って呟いた。
マグライトの明かりを頼りに、再び歩き始めたロン毛に向かって、中島のアホが毒づいてやがる。
「ミサイルなんか、どうなったって構わねぇ。このクソ忌々しいゾンビの国を脱出する方が先決だろ」って叫くのよ。
…メガネ猿よぅ。お前、一回死んでみるか?。
腹黒伊東に嵌められて、死んじまった奴等の恨みを、忘れた訳じゃ無ぇだろう…。そいつにたっぷり土産を付けて、返してやらなきゃ気が済まねぇ。
それでオレは、中島のケツを蹴飛ばしてから、桐山の後に続いたのよ。
足を怪我した三上の奴も、オレに並んで歩き出したから、一人残された中島も、『置いてきぼり』は、たまらねぇと、渋々立ち上がったんだ。
電池の消耗で、弱々しくなっちまったマグライトの光の輪が、底なし沼に吸い込まるみてぇにトンネルの奥に消えて行く。
そんな中を、オレ達はトボトボと歩き出したのよ。
横田の滑走路に続く長ぇトンネルを、オレ達は用心しながら進んでいった。
後方の武器保管庫の隔壁扉を閉鎖したから、ゾンビ野郎に後ろから襲われる心配は無くなったが、行く先に腹黒伊東が仕掛けた手榴弾のトラップが有るかも知れねぇ。
だからオレ達は、一歩一歩確実に進んで行ったんだ。
ゾンビ化が進行して、言うことをきかねぇ、てめぇの右足を引き摺りながら歩き続けると、横田滑走路側のエレベーター室に辿り着いた。
螺旋の階段にマグライトを向けた三上は、C国製の自動小銃から、三十連マガジンを外して、残った弾をロン毛野郎に渡してる。
どうやら残りの小銃弾は、ワンマガジンも無ぇらしい。
5・8ミリのマガジンを受け取った桐山を先頭に、オレ達は重い足取りで、鋼鉄製の階段を上り始めた。
空になっちまったQBZ小銃を床に捨てた三上は、オレが手渡したサブマシンガンを構えながらロン毛の後に続いて行った。
嫌がる中島のアホを蹴飛ばしながら、こっちも鉄製の『ぐるぐる階段』を昇っていくと、薄っ暗い天井にハッチの扉が見えてきた。
死んじまった平岡の奴が、ゾンビ野郎に襲われた場所だから、上には間違いなく腐れ野郎が居るはずよ。
ハッチの手前で隊列を止めたオレ達は、脱出の手筈を確認した。
右足が不自由でも、何とか運転だけは出来そうなオレが、軍用トラックのエンジンを始動するまで、ロン毛とメガネ猿、それに三上の野郎が、ゾンビどもから防衛戦を展開するって寸法だ。
ゴクリと生唾を飲み込んだ桐山の奴が、かけ声と共に扉のロックレバーを力一杯押し上げる。
…死人野郎独特の、声にならねぇ唸り声と、腐った臭いが立ちこめる格納庫に、お定まりのアサルトライフルの連射音が響き渡った。
真っ暗な地下から、朝日が燦々と降り注ぐ地上の格納庫に出たモンで、オレも一瞬目が眩んじまったが、こっちも命がけだ。
先を行く、三上の奴に遅れねぇように、バックパック姿の背中を追いかけたんだ。
…そのうち正面に、見覚えのある六輪駆動トラックが見えてきた。




