第8章2
…だけどよ。頭を狙おうにも、照明灯が消えちまったトンネルじゃ、巧く狙いは付けられねぇんだ。
何匹かの死人どもを撃ち倒はしたが、奴等の動きは止まらなかった。
そのうち、二発目の手榴弾トラップに引っ掛かって、先頭のゾンビ野郎が吹き飛ばされた。
奴等の動きを予測して、床に伏せたオレ達の近くまで千切れたゾンビの破片が吹き飛んで来やがる。
素早く立ち上がったオレ達は、桐山の合図で再びトンネルの中を進んだのよ。
トラップを警戒しながらの前進だから、それほど早くも移動出来ねぇ。
それに、真っ暗闇のトンネルだから、マグライトの明かりだけじゃ、見える範囲も限られる。
死人野郎に追い付かれそうになると、小銃をぶっ放して奴等を足止めしなきゃならねぇから、こっちも忙しいぜ。
それでも何とかオレ達は、核ミサイルが保管されてた武器保管庫まで戻って行った。
ゾンビ野郎に追われたオレ達は、スチールコンテナや木箱が積み上げられた保管庫内に走り込んだのよ。
あれ以来、手榴弾のトラップも無かったみてぇで、ワイヤーを踏むことは無かったが、ゾンビ野郎の呻き声が、背中のすぐ後ろに聞こえやがる。
振り向いて、銃撃しようとしたオレ達に、桐山の野郎が怒鳴りやがった。
「武器庫の中で発砲するんじゃねぇ!」ってよ…。
何が有るんだか判らねぇ武器保管庫の中じゃ、流れ弾が導火線に火を点けるかも知れねぇだろ。
それでオレは、右手のサブマシンガンを三上の奴に放り投げると、不自由な右足の杖代わりだった白鞘の日本刀を抜き放た。
マグライトの光に浮き上がった日本刀を、カンを頼りに横一線に振り払うと、オレに飛び付こうとしていた死人野郎は、上下分断の真っ二つよ…。
更に、その後ろから来た腐れ野郎には、返す刀で斜め上からの袈裟懸けだ。
ゾンビパワーの左腕なら、一刀両断も朝飯前だぜ…。
あっという間にオレの足下には、二匹のゾンビ野郎の分断死体が転がった。
後退しながら、更に何匹かの腐れ野郎を切り刻んでいると、ワークブーツの左足に、何かが絡み付きやがった。
そいつは、上半身だけで躙り寄る、腐れ野郎の汚ねぇお手々じゃねぇか。
マグライトの光に照らされたパツキン姉ちゃんのゾンビは、無くなっちまった胃袋にオレの足の肉を納めようと、必死の形相してやがる。
不自由な右足を持ち上げたオレは、その女の後頭部を思いっきり、踏んづけてやったのよ。
ゾンビになっちまった右足だ。頭蓋骨を砕くのも訳はねぇ。
パツキン姉ちゃんの脳漿が、ザクロの実みてぇに弾け飛び、保管庫の床に綺麗な放射状の跡が広がった…。
オレがそんな風に、ソンビ野郎の相手をしている間に、三上や中島のアホは、反対側の隔壁扉に走って行った。
南側の隔壁は、トラックが通れそうな大扉は閉じられたまんまだから、人間用の小せぇ鉄のドアさえ何とかすれば、ちっとは余裕が出来るはずよ。
そのうち、先に行ったロン毛が、「早く来い!」って叫びながら鉄の扉を閉ざし始めた。
オレは、飛びかかってきたビール腹の太っちょゾンビに一太刀あびせると、暗闇の中を後退りした。
マグライトの明かりだけじゃ、周りがよく見えねぇから、まるで座頭市にでもなったみてぇだけど、こっちも必死だ。
物音や、唸り声のする方向に、思いっきり刀を振り廻したのよ。
おかげで、ゾンビ野郎に組み付かれずに、何とか人間様の鉄扉まで辿り着いたんだが、格納庫に積み上げられた木箱まで斬りつけちまって、そこら中に、訳の判らねぇ資材が転がった。
床に落ちて広がった弾薬らしき資材のおかげで一時的にでも、死人野郎の足止めができたから、オレは桐山の声がする方に飛び込んだのよ。
オレの到着を待つが早いかロン毛の野郎は、直ぐに鉄扉を閉じようとしたんだ。…そしたらよ、暗がりから現れた乱れ髪の女ゾンビが、両腕突っ張って、そのドアをこじ開けようとしやがった。
腐れ野郎の馬鹿力には、大の男も太刀打ち出来ねぇ。…ジリジリとドアが開いて行きやがる。
日本刀を構えたオレは、ロン毛兄ちゃんの背中側から、ドアをこじ開けるゾンビ女の眼窩に向けて、思い切り刀の刃を食い込ませた。
柄の辺りまで、のめり込んだ刀のおかげで、腐れ女は急にゾンビパワーを失ったから、後は桐山の右足の一蹴りで、何とか勝負が付いたのよ。




