第8章1
オレ達は、南の国の兵隊野郎に持ち逃げされた、核ミサイルを取り戻すため、腐っちまったゾンビの国で、唯一動きそうな車両の在処に向かったのよ。
…そいつは、米軍相模原の補給廠から掻っ払って、横田基地の格納庫まで乗ってきた軍用六輪トラックだ。
そこまで行くにゃ、腐れ野郎の団体さんがゾロゾロ彷徨く地上より、地下の秘密トンネルを抜けた方が近見だろ。
それでロン毛野郎を先頭にして、秘密トンネルが有る古びた倉庫に戻って行ったんだが、オレ達よりも先にお客が来てやがる。
もちろんゾンビの野郎どもよ。
男女の判別もつかねぇ三匹の腐れ野郎を、自動小銃の一連射で、どうにか撃ち倒した桐山だが、「弾が無ぇ。…弾切れだ」って舌打ちしやがった。
夜のうちに、装備を点検していたらしいが、さっきの銃撃戦に続く、マンションからの脱出劇で激しく消耗しちまったんだ。
ロン毛の装備は、地下のエレベーターを脱出する時、南の国の奴等から頂いてきた物だから、中島のアホが持ってるM16の弾じゃ使えねぇ。
三上が構えるQBZ小銃なら弾は同じだが、奴も弾薬の残りは少ねぇらしい。三十連マガジンを、桐山に渡しながら「こっちも残弾が少ねぇ。…どうする?」って聞いてやがる。
頼みの綱は、メガネ猿の小銃だけだが、能天気な野郎は、南の国の装甲トラックが開けたシャッターの大穴から、倉庫の外に身を乗り出して駐車場のゾンビ野郎をスリーポイントバーストの真っ最中よ。
「とにかく、先を急ぐしかねぇ」桐山の野郎は、そう呟くと、地下へ続くエレベーターシャフトに走り寄った。
自家発電が死んじまったのか、倉庫の中は薄っ暗いが、シャッターに開いた大穴から入り込む朝日で、まったく見えねぇって訳じゃねぇ。
エレベーターは、昨日オレ達がぶち壊しちまったから、ここから逃げ出した時のまんま、地下への中間で止まってる。
エレベーターの穴の中を覗き込むと、ミサイルを乗せてた台車だけが残されて、車体の下にはオレ達と同じ迷彩服の影が見えたのよ…。
横たわったままのランボー平岡に、片手拝みしたオレは、桐山の後から地下に通じる非常階段のハッチに近づいていった。
!!!。
…ロン毛野郎の叫び声で、慌てて引っ込めたブーツの先に、細いワイヤー線が張られてる。
桐山が静止するように合図してくれなきゃ、オレはそいつを、引っ掛けちまうところだった。
『手榴弾トラップ』って、桐山の野郎は教えてくれたが、オレ達が、ここを通ると予想した、腹黒伊東の置き土産なら洒落たモンだ…。
…そいつが武器になるなら、持って行きてぇが、ゆっくりトラップを外してる時間は無ぇだろ。
それで、オレ達は、恐る恐るワイヤーを跨いで、非常階段のハッチの中に入っていったんだ。
ゾンビ化して言うことをきかねぇ右足に、ワイヤーを引っ掛けやしねぇかと、この時ばかりはオレも神経を集中したぜ。
下っていく階段の途中にも、ワイヤーのトラップが張り巡らされているかも知れねぇから、一列になったオレ達は一歩一歩慎重に降りて行ったんだ。
困ったことに、ワイヤーのおかげで、地上部の非常ハッチさえ閉められねぇから、これじゃ地下へゾンビ野郎の進入も防げねぇ。
オレ達が、やっと地下に降りた頃、頭の上の方で鈍い爆発音が轟き渡った。
トラップに引っ掛かった死人野郎が、バラバラになったんだろうが、それを見ても、怖じ気づかねぇのがゾンビってヤツよ。
いつの間にか、オレ達が後にした非常階段の上の方から、奴等の呻き声が聞こえ始めて来やがた。
マグライトで足下を照らしていたオレは、思わず駆け出したくなっちまったよ。
一行がエレベーター室から、トンネルに続く辺りに差し掛かったとき、ロン毛野郎がまた静止の声を上げた。
丁度、胸の辺りにワイヤーケーブルが張られてて、足下だけ見てたら、うっかり引っ掛けちまう所だったぜ。
…最後尾の三上の野郎が、身を屈めて何とかワイヤーの下を潜り抜けた途端、非常階段の鋼材の影から、ゾンビ野郎の唸り声が響き渡った。
ブツブツと愚痴をこぼす中島のアホが、M16の三連射で、階段付近の第一陣を吹き飛ばしたが、それで終わりじゃねぇのが辛いところ…。
奴等、物音やら新鮮な肉の臭いに釣られて、どこまででも追いかけて来やがるぜ…。
こうなりゃ仕方がねぇ。ロン毛野郎と三上の奴が、マグライトで前方のトラップを警戒して進みながら、背中合わせのオレとメガネ猿が、後ろから来るゾンビ野郎を足止め射撃よ。




