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オヤジ2  作者: 矢島大佐
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第7章2

 …そりゃあ、片足引き摺る三上の野郎が、倉庫のドアを狙い撃ちしてくれなけりゃ、腹黒伊藤達の追撃で、こっちが先に蜂の巣になってたかも知れねぇけどな。

 右足からの出血で、下半身の力が入らねぇオレだったが、血の通って無ぇ左腕だけは別物だぜ。

 意識を失いかけながらも、ゾンビの左手を振り回して、寄ってくる腐れ野郎をブチのめしてやったんだ…。

 …死人の壁を突破したオレ達は、どこをどう走ったんだか判らねぇが、立ち並ぶ住宅の間に空き地や畑が点在する福生の郊外を、ゾンビ野郎に追われながら逃げ回ったのよ…。

 …そのうち、オレの意識が飛んじまって、…次に気が付いたのは、どこかのビルの屋上だった。

 …暗闇の中を吹き抜ける風が、吹雪みてぇに感じてよ。オレは夢ん中で、隙間風に振るえる江別の仮設住宅を思い出してた。

 飲んだくれて、玄関先で寝込んじまったオレを、揺すり起こそうとしてくれてる娘っ子の顔が、ロン毛のアゴ髭男と重なって、オレに話しかける桐山の声が聞こえてきた…。

 …どうやら腐れ野郎から、巧く逃げ切れたらしい。

 マグライトの弱々しい光の中には、心配そうな三上の顔と仏頂面の中島メガネ猿のツラも見えたのよ。

 ホッとして、起き上がろうとしたんだが、どうにも力が入らねぇ。

 「無茶するな」ってロン毛野郎は言いやがったが、無理でもしなけりゃ生きちゃ行けねぇ。

 それで、オレは今の状況を聞いたのよ。

 …オレとしたことが、二時間近くも眠り込んじまったらしい。ゾンビ野郎から逃げ回りながら、オレ達が辿り着いたのは、脱出してきた倉庫に近い五階建てマンションの屋上だった。

 オレは、中島のアホにタバコを点けて貰いながら、ロン毛の兄ちゃんに、気になることを聞いたのよ。

 あの状況を見りゃ、馬鹿なオレだって判るんだぜ。…桐山の野郎が、ただの「ディスカウントストアの店員じゃ無ぇ」って事ぐらいはよ…。

 オレの問いに、奴は自分の素性を打ち明けやがった。

 桐山は、政府の内閣直属で情報機関に所属してるらしい。

 …ZDF(Zombie Defense Force)主体で進められた、今回の核ミサイルサルベージ作戦に、『裏』があると睨んだ北政府のお偉方の命令で、オレ達を追ってゾンビの国に来たんだと…。

 相模原の補給廠で、運良くオレ達に合流できたが、横田の地下武器庫じゃ、伊東の野郎に、まんまと嵌められてこのザマよ。

 脱出してきた格納庫のエレベーターで、何人かの『南の奴等』を始末したから、奴等だって体制を立て直すのに時間は掛かるはず。

 そうは言っても、腹黒伊東の事だから、何が何でもミサイルを運び出そうとするはずよ。

 まぁ、伊東達が助けを呼ぼうにも、こっちの潜水艦や飛行機が監視してるから、援軍は来ねぇはずだ。

 だけど、向こうの奴等だって同じ領土を監視してから、そんな状況じゃ、オレ達だって誰も助けちゃくれねぇぜ。

 …それで桐山の野郎は、たった一人でもミサイルの持ち逃げだけは阻もうと、ここで見張っているんだとよ…。

 …地下のエレベーターで、オレが撃たれそうになったとき、「どこからか飛んできた銃弾は、お前の仕業か?」って聞いてみた。

 軽く頷いた桐山が、ブーツの裾から取り出したのは、掌に入るくらいの薄っ平い代物だった。

 『パームピストル』って言うらしいけど、見た目の形じゃピストルには見えねぇし、小さいモンだから、身体検査した南の国の兵隊も、見逃しちまったんだろう。

 中島のアホは、「そんなモン持ってるなら、さっさとブッ放して、逃げちまえば良かったんだ」ってぼやくが、弱小弾の単発じゃ、幾らも役には立たねぇぜ。

 そんな愚痴を聞き流し、時々双眼鏡で倉庫の方を眺めながら、ロン毛の兄ちゃんは、C国製のQBZ-95って名前の、プルバップ式自動小銃を手入れしてる。

 そのうち、屋上の手すりに力なくもたれ掛かった三上が、「オレたちゃ、どうすりゃ良いんだ」ってポツンと呟いたのよ…。

 ロン毛の話じゃ、茨城の大洗か新潟港まで自力で行けば、助かる手段も有るらしいが、それも確証は無ぇみてぇだ。

 …ここに居るのは、死に損ないのオレに、足を引き摺る三上の野郎と口だけ達者な中島だぜ。

 そんなザマだから、ミサイル強奪を阻止ために、桐山の野郎が一人で気張っていやがるのよ。

 情けねぇ。…命の恩人を助けられねぇのも悲しいじゃねぇか。

 …どうせ助からねぇんなら、この命削ってでも、何とかしてやりてぇぜ。

 それでオレは、応急処置で包帯を巻かれた右太股を探ると、止血のバンテージテープを引きはがした。


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