第6章5
平岡ゾンビの唸り声が響く辺りで、吐き出すようなC国の言葉と、軽快な自動小銃の乱射音が鳴り響いた。
三上や中島のアホは、とっくに台車の下に潜り込んだのか姿は見えねぇ。
ロン毛野郎だけは掌に何かを握ったまま、台車とエレベータの壁の間で、人民服の兵隊と取っ組み合いを演じてる。
オレは、振り向き掛けたもう一人の人民服野郎に、日本刀の刃を思いっきり叩きつけてやったんだ。
…そいつの肘の関節辺りに吸い込まれた日本刀は、野郎の腕を切断して自動小銃握ったまんまの右腕が台車の上に転がった。
鮮血を滴らせながら悲鳴を上げる、その野郎のツラをよく見たら、オレを蹴りつけやがった見張りの兵隊よ。
…あの時のお返しに右腕一本じゃ、ちっと安すぎるかも知れねぇが、人民服男は真っ青な顔して、口から泡吹きながらぶっ倒れたから、これで少しは「お灸」も効いたろうよ。
…そのうち、南の国の兵隊と肉弾戦を演じてるロン毛兄ちゃんの後方に、赤っ鼻の人民服を食い飽きたらしい平岡ゾンビが近づいて来やがった。
「…やめろ」って叫んだが、ゾンビに変身しちまった平岡に、聞く耳なんぞ有りはしねぇ。
ランボーゾンビとオレの間にゃ巡航ミサイルの尾翼や、折り畳まれた翼があって、こっちも簡単に手は出せねぇ。
…その時、オレの後方から、耳をつん裂くような自動小銃の射撃音が響き渡った。
パーマ掛かったランボー平岡の後頭部の髪の毛が吹き飛んで、奴はゆっくり倒れていった…。
…振り向いたオレの目に、口をへの字に結んだまんま、M16ライフルを構える三上の姿が映ったのよ…。
自動小銃の銃声で、エレベーターの勝敗は決まっちまった…。
ロン毛野郎と取っ組み合ってた人民服は、勝ち目がないと見て取ると、素直に両手を上げやがったが地下の奴等は諦めねぇ。
腹黒伊東は「…無駄な抵抗するな」って叫びながら、エレベーターのスイッチを逆転させやがった。
…鉄骨で組まれたシースルー構造のエレベーターだから、H鋼材の隙間から、こっちを見上げる伊東の姿が自動小銃の銃口と共に見えたっけ。
流石に、オレ達の側にゃミサイルが有るから、いきなり発砲は出来ねぇらしいが、奴等は物陰に隠れて臨戦態勢を敷きやがった。
どうしたモンかと、オレは桐山の野郎を見たんだが、すばしこいロン毛野郎は、ホールドアップした南の国の兵隊をブン殴って気絶させると、そいつが背負ってた自動小銃を取り上げたのよ。
…野郎の構えた小銃から甲高い銃声が響き渡って、銃弾が命中したエレベータの操作盤に火花が噴き上がるのが見えたぜ。
それで、コントローラーを破壊されたエレベーターは、ガクンと音を立てて停止したのよ。
地上の床までは五、六メーター。
地下へも丁度同じぐらいの、中間点で止まっちまったエレベーターの上で、「逃げろ」って言う桐山の声が響き渡った。
…そいつを聞いた、中島メガネ猿は、自分のバックパックを肩に担ぐと、M16を片手にエレベーターの梁や柱に足を掛けながら、とっとと鉄骨の壁を昇り始めやがった。
中島を狙って地下の方から何発かの小銃弾が発射されたが、H鋼材に当たって跳弾になった弾丸は、鋭い金属音立てながら思いもしねぇ方向に弾痕を残すだけよ…。
それでも、まぐれ当たりが有るかも知れねぇから、桐山の野郎は、奪ったC国製の自動小銃を下に向かってぶっ放してる。
桐山は、威嚇射撃しながら、「…オヤジさん!。…そこの怪我人と一緒に、先に昇ってくれ」って怒鳴りやがった。
桐山の声に頷いたオレは、てめぇの荷物らしいバックパックをひっ掴むと、日本刀とMPってサブマシンガンを抱えて三上の側に行ったのよ。
…三上の野郎は、台車の下に倒れた平岡ゾンビの脇で、ぼんやりと唇を噛み締めてやがった。
未練がましく念仏唱えてちゃ、ランボーが作ってくれた折角のチャンスも無駄になる。
オレは、台車の上に落ちてたC国製らしい妙な形の自動小銃を、三上の奴に押し付けると「行くぜ」って呟いた。
…流石に、三上の野郎も軍人よ。
行きがけの駄賃に、虫の息で引っ繰り返ってる片腕の人民服から、バックパックや弾薬を回収するのは忘れねぇ。
それでオレは、怪我して不自由な足をぎこちなく動かす三上の奴をカバーしながら、鉄骨の壁を昇って行ったのよ。
…H鋼材の障害を擦り抜けた至近弾が、オレ達の側を摩擦音立てながら通過するたび、縮み上がったキンタ○から、小便が漏れそうになっちまう。




