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オヤジ2  作者: 矢島大佐
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第6章2

 そんなオレ達を見て、見張り野郎が、C国の言葉で何か鋭く叫びやがった。

 言葉のニュアンスから、多分「黙ってろ」って言ったんだろう。

 それで、オレ達は暫く大人しくしてた。

 そのうち右隣に蹲ったランボー平岡が、オレだけに聞こえるように、こっちの耳元で呟き始めたのよ。

 奴は、「自分は噛まれてて、もう助からねぇから、奴等の隙を見て自分を殺せ」って言うじゃねぇか。

 「…自分がゾンビになって蘇れば、伊東や南の国の奴等は、嫌でもそっちに注意が向くから、その隙に巧く脱出しろ」ってことらしい…。

 「ゾンビに変身したら、誰彼の見境無く噛み付くだろうから、とっとと逃げろよ」って薄笑いしながら呟いたっけ。

 平岡…。おめぇはホントに『(おとこ)』だな。

 …奴は、反対側の三上の野郎にも、同じような話を始めたらしい。

 三上が大きく首を振るのが見えたが、何を話してるのかまでは聞こえねぇ。

 そのうちC国の人民服野郎が、ランボーのヒソヒソ話に気が付いちまった。

 怒鳴り声を発しながら立ち上がった人民服男のブーツの先が、ランボーの下腹部に食い込んで、くの字になったランボーは低い呻き声を上げ始めた。

 人民服は、ランボーだけじゃ気が済まなかったらしい。

 …胃袋が千切れるほどの衝撃で、胃液を吐きながらコンクリートの床にぶっ倒れたオレの脇で、中島のアホが悲鳴を上げてやがる。

 …荒い息を上げながら、のたうち回るオレの周りじゃ、三上や桐山の呻き声が響いてた。

 …そんな呻き声の中から、「…三上の奴を…頼む」て言う、平岡の押し潰した声だけ、やけにはっきり聞き取れたっけ…。

 南の国から来た人民服野郎に、したたか撲ちのめされたオレは、地下格納庫の冷たい床の上に、黙って横たわってたのよ。

 …暫くすると腹黒伊東と一緒に、人民服着たキツネ目の指揮官が靴音響かせ現れた。

 そのうちケツを蹴飛ばされた中島の、犬っコロみてぇな悲鳴で、オレ達みんな叩き起こされたのよ。

 伊東の野郎は、「仕事の時間だ」ってほざきやがる…。

 てめぇの顔など見たくもねぇが、ベレッタ9ミリを向けられてちゃ、知らん顔もしてられねぇ。

 野郎は「ミサイルの乗った台車を、奥のエレベーターまで押して行け」って命令しやがるぜ。

 人民服のキツネ目が、何を言ってるか判らねぇC国の言葉で怒鳴ってる。

 どうやら資材運搬用のフォークリフトは、錆ついちまって動かねぇから、オレ達に肉体労働させようとしてるらしいのよ。

 作業のために、手首のロープだけは外されたが、自動小銃の銃口が、こっちを睨んでいやがるから、やたらなことは出来なかった。

 仕方なしにオレ達は言われたとおりに、ミサイルの台車を押し始めた。

 全長六メートルほどのミサイルは、翼を折り畳んだ飛行機みてぇな形だけど、この中にゃ一つの街を吹き飛ばすほどの中性子爆弾ってのが入ってるから恐ろしいじゃねぇか。

 人民服野郎が指示する方向に台車を押していくと、自家発電の動力で前方の隔壁扉が開かれて、電灯の灯ったトンネルが遙か向こうに続いてた。

 オレ達が苦労して進んで来た真っ暗闇のトンネルと、反対方向に続くコンクリート造りの通路の中は、昼間みてぇな明るさよ。

 台車のタイヤが軋む音が、トンネルの壁に反響して、女の悲鳴みてぇに聞こえやがる。

 オレは、少しでも時間稼ぎをしようと、台車を押す力を加減しながらトンネルの中を押して行った。

 尤も、二トン近い重量の台車を押してるのは、足を引き擦る三上の野郎に、腕を噛まれたランボー平岡、口だけ達者な中島メガネ猿と、頼りねぇのが揃ってる。

 …まともなのは、オレとロン毛の兄ちゃんだけだから、急げったって無理な話よ。

 だからオレは、力任せに押す振りをしながら、周りの状況や人民服野郎の動きを目で追ってたのよ。


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