第6章1
米軍横田基地の格納庫から続く巨大な地下トンネルを、オレ達はマグライトの明かりだけを頼りに進んで行ったのよ。
用心しぃしぃ歩いたんだが、暫くするとロン毛の兄ちゃんが、「距離的には、もう基地の外に出ちまってるぜ」って言い出した。
南北の滑走路に沿って航空機の格納庫から、北の方に進んで来たんだが、地図上じゃ基地の敷地を通り過ぎて民有地に入っちまってるらしいのよ。
指揮官気取りの伊東の話じゃ、上はアメちゃん基地のサポートをやってるIHIの工場だとさ…。
まったく、アメリカ野郎の施設ってのは、ビックリすることばっかりだぜ…。
それでもどうやらオレ達は、最後の隔壁扉に突き当たったらしい。
スミスの野郎が、合い鍵か何かで人間様の鉄扉を開け始めた。
ここから先は、ゾンビ野郎が居たっておかしくねぇだろ…。
オレは、右手のサブマシンガンを握りしめると、口ん中の唾をゴクリと飲み込んだ。
鉄扉が軋んだ音立てて開かれたが、腐れ野郎の呻き声は聞こえねぇ。
ランボー平岡が、先頭に立ってマグライトを照らしたが、何の物音もしねぇのよ。
どうやら大丈夫と見た腹黒伊東が、先を急ぐように隔壁扉の向こう側に消えて行った。
それでオレ達も、後に続いて鉄扉を潜ったのよ。
………!。
畜生…。扉の向こうは地獄だぜ。
ゾンビ野郎よりもタチの悪い、南の国の兵隊どもの待ち伏せよ…。
物陰から五、六人の人民服野郎が、自動小銃を構えながら現れやがったぜ…。
そんな奴等のマグライトに照らされて、目潰し食らっている隙に、オレ達全員捕まっちまったって訳さ。
その上、始末の悪いことに、腹黒伊東はたった一人で、向こうの指揮官らしい三白眼の人民服野郎と、何やらコソコソ話し合ってやがるのよ。
「…ハメられた」って気付いたって、今さらもう遅いだろうぜ。
武器を取り上げられたオレ達に、伊東の野郎は、あざ笑うようにこう言いやがった。
「護衛ご苦労」ってよ。
ここまでスミスと二人じゃ来られなかったが、これから先、自分達の亡命と引き替えに、ミサイル持って南の国へ逃げるつもりらしいのよ。
自動小銃構えた人民服の奴等がいなけりゃ、殴り掛かってやったんだが、五丁の銃口に睨まれてたら、それも出来ねぇだろ。
平岡の野郎は、食い付きそうな眼で、伊東の奴を睨んでやがる。
そんな目つきが気に食わなかったのか、腹黒伊東はM16ライフルの台座で、ランボーの横っ面を張り倒しやがったのよ…。
ロープで後ろ手に縛り上げられたオレ達は、蹴飛ばされながら兵器格納庫の片隅に追いやられた。
見張りの一人がオレ達の側に残ると、後の奴等は伊東やスミスと一緒に、コンテナの向こう側で何やらゴソゴソやってやがる。
…中島のアホが罵るようにブツブツ文句を言ってたが、誰も答える奴は居ねぇ。
そのうちメガネ猿も、目つきの鋭い見張り野郎に睨まれて、下向きながら黙っちまった。
どうやら見張りはC国系の野郎で、日本語が判らねぇみてぇじゃねぇか。
それでオレは小声で周りの奴等に、どうしたモンかと、話しかけたのよ。
…けど、誰も良い考えなんかは浮かばねぇ。
武器も無く自由も効かねぇんじゃ、どうしようもねぇが、とにかく伊東や南の国の奴等に、一泡噴かせてやらなきゃ気が済まねぇ。
…無ぇ知恵絞って暫く考えてると、遠くの方でエンジンが回る音が聞こえて来て、突然、天井に設置された電灯が灯りやがった。
ロングヘアーに、アゴ髭顔の桐山の野郎が、「自家発電装置は、動いたみたいですね」って呟いた。
どうやら南の国の奴等、オレ達より先に乗り込んで、そこらの装置を修理したみてぇだな。
煌々と灯ったライトの下で地下格納庫を見回すと、スチールコンテナや積み上げられた木製の箱の向こう側に、小型の飛行機みてぇなモンが見えたのよ。
「淳子」だか「巡航」だか知らねぇが、どうやらあれが、その「ミサイル」って奴らしい。
伊東の奴は、「日本人民国」の指揮官らしいキツネ目野郎と二人して、ミサイルの側で、何か話し合ってやがるが、ひそひそ声でここまで聞こえちゃ来ねぇんだ。
そのうちスミスってアメちゃんが、何やら重そうなケースを手に下げて人民服姿の兵隊と一緒に現れた。
…体を捻って覗き込むようにミサイルの方を見てた桐山の奴が、「あれはミサイルの起爆装置だな」ってぽつりと言った。
そいつが無ぇと、積んでる原爆を爆破させることが出来ねぇらしいのよ。




