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オヤジ2  作者: 矢島大佐
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第5章4

 三上が平岡をサポートするように、後ろからハッチを押さえてやってたが、床に付けられた扉だから閉める時にゃ、どうしたって反対側に死角が出来ちまう。

 …もう少しでハッチが閉まるって時、狭いトンネル状の階段の中に、吐き出すような罵声と鋭い銃声が響き渡った。

 …畜生め。…どうやら誰かが噛まれたらしい。

 腹黒伊東が、「状況を報告しろ」って怒鳴ったが、密閉された空間で、お互い大声出し合ってるから何が何だか判らねぇ。

 オレは焦って、階段の先をマグライトで照らし出しながら、後ろのロン毛野郎に詳しい状況を聞いたのよ。

 …奴は「『マシンガンのおっさん』がやられた」って、呟くように言いやがった。

 どうやら平岡が、ゾンビの毒牙に掛かっちまったみてぇだ…。

 伊東は、地上へ続くハッチの状況をしきりに気にして、中島メガネ猿に聞いてやがる。

 …三上と中島が二人して、内側からドアをロックしたみてぇだから、腐れゾンビの進入は防げが、その代償がランボーの「命」と引き替えじゃ、どうしたって割に合わねぇ。

 平岡の奴は、やり場の無ぇ怒りに駆られて怒鳴り声を上げてやがる。…だけど、どんなに怒鳴ったところで、一度噛まれちまったら、助からねぇのはみんな知ってる。

 …とにかく、こんな狭い階段じゃ、奴の傷の手当てだって出来やしねぇ。

 オレは、薄暗い階段を下まで降りちまって、もう少し広いところを確保しようと先を急いだ。

 螺旋状に続く階段を、地下三階分ぐらい降りたところで、空洞の広い空間に辿り着いた。

 エレベーターシャフトから続く、横穴のトンネルが北東の方向に作られてたが、マグライトの明かりだけじゃ先の方は真っ暗闇よ。

 オレ達はそこで、平岡の傷の手当てのために一時小休止した。

 ロン毛野郎が、空母のエレベーターユニットみてぇな、横田の地下施設を目の当たりにして驚いてやがる。

 桐山の話じゃ、基地の弾薬類は、さっき走ってきた滑走路のど真ん中。「土塁の壁に囲まれた、半地下式の頑丈な弾薬庫に収められてる」って言うじゃねぇか。

 それで、オレは伊東の野郎に、「事情を説明しろ」って詰め寄った。

 …何でも、大っぴらに日本の持ち込めねぇ兵器のために、暫く前に横田の地下に、秘密格納庫が作られたらしい。

 …苦虫噛み潰したような伊東の話じゃ、持ち出す物はオレの思った通りの「核爆弾」らしい。…それも「巡航ミサイル」って奴だとさ。

 ロン毛の兄ちゃんが、「空中発射のACMだろ」って言いやがったが、学の無ぇオレにはサッパリだ。

 そいつは、全長約六メートルの、飛行機みてぇなミサイルで、攻撃目標から千キロ以上も離れた場所で発射されると、自分で地形を判断しながら目標目指して飛んで行くんだと。

 …「そんな物のために、俺たちゃ死ななきゃならねぇのか!」って、腕に包帯を巻かれながら、平岡の野郎が怒鳴ってる。

 腹黒伊東の話じゃ、南の日本人民国の奴等が、そいつを掻っ払って北海道にぶち込む計画を立てたらしい。

 …幾らオレ達が憎くったって、殺すことは無ぇだろうし、こっちの国を乗っ取ろうにも、核の灰で汚染されちゃどうしょうもねぇ。

 そしたら伊東の野郎が言いやがった。「…弾頭は、出力二キロトンの中性子爆弾だから、爆発しても汚染物質の拡散は少ないだろう」ってよぅ。

 九州を占領したC国の奴等、あのゾンビ騒動で、テメェの国のミサイルを持ち出せなかったみてぇで、アメちゃんが横田に忘れて行った原爆使って俺達を追っ払おうって魂胆よ。

 それで、対抗上オレ達が先に、持って帰らなきゃならなくなったって訳だ。

 …おかげで、犠牲者が五人も出ちまって、頼りのランボー平岡も、いつまで保つか判らねぇ。まったく、馬鹿らしいったら有りゃしねぇぜ…。

 一息ついたオレ達は、伊東の合図で地下通路のトンネルの中を進み始めた。

 伊東の野郎は、噛まれた平岡が「ゾンビに変身するかも知れねぇ」って、警戒してるから、当のランボーを、先頭になるように隊列組ませたのよ。

 奴の次がオレなんだが、腹黒伊東は「…平岡がゾンビに成りかけたら、構わず撃ち殺せ」って、小声でオレに言いやがった。

 …奴の言うことは、尤もなんだが、何とも寂しい話だぜ。

 先を行く平岡の背中が、急に遠くに見えやがった…。

 …腕を噛まれたランボーを先頭に、オレ達はコンクリートのトンネルの中を進んで行ったのよ。

 急に無口になった平岡は、呻き声上げながらも一歩一歩進んでく。


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