第5章3
オレはトラックを、ジャンボジェットがそっくり入っちまうほど巨大な格納庫に向けたのよ。
そこから飛び出してきたゾンビ野郎を、軍用トラックで轢き潰しながら半開きの扉に突っ込むと、まっ正面に銀色の戦闘機が置いて有りやがる。
…尖った機首に危なくぶつかる所だったが、急ブレーキ踏んで主翼の先端を掠めながらスピード落としていったのよ。
そんなトラックの音を聞き付けてか、五、六匹のゾンビ野郎が、格納庫の奥から現れた。
そいつ等は、平岡達が振り回すミニミマシンガンのフルオート射撃で、あっという間にコンクリートの床に転がった。
そのうち「…全員、降車だ!」って言う伊東の野郎の叫び声が聞こえてきた。
…どうするつもりだか知らねぇが、だだっ広い格納庫にゃ掻っ払う物らしいモンは見当たらねぇぜ。
だけど奴は、とっとと先に飛び降りちまったから、オレも軍用トラックのエンジンを切ってから、日本刀とバックパックをひっ掴んで運転席を後にしたのよ。
そうこうしてるうちに、大扉の外から死人どもの呻き声が響いてきた。
開いた格納庫の扉から、ゾロゾロと俺達を追い掛けてきたゾンビの奴等が飛び込んで来てやがったのよ。
腐れ野郎に小銃弾を撃ち込む平岡達を最後尾に、スミス先生の指示でオレ達全員が格納庫の奥に移動した。
格納庫の中は薄っ暗かったが、天井の明かり取り窓から差し込む光で暗闇って程じゃねぇ。
オレ達は、奥に移動しながら、そこらにぶっ倒れてる死に損ないのゾンビ野郎の頭を蹴っ飛ばして、どんどん進んでいたのよ。
何が入っているんだか判らねぇ、コンテナの陰を廻っていくと、出会い頭に作業員ゾンビが一匹現れやがった。
…リボルバー構えた桐山の奴が、すかさず死人の額を撃ち抜いてたが、慌てて飛び退いたスミス先生に「good Job!」って言われて親指立ててやがる。
そんな、アメちゃんの後を付いて行くと、黄色と黒のシマシマ模様が床にペイントされた一角に辿り着いたのよ。
十メートル四方程の床を顎で差しながら腹黒伊東が、「地下格納庫のエレベーターシャフトだ」って言いやがる。
…けど、エレベーターの操作盤も有りゃしねぇし、第一、電気が無くちゃ動かねぇだろ。
そしたら、スミスの野郎が床の片隅で、何やらゴソゴソとやり出したのよ。
どうやら、地下の格納庫に続く非常階段のハッチが有るらしい。
…ランボー平岡がぶっ放すミニミマシンガンの銃弾を受けて、コンテナの周りに死体の山が出来はじめたころ、ハッチ状の床扉が開きやがった。
腹黒伊東が片手に持ったマグライトで、漆黒の穴を照らしてやがる。
何が出てくるか判らねぇから、自分じゃ先に降りたくねぇ伊東の野郎は、足を引き摺る三上の奴に「先に行け」って命令した。
そんな腹黒野郎に、むかっ腹が立っちまたオレは、三上の野郎を押し退けると自分が先頭に立ったのよ。
それでオレは、白鞘の日本刀をバックパックと背中の間に袈裟懸けに背負って、落ちねぇように固定すると、腹黒伊東の手からマグライトを引ったくった。
横田の基地から掻っ払ってきた「MP5」サブマシンガンを右手に、ゾンビの左手にライトを持ったオレは狭い階段を一歩踏み出した。
…そしたらよ。ロン毛の兄ちゃんが、オレに向かって、言いやがる。
「おっさん!。…安全装置が掛かったままだぜ」ってよ。
それで、オレはサブマシンガンの側面を見たのよ。
こいつは良くできた銃で、オレみてぇな馬鹿でも、どうすりゃ良いのかすぐに判った。
オレは、引き金の上のセレクターレバーを、『赤い弾丸』三連マークのスリーポイントバーストに合わせると、桐山の野郎に「付いて来い」って合図した。
マグライトが照らす非常階段の穴は、底なしの沼みてぇに口を開けてやがるから、MP5を腰に構えたオレは「煮るなり、焼くなり、勝手にしろ」って喚きたくなった。
…焼けクソになりながら、一歩一歩下っていくと、ライトに照らし出された、エレベーターシャフトの構造体が、コンクリートの壁に影を作って幽霊みてぇに揺れやがる。
…お化けなんかは怖くは無ぇが、影の向こうからゾンビ野郎が飛びだして来るかも知れねぇだろ。
マシンガンのグリップ握った右の手が、じっとり汗ばんで来るのが判ったぜ。
伊東やスミス先生に続いて、中島のアホやランボー平岡もミニミを乱射しながら非常階段を下り出した。
平岡は、伊東の指示で非常階段のハッチを閉め始めたが、ゾンビ相手にマシンガンを連射しながらだから、なかなか巧くいかねぇのよ。




