第5章2
将校らしい制服ゾンビに、オリーブグリーンの作業員ゾンビ、迷彩服の兵隊ゾンビに、パツキンの姉ちゃんゾンビまで、ゾロゾロ集まって来やがった。
オレは構わずアクセルを踏み付けて、V8ジーゼルの軍用トラックで、奴等を轢き潰しながら、基地のメインストリートを進んだぜ。
基地の状況に詳しいスミスが、後部の荷台から無線で経路を指示してくれてるが、英語の判らねぇオレにはサッパリだった。
腹黒伊東の通訳で、何とかそれらしい方向に進んだら、広々とした滑走路に出ちまった。
滑走路の真ん中に、主翼の折れた大型の輸送機が、黒こげ姿でひっくり返ってるし、遙か遠くに見える格納庫の前には、野晒しの戦闘機の薄汚れた姿が見えたっけ。
そんな建物奥から、ゴミ粒みてぇなゾンビ野郎が、何匹も現れて来やがったのよ。
ワケの判らねぇらしいロン毛の兄ちゃんは、「飛行機で脱出しようったって無理だろ」って呟きやがった。
オレ達の目指す先は核兵器の保管庫だが、どこも彼処もゾンビだらけらしいから、ブツを簡単に掻っ払らって来ることは出来ねぇぜ。
それでオレは、滑走路のエスケープゾーンになってる芝生の上を、六輪駆動車で突っ走りながら手持ちの獲物を確認した。
さっき渡された9ミリの機関銃が一丁に、マガジンポーチに入った予備の弾倉が六つ。
相模原の補給廠で撃ち尽くしたベレッタ拳銃は、こっちへの移動中に予備マガジンに替えて、腰のホルスターに納めてある。愛用の日本刀は、運転席のダッシュボードの上で、トラックの振動に揺られてる。
ついでに左手も確認したが、流石にゾンビ腕よ。折れた指はくっ付き始めて、ジャンケンぐらいは出来そうだぜ。
…そんなオレの仕草を見て、桐山の野郎は目的地が近いことを悟ったんだろう。ちゃっかりてめぇの装備を点検してる。
奴は「手伝ってやるから、分け前を寄こせ」って言いやがったが、世の中そんなに甘くはねぇ。
「…分け前より、死人の国を脱出する方が先決だろ」そう言いながら、だだっ広い滑走路のアスファルトを横切ったオレは、スミス先生が指示する方向にハンドルを向けた。
行く先はどうやら、北の格納庫の一角らしいが、死人の奴等が群れ為して集まってやがる。
腐れ野郎が、五十メートルほどに迫ったときに、荷台の奴等が発砲を開始した。
相模原の補給廠から頂いて来たらしいグレーネードランチャーの一斉射撃で、十匹ほどのゾンビ野郎がバラバラになりながら宙を舞う。
更に、次の射撃で、コンクリートの滑走路に、死人の破片が散らばったが、そんなことぐらいじゃ、簡単にくたばらねぇのがゾンビって野郎よ。
千切れた手足や、内臓を引き摺りながら、呻き声上げて寄ってくる。
…首筋の毛が、逆立って来やがったが、逃げる訳にはいかねぇぜ。
オレは、路面を這い攣り廻る腐れ野郎に、軍用トラックを向けたのよ。
荷台の平岡達が、向かってくるゾンビ野郎に、四十ミリグレーネードを撃ち込んでるから、トラックの進む先は確保されてる。
構わず腐れ野郎を轢き潰しながら、開いた花道にトラックを突っ込ませた。
五トンのトラックを支える太いブロックパターンタイヤは、向かってくるゾンビの腹を押し潰し、ゴム風船みてぇにパンクさせるにゃ丁度良い。
そのうちグレーネードランチャーから、自動小銃に持ち替えた中島メガネ猿やランボー平岡が、五・五六ミリを乱射する。
タマがたっぷり手に入ったから、奴等、フルオート射撃の大盤振舞いで、小気味良い発射音を響かせてやがるぜ。
運転席じゃ、ドア側のロン毛野郎も拳銃片手に応戦を始めたぜ。
狭い車内じゃ自動小銃は振り回せねぇから、桐山の野郎は、何処かから拾ってきたリボルバーを使ってる。
野郎は慣れた手つきで、ひょいひょいと弾込めしてる。奴が働いてたドラッグストアじゃ、よっぽど強盗が多かったんだろう。
…トラックが進む前方に、スミスが指示した格納庫が見えてきた。
どでかい扉の格納庫は、扉が半開きだったから、車両で突っ込むにゃ十分だか、そんな扉の内側から何匹かの腐れ野郎が現れて、オレ達目掛けて寄ってくる。
目の前のゾンビ野郎をやっつけるのは、それほど難しい事じゃ無ぇが、ブツを積み込む間に奴等に囲まれちゃ、簡単に脱出することはできねぇだろ。
…そう思ってたら、伊東の野郎が「構わず突っ込め!」って叫びやがった。
こうなりゃ、焼けクソだ…。どこまでだって行ってやるぜ。




