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オヤジ2  作者: 矢島大佐
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第4章6

 散弾銃構えた三上は、助手席側から其奴を狙おうとしたが、フロントガラスが邪魔で引き金を引けやしねぇ。

 …片眼のゾンビ野郎が、口から泡吹いてドアの外に来やがった。

 ハンドルを左右に切って奴を振り落とそうとしたって、馬鹿力のゾンビ野郎は簡単に落ちやしねぇだろ。

 …そのうち、腐れ野郎のヘッドバット三連発で、サイドウインドウが吹き飛んで、唸り声を上げた片眼ゾンビが、車内に首を突っ込みやがる。

 …焦った三上は狭い室内で散弾銃を構えたが、運転席のオレが邪魔で撃つのを躊躇ってる。

 だからオレは、右手でハンドルを握ったまんま、左手のゾンビ腕を振り回して、腐れ野郎にストレートパンチをお見舞いしたのよ。

 軍手を填めた左の拳が、奴の鼻っ柱を直撃して、グシャって良い音が響いた。

 オレは、手首の辺りまで、のめり込んだ左の拳を突き上げて、ついでにゾンビの脳みそを抉ってやったんだが、何だか指の感覚がおかしいのよ。

 腐れ野郎の鼻骨を砕いたときに、こっちの指の骨も折れたみてぇだ。

 ゾンビになっちまった手だから、ちっとも痛くはねぇが、助手席の三上の野郎は、目ン玉剥いて口をポカンと開けてやがる。

 オレは、動きの止まった腐れ野郎を振り落とすと、其奴の肉片を払いながら、「秘密だぜ」って言ったのよ。

 …どんなに親しい奴にだって、『てめぇの左手がゾンビ』だって言えねぇよな。

 それでオレは、機関銃の乱射音がする方へ、五トントラックを進めたんだ。

 中島メガネ猿とランボー平岡が、細めに開けた扉の中から五・五六ミリを乱射してる倉庫の前にゃ、数十匹のゾンビ野郎が群がってる。

 火器は有っても多勢に無勢だから、状況はどうにも悪そうよ。

 トラックが近づいていくと、何匹かの死人野郎がこっちに向かって来やがった。

 非戦闘の車両だが、ウインチ付きの巨大なバンパーと、六輪駆動のぶっ太いタイヤは伊達じゃねぇ。

 五、六匹のゾンビ野郎を引っ掛けながら、ブロックパターンのタイヤの跡を体中に付けてやった。

 それで倉庫の前を行きすぎちまったから、ハンドルをぶん回してトラックをUターンさせたんだが、流石に全長が七メートル以上有るから簡単に旋回させられねぇ。

 パワーステアのハンドルを、目一杯切っても道路をはみ出しちまって、危うく倉庫の側面に激突するところよ。

 建物のコンクリートの壁に、新しい横のラインを刻みながら、5トントラックが身震いした。

 オレは何とか、六輪駆動車の前輪を、中島達が隠れている倉庫の方に向けたのよ。

 新しい獲物と見たゾンビ野郎の団体さんが、トラック目掛けて突進してで来やがった。オレはそいつ等を鋼鉄のバンパーで、バラバラと薙ぎ倒しながら進んだぜ。

 倉庫の手前で、サイドブレーキを引いたオレは、後輪を滑らせながら、何匹かの腐れ野郎を押し潰してやったっけ。

 三上の奴は、無線で中の連中に呼びかけながら、散弾銃を連射してたが、停車したトラックに群がる死人は半端じゃねぇ。

 オレもベレッタの九ミリ拳銃を取り出して、運転席目掛けて遣ってくるゾンビ野郎に狙いを着けた。

 …けど、殺到するゾンビ共を目の前に、焦ったオレは引き金をガク引きしちまって、15発をあっという間に撃ち尽くした。

 …弾切れじゃ仕方がねぇから、ゾンビの左手を振り回して、近づく死人どもに鉄拳を、お見舞いしてやった。

 おかげでせっかく学者先生に、くっ付けて貰った小指は、薬指、中指共々折れて曲がっちまう始末よ。

 それでも倉庫の奴等は、こっちがゾンビの相手をしてる間に、何とかトラックの荷台に乗り移ったみてぇだ。

 …小銃の乱射音が、運転席のすぐ後ろから聞こえるぜ。

 金切り声の伊東の野郎が荷台から、「行け。行け」って叫んでる。

 それを聞いたオレは、蹴っ飛ばすようにアクセルを踏んだのよ。

 ゾンビ野郎を跳ね飛ばしならが、武器保管庫を後にしたオレ達は、補給廠のメインストリートを猛スピードで走り抜けた。

 …奴等の攻撃から何とか逃げ切って、オレも少しはホッとしたんだ。

 …そしたらよ、道路沿いの食料倉庫らしい建物から、新顔のゾンビ野郎が一匹、飛び出して来やがった。

 其奴は、馴れ馴れしくトラックに向かって手を振りながら、走り寄って来るのよ…。

 死人にしちゃ、おかしいじゃねぇか?。

 最初は幼稚園バスで、先に行っちまった、城戸崎の野郎かとも思ったんだが、奴ほど背は高くねぇ。

 重そうなリュックに、自動小銃担ぐ其奴の姿は、どう見たって腐れ野郎にゃ見えなかった。

 必死に手を振る男の前で、急ブレーキ掛けたオレは、「どこのボケだ!」って怒鳴ってやったのよ。

 アゴ髭生やした童顔のロン毛男が、「ゾンビじゃねぇから、乗せてくれ」って大声上げてやがる。

 トラックの後方からは、死人野郎が追いかけて来てたから、伊東の奴は「構わず置いて行け」って叫んでたが、オレは助手席の三上に合図して、ドアを開けさせたのよ。

 どんな奴だって、生きてる野郎は置いちゃ行けねぇからな…。


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