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オヤジ2  作者: 矢島大佐
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第4章5

 左ハンドルの運転席から、クリップボードに挟まれた整備指示書が見つかったんで、英語が読める伊東の奴に通訳して貰ったぜ。

 …どうやらこのトラックは、デフのベアリングが逝かれちまって、修理に来てたらしい。

 伊東は、「『repair ended』ってサインしてあるから、修理は終わってるはずだ」って言ったのよ。

 それでオレは、左ハンドルの運転席に乗り込んでトラックの様子を見たんだが、軍用車なんか運転したこと無ぇから、どれがメインキーだか判らねぇ。

 アメリカ野郎のスミスがメインスイッチとスターターのボタンを、カタコトの日本語で教えてくれたから、とりあえずスイッチを入れてみた。

 …やっぱりこいつもバッテリーが死んじまってる。

 運んできたブースターケーブルを取り出すと、伊東の奴が「脱出する前に、何人かで武器弾薬の調達に行く」って言い出した。

 アメちゃんの話じゃ、ここから二百メートルほど東の建物が、武器弾薬の保管庫らしい。

 腹黒伊東に、スミス先生、中島メガネ猿とランボー平岡が四人して、使えそうな武器の調達に、こそこそと出掛けて行ったから、オレと三上がトラック修理に残ったのよ。

 修理って言ったって、バッテリーを繋いで通電状況を見るだけで、奴等が帰って来るまでエンジンは掛けられねぇ。

 オレは、レミントンの散弾銃を三上に預けると、車体脇のバッテリーを確認した。

 屈みながら作業するオレの背中で、三上の野郎は「キドさんが食われちまったのは、オレの所為だ…」って呟きやがった。

 オレは、「ロクな事、考えてねぇで、しっかり見張ってろ」って唸ると、置いてあった工具を使って車体のバッテリーを外したのよ。

 日野のトラック販売店から持ってきた二十四ボルトのバッテリーは、車体に付いてた元のバッテリーとは容量は合わなかったが、並列で繋げればセルモーターぐらい回せるだろう。

 新しいバッテリーに積み替えてから、運転席のメインスイッチを入れて、バッテリーの状況を確認すると、ワーニングランプが輝くように点灯した。

 どうやら、ここまでは「OK」みてぇだ。

 弾薬を取りに行った奴等が、無線で助けを呼ぶかも知れねぇから、オレは三上の野郎と二人して手持ちの荷物を積み込むと、トラックの運転席で待機した。

 アメちゃんサイズだから、大人四人は乗れそうな運転席だったが、座席は2つしかねぇし、左ハンドル仕様だから、どうにも座り心地が悪かったぜ。

 それに、一仕事終わって一服付けてぇところだが、ゾンビ野郎に臭いでも嗅ぎ付けられちゃ、たまらねぇからタバコだって吸えやしねぇ。

 三上から手渡されたチューインガムを噛みながら、オレは怪我した足の具合を聞いたのよ。

 骨は折れちゃいねぇが、腱を切っちまったらしく、「膝から下が、思うように動かねぇ」って言ってる。

 仲間が行っちまって、気落ちしている三上の野郎を元気づけるにゃ、バカ話でもしてやるに限る。

 それから暫くオレ達は、ゾンビ野郎から逃げ延びて北海道に辿り着いた話や、北の国の寒い寒い冬の暮らしを愚痴ってた。

 …そしたらよ。…遠くの方で、自動小銃の乱射音が鳴りだした。

 畜生め!。…伊東達が見つかっちまったみてぇだぜ。

 次の瞬間、伊東の野郎の金切り声が、無線のレシーバーから響き渡る。

 「助けに来い」って叫び声に、すかさずオレは、軍用トラックのスタータースイッチを押して、セルモーターを始動させたのよ。

 頼りねぇモーター音を響かせると、修理工場の周りも騒がしくなってきた。

 二、三匹のゾンビ野郎が、通りの向こうから走って来やがる。

 助手席の三上が、オレのレミントンをブッ放してたが、流石に元自衛官だけあって巧いモンだった。

 Tシャツ姿のゾンビ男を、脳天狙って吹き飛ばすと、素早い装填で太ったアメリカおばんの顔半分を狙い撃ちよ。

 そんな様子に、いつもなら冗談の一つも言ってやるんだが、こっちも青い顔しながら、セルモーターとの格闘だから、軽口だって叩けやしねぇ。

 「…こん畜生め!」って、アクセルを蹴飛ばしたら、弱々しいエンジン音と共に、タコメーターの針が動き出した。

 ホッとして、でっかい溜め息ついてる隙に、ゾンビ野郎が一匹、ボンネットの上に取り付きやがった。

 …軍用トラックってのは、オレが昔乗ってたダンプと違って、エンジンフードが突き出したボンネットは有るし、フロントタイヤの周りにゃ、フェンダーがこれ見よがしに乗っかてるから、死人共の取り付ける場所は多いのよ。

 そんなフェンダーを足掛かりに、オリーブグリーンの作業服着たゾンビ男が、抉れた片眼を向けながら運転席に寄ってくる。

 オレはオートマのセレクターを「D」ポジションらしい「1-5」って書いてある位置に入れると、構わずアクセルを踏み付けた。

 六輪駆動のカーゴトラックは、力強い加速を開始したが、小山のような図体だから鋭い加速は望めねぇ。

 工場の外に出る頃にゃ、片眼の腐れ野郎はトラックのバックミラーに手を掛けて、運転席に寄ってくる。


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