第3章3
…五、六匹のゾンビ野郎に追いかけられながら平岡達が逃げてくる。
テメェ達のことが精一杯の伊東や中島のアホどもは、インターの坂道を転がるように先に行っちまった。
オレは、三上の奴に肩を貸しながら、出来るだけ早く走ったのよ。
奴は、苦痛に顔を歪めながら「済まねぇ」って呟いてたが、怪我したって、まともな奴は見捨てねぇのがオレの主義だから、「…熱燗一杯で、チャラにしてやる」って言ってやった。
そんな、くだらねぇ話しながらも、必死に坂を下って行ったんだ。
そりゃあ、マシンガンを抱えた平岡がランボーみてぇに片手撃ちで、ゾンビ野郎を牽制してくれなきゃ、とっくの昔に追い付かれちまったろう。
二百連ボックスマガジンが空になっちまった巨漢の平岡は、M16用の三十連マガジンを装着してたが、フルオート機構しか無ぇマシンガンだから、引き金の素早い操作で弾の消耗を防いでる。
…先に行った奴等が、殺ってくれたのか、道上にはゾンビ野郎が何匹も転がってた。
まだ死にきれてねぇ野郎も居たから、オレ達は、そいつ等の頭を蹴っ飛ばして、トドメを差しながらインターの斜路を下って行った…。
パイパスの高架を降りた先、…中原街道の交差点には、赤さびの四トントラックが横転したまま止まってる。
先に行った奴等が、そいつを背にしながら、周りのゾンビを始末してた。
…手榴弾やグレーネードランチャーの爆発音、機関銃の乱射音まで街中に響いちまったから、近所の奴等に、新しい「餌」が来たことを、教えてやったようなモンだろう。
あっちこっちからゾロゾロと、ゾンビ野郎が集まって来やがって、のこのこしてたら囲まれちまうぜ…。
何とか先陣隊に合流したオレ達は、伊東の指示でゾンビの少なそうな、東の林に向けて、またまた全力疾走よ。
丘陵の藪を強引に突っ切って、やっとの思いでゾンビの追撃を振り切ると、フェンスの破れ目から、ゴルフ場の敷地らしい林の中に逃げ込んだ。
…久々のマラソンで、オレ達みんな、息が上がっちまったんだが、死人の奴等が、どこから現れるか判らねぇから、安心して休めたモンじゃねぇだろ。
ゼェゼェ言いながらも、周りの警戒だけは怠らなかったのよ。
ゾンビの攻撃から、何とか逃げ切ったオレ達は、ゴルフ場の延びきった芝の上で、小休止を取ったんだ。
…残った奴は、偉ぶってる伊東の野郎に、薄ら笑いのスミスってアメちゃん。
自衛隊崩れの中島メガネ猿に、ノッポの城戸崎、大男のランボー平岡、負傷してるがグレーネードランチャー使いの三上、…それにオレの合計七人よ。
「荒野の七人」なら格好は良いが、オレ達が進む荒野にゃ、「死人の群れ」しか居ねぇから、返り討ちにされちまいそうな状況だ。
…トラックは逝かれちまったし、武器弾薬だって、数は少ねぇから、仲間割れしてる場合じゃねぇが、平岡の奴が伊東に、食って掛かってる。
「このままじゃ、作戦遂行は無理だから、撤収のヘリを呼べ」って言ってんだ。
…けどよ。青い顔した伊東の野郎は、「どんな犠牲を払っても、作戦を遂行する」って怒鳴ってるのよ。
オレは、ぶっ壊れたトラックの代わりを、どうするつもりか聞いてやったんだ。
流石の伊東も、疲れた表情はしていたが、「放置されてる車両を、修理して使えばいいだろう」って、まだまだやる気は有るらしい。
…だけどよ。半年も放置されてちゃ、バッテリーが上がっちまって、動きゃしねぇし、修理してる間にゾンビ野郎に囲まれたら、どうすりゃ良いんだい?。
そんな口論してたら、スミスの野郎が英語で何か言いやがった。
伊東の通訳によると、近くに最近日本に返還された米軍の通信施設が有るらしい。
それに、相模原にはアメちゃんの補給基地も有るから、そこまで行けば、武器や車両だって、手に入るかも知れねぇんだと。
獅子鼻のスミスの奴は、片言の日本語で、「ダイジョウブ。シンパイナイ」って話しやがるが、脳天気なアメリカ野郎の言うことだから、そう巧く行くとも限らねぇ。
…まぁ、じっとしてたって始まらねぇから、一息ついたオレ達は、地図を確認しながら、目立たねぇように移動を開始した。
踏み荒らした芝生の痕を見れば、オレ達がどこに向かったか判るだろうけど、ゾンビ野郎は馬鹿だから、そこまで気が付くはずも無ぇ。
…それでもフェアウエイみてぇな広々した所は、なるたけ避けながら、植え込みの間を通って北西の方に向かったのよ。




