不死という呪い
「必殺! グランドスラッシュ!」
「ぐええええええええええ」
こうして魔王は倒された。
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俺は普通の高校生「だった」
突然の交通事故で俺は死んで、あの世のようなところで自称神に出会った。
「のう、お前さんまだ生きたりんじゃろう? 不死身の体をやるから魔王を倒してきてくれんか?」
俺はいやも応もなくこの提案を受け入れ異世界でアイアス・クロノスと言う名前で第二の人生を送ることになった。
その世界は魔王の恐怖が世界を包み込んでいて俺は勇者の家系に生まれた「奇跡の子供」として育てられた。
俺は周囲の大人が驚くほどに力をつけ、魔法もマスターした。
世界で俺にかなう人間はもはや存在せず、後は魔王を倒すだけだった。
そして俺は魔王を死闘と言うほどでもなく割と楽に倒した……その先のことは考えずに……
「さすがアイアスだな! 魔王を軽々倒すなんて!」
「クロノス様、王様が魔王討伐の報酬を渡したいそうです」
「アイアスーさまー! 結婚してー!」
このときの俺は有頂天になっていたと思う、誰だって自分が救世主扱いされれば調子に乗るだろう? 乗るよね?
さて、そうして魔王を倒した俺であるが……やることがなくなっていた。
金は恩給が一生分出ていたし、モテまくっていたので結婚相手にとびきりの美人で性格もいい女の子を娶った、順調なセカンドライフを送っていた。
----五十年後----
「あなた……ありがとうございます。楽しい人生でした」
隣の医者が沈痛な面持ちで言う。
「残念ですが……」
「そうか」
俺は妻を失った。幸いだったと言えることは苦しまずに逝ったことがせめてもの救いだろう。
問題は俺だ、俺はいつ逝くのだろう?
この五十年、全く成長も老化もせず健康そのものの暮らしをしている。
そう、全く姿が変わらないのだ。
俺は今になって神の「不死身の体」の意味を理解していた。
どうやら俺は死ねないらしい。
そこから先は地獄だった、俺たちに子供はおらず伴侶を失った俺にはもはや何もなかった。
魔王の恐怖はもはや老人の昔話になりこの世界は平和そのものだった。
そしてそんな世界に強大な力を持つ俺はこの世界とっての危険因子でしかなかった。
俺は孤独に耐えきれず自殺さえはかった。ただこの体は神様謹製でありどうやら腹に剣を突き立てたくらいではびくともしないようだった。
服毒、爆破、断食、入水。
あらゆる手段で死のうとしたがすべてダメだった。
そうして俺は並みの手段では死ねないことが薄々分かってきた頃旅に出た。
この世界にはきっと俺を殺しきれるやつがいると信じて、死ぬためだけに人目を避けて暮らしていた森を抜け、荒野の果てを目指して歩き出した。