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新シリーズです。
不定期ですが、よろしくお願いします。
アベリィ=アレクサはいわゆる悪役令嬢というやつであった。
自らの婚約者を奪われまいと醜く、無様に足掻き最期には死に絶える哀れな少女。
何度繰り返しても、何度やり直しても彼女は同じ運命を辿る。
しかし、アベリィは最初から嫌がらせや暗殺などやっていなかった。
せいぜい上級貴族令嬢として忠告をしていただけ。
だというのに大きくされた罪を間違いだと否定してくれる者は、誰もいなかった。
お父様、自慢の娘だと抱きしめてくれましたよね?
お母様、可愛い子と微笑んでくれましたよね?
お兄様、ずっと味方だと頭を撫でてくれましたよね?
リアン様、愛していると言ってくれましたよね?
だけどそれはアベリィの記憶の中に消えていくばかりで。そう、まるで嘘のように。
輪廻から逃げ出せないアベリィはついに、言葉を心に響かせなくなった。
「アヴィ、婚約者のリアン君だよ」
「初めましてアベリィ嬢。リアン=ドルトです」
鮮明に憶えている愛しかった人が、幼い姿で目の前にいる。
微笑んでくれていた記憶は、随分彼方にあるけれど。
「アヴィ?」
たしなめる口調で自分の名を呼ぶお父様。
いけない。黙っているままで挨拶をしていなかった。
彼と同じく幼いアベリィは確か、婚約者という存在に頬を染めていたはずだ。
初恋に胸踊る、もはやあったかも分からないほど薄れている思い出を浮かべ、顔に無邪気な笑顔を貼り付けた。
「申し遅れました。アベリィ=アレクサですわ!仲良くしましょうね」
嘘っぱちな言葉を口にして、お互い様だと思いながら。
悲恋ものは初めてですが、頑張ります。