金色の髪
僕はいつも、彼女の風になびくサラサラな金色の長い髪に目が奪われる。
「ねえ、いっつも見てるよね?」
「え?な、なんですか」
僕は突然の言葉にオドオドと目を背けながら答える。
「何って、髪だよ、髪」
彼女は僕に近づきながらそう言う。
「…見てました。」
僕が逃げるのを諦めて、消えそうで、でも、力を込めてそう呟く。
「そんなに金髪がダメなことなの?」
そう言って彼女が自分の髪を触りながら僕に問いかける。
「ちがいます!」
僕は強く強く彼女の言葉を否定する。
「…は?あんたずっと見てたじゃん。物珍しかっただからでしょ?」
「物珍しさに見ていたのは認めます…でもダメなんて、僕は思いません」
「…」
「ただ、貴女のいつも綺麗に輝く、その髪が僕は…」
好きだったから。そう言いそうになって、僕はハッと右手で自分の口を覆い隠す。
「そっか…やっぱり髪しか見てないんだね」
彼女の方を見ると、少し切なそうな顔で僕を見る。
その顔に見とれてしまった僕は、口元にあった手を下して、話し始める。
「似合いませんよ。その顔じゃ」
「は?なに喧嘩売ってんの?」
「そんな顔じゃダメなんです!貴女が笑っていたから、その髪も似合っていたし輝いて見えた。そんな悲しい顔は貴女には似合わないんですよ!」
僕は自分でもびっくりするほど大きな声を出して、そう言っていた。言ってしまっていた。
「す、すみません。僕…こんなことを言うつもりは、すみません!」
僕は自分が言った事を自覚して、頭を下げて謝る。
すると、彼女の足元でポタッと音を鳴らして水滴がはじけ飛ぶ。音に反応して僕は彼女の顔に目を向けると、彼女の瞳から、涙が流れてしまっていた。
「すみません」
僕がもう一度謝ると、彼女はビクッとして我に返ったのか、手の甲で自分の顔を拭う。
「ねえ、あんたさ。私が髪を黒く染めたらもう見なくなる?」
「その、多分それでも、目で追ってしまうかもしれません」
僕は自分でも気持ちが悪いとわかっていながら、それでも彼女に真実を打ち明ける。
「キモイ」
やっぱりな。僕は言われるとわかっていた言葉なのにその言葉に傷ついてしまう。
「ごめんなさい」
「私はさ、誰になんていわれても、この髪が好きなんだ。だけど、あんたには似合ってないって言わせたく無くなちゃった」
僕は彼女の言葉の意味が分からずに黙って聞き続ける。
「だから、あんたが私の髪を輝かせてよ」
僕が頭にハテナを浮かばせて顔をあげるとそこには、夕日の中で輝く金色の髪とその下で僕を見つめる彼女の笑顔が僕の視界を染め上げる。
「あんたのそばで笑顔で居させ続けてよ」
「はい」
僕はただただ彼女に見とれながら、そう返事をしてしまっていた。
最初はさ、バレンタインネタ書くかなーって思ってたら、髪型を変えたお話しもいいなーって思って書いたら、何故かしら、金髪の女の子の話になってた。不思議なこともあるものだねー