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第45話 性分(タマ)

 風羽怜花ふわれいかは高嶺の花だった。


 その並外れた美しさ、超然とした佇まい。ひと目見た瞬間ときから、だれもが【自分たちを超えたなにか】を感じ取り、純不純を問わず心惹かれずにはいられない。そんな存在だった。


 いっぽう、そんな高嶺の花の正体である魔術士【ファレイ・ヴィース】はというと――。


     ◇


「……おい。それ。いい加減歩きにくくないか?」


 呆れた声で俺はつぶやく。

 夕方に神社で待ち合わせ、そこを抜けたあと。俺を自宅へ案内するために先立って住宅街の細道を行くファレイは、さいしょにテンパっていた時と同じく右手と右足、左手と左足を同時に出して、直進する際は道のど真ん中をまっすぐに、曲がる時は直角にとロボットの行進よろしく進み続けており、


「だい・じょう・ぶで・す。もうす・ぐ・です・のでおま・ち・ください・ね」


 と、振り向きもせずに返してきた。

 ファレイはあるじあがめるセイラルおれに対して無礼な態度は絶対に取らない。よっていまのように、背中を見せたまま返事をするなんてことは普段ならありえず、つまりは見たまま余裕がないのだろう。主を部屋に招待するという事態に対して。俺は苦笑して、「まあ、いいならそれでも……」と漏らしたあと、はたと気づいた


「そういや、神社には結界が張ってあったようだけど、ここはどうなんだ?」


「は、は・い。こ・ちらを含・め・て、自宅へ続・く道にはす・べて結・界を。魔・力を持つ者の姿・を消・すたぐいのものな・ので、……それを持たない人間が結界内を通過しても、我々のことは見えません」


 最後にようやく、普段通りの落ち着きを取り戻して立ち止まると、右手の古いアパートを指差した。


「こちらの二階の突き当りの部屋です。お足もとにお気をつけ下さい」


 ファレイは俺をいざなうように、また先立って歩き出す。俺は一瞬アパートを見上げてから慌てて追いかけた。


晴風荘せいふうそう】と書かれたひび割れた壁。

 あちこちはがれかけた塗装。狭い廊下を照らす汚れた電灯に、色あせた木の引き戸、木の窓。

 部屋数は上下それぞれ6の計12。昔ながらの長屋といったふうなこの集合住宅は、どう見ても築50年以上は経過していた。


 まさかというかなんというか、まったくの想像外だったというか……。

 もうファレイの強さは知ってるし、いまみたく必要に応じて結界も張れるだろうし、ふつうの人間にどうこうされるわけはないのは分かるけど。だ、大丈夫なのか? ほんとうに。防犯的な意味で……。


 そもそも、ファレイはどうやって人間界で生計を立ててるんだろうか。高校に通ってるし、おそらく俺の警護も常時してくれているだろうから、バーガーショップの店長とか、和井津わいつ先生……ロドリーのように就職というわけにもいかないだろう。なら葉賀はが兄妹のように魔術を駆使したなにか特別な……自由業的な? あるいはたまにバイトしたりとか……。


 サビた鉄骨階段をカンカンとのぼる俺の頭の中ではぐるぐると幾つもの言葉がまわっていたが、それを口にする前に部屋へ着いてしまう。


 部屋の前からはすっかり夕闇となった空に、周囲で暗く染まる家々の二階部分、そしてそれらの隙間の先には待ち合わせた神社が見えた。ここへはぐるっと迂回して来たようだ。


「どうぞお入り下さい」


「あ、ああ……」


 声をかけられた俺は部屋のほうへ向き直る。ドア横にかけられた木の表札には、手書きで『風羽』とあったが、これはファレイの字なのか? 達筆すぎる……。

 少しの間、阿呆のように字を眺めていたが、ファレイが頭を下げて待っていたので、慌てて入れさせてもらった。


 半畳の玄関には赤いサンダルがひとつ、きちんとかかとを部屋側へくっつけて揃えられている。左手には据えつけの下駄箱があった。

 そしてすぐに六畳ほどの、中央にイス二脚を有したちいさな丸テーブルの置かれた、整頓された台所が目に入る。その右手にふたつ、奥にひとつ扉があるが、ふたつは風呂とトイレで、奥のが居間なのだろう。


「お、お邪魔しまー……す」


 小声で言ったのちに、俺はやや前屈みで靴を脱ぎ部屋へ上がる。それからサンダルに倣って靴を揃えようと振り向いたら、すでにファレイがそうしていて、「あ、ありがとう……」とたどたどしく返した。


「いえ。すぐにお飲み物を用意いたしますので、奥の部屋でお待ちを。どのようなものがよいでしょうか」


 鍵を閉め、自身の靴も揃えてあがった彼女は俺に言った。

 ある意味では人間界アウェーへだたれた自宅ホームへ入ったからか。セイラルのこととなると動揺しまくるかの姿はもはやなく、おそらく従者としての自意識が勝ったいまの彼女は、まるで熟練したメイドのような完璧な立ち振る舞いで、俺のほうが気圧されてしまう。


「あ、じゃ、じゃあ紅茶……とか。ある?」


「――!? はっ、はいっ! 少々お待ち下さいませっ!」


 急に落ち着きが吹き飛んで、テンションMAXとなったファレイは風のように戸棚へ突進、そのガラス戸を開け始めた。……な、なんだ? もしかして紅茶好きなのかな。思わず言っちゃったんけど、好きそうなら、いいか……。


 俺は息をはき、かすかに聞こえてくるファレイのめちゃめちゃうまい鼻歌に驚愕しながら、そろそろと扉を開けて居間らしき部屋へ入る。そこは台所と同じく六畳ほどの和室だった。


 サッシ窓と、その左右できれいに結ばれた青いカーテンを額縁として、夕闇がおおきな絵のように視界へ入る。

 ベランダにはプランタがふたつ置かれ、白や黄色の花たちが咲いている。


 部屋の中央にはちいさな四角の白座卓。右隅にはテレビ。右手壁際にはクリーム色のチェスト、鏡つきの茶色クローゼット、天井近くまである本棚。左手は襖があり、もうひとつ部屋があるようだ。


 チェストの上にはリアル寄りの、クマのぬいぐるみと、青い花が活けられた細い花瓶があって、本棚の中央にはちいさな人形や家が飾られていた。畳はそのままにせず、薄いグリーンのカーペットが敷かれている。壁には風景画と、薄紅色の丸時計がかかっていた。


 はじめて目にしたファレイの部屋は、決して華やかではないが地味でも暗くもなく、明るい生活のかおりがあった。雑誌とかテレビとかにあるような流行の模倣でも、だれかの真似をしているというのではない、明らかにファレイの好み、生活スタイルによって生み出された、彼女の息吹に満ちた空間が俺を包み込んできて、思わず唾を飲み込んだ。


「……る♪ ……よ~♪」


 鼻歌は、いつの間にか耳をくすぐるような甘い歌へと変わっていて、俺の体から力みが抜けてゆく。


 ファレイはたぶん、人間界へ来たくて来たわけではない。セイラルおれに命じられて来たのだ。そしてできれば、俺といっしょに魔法界へ帰りたいのだと思う。けれどここでの生活を【嫌々行っているわけではない】。それはこの部屋を見れば一目瞭然だった。


 俺の命令に従うのが最優先であることは間違いないだろうが、それだけでなく自身の毎日を能動的に楽しみ、味わっている。それは彼女の生きる姿勢だ。人生を、自分の生きる時間をないがしろにしないという。俺のじいちゃんがそうなのですぐに分かった。


 ただ幼稚に快楽を追うのではない。有限の生を理解した、成熟した日々の味わい方。

 やはりファレイは、彼女の言っていた通り87年という年月を生きてきた【大人】だったのだ。いつもの、俺に対する態度からは分かりづらかったが……。


「……ら、なんでだ……」


 俺はひとりごち、拳を握った。

 大人の彼女が敬うセイラルおれの実年齢は、人間界へ転生する前で258歳。

 そうした年齢はとうぜんとして、かの立体映像で見た余裕、佇まいからしても、当たり前に【彼女以上の大人だったはず】だ。

 限りある生を能動的に楽しむことになにより価値があることを知っていて、かつ責任というものを理解している……。それがなんだって……。


 どうして、すべてを放り出して人間界ここへ来た?


 しかも理由が、ライトノベルのような空想的、物語のような青春を現実に送ってみたいからという。馬鹿げている。どう考えてもあり得ない……が。じっさいのところはどうなんだ。


     ◇


――あなたは魔神と呼ばれたほどの男が、ほんとうにそんな理由でなにもかも捨てると思う? ――


     ◇


 ロドリー・ワイツィがファレイへ返した言葉が蘇る。


 もしロドリーの言うように、残した言葉がフェイクだとすると、なぜそんな嘘をつく必要があるんだ。周囲をけむに巻くためか? 俺の覚えていないセイラルおれの性格だと妥当な台詞だから、ちょうどいい隠れみのとなったのか。いや、それとも真実ではないけれど、もしかしたら……。


【少しは、ほんとうのことがある?】――


     ◇


「――おっ、お待たせいたしましたっ! さ、どうぞっ!!」


 ファレイの声と笑顔が俺の思考を断ち切って、耳目を覆いつくす。

 俺は、「……あ! うん! ありがとう……」とぎこちなく返したが、喜びに満ちたファレイには不自然さが伝わらなかったようで胸をなでおろす。そして座卓の上にある、ふたつのカップを目に入れた。


 温かな湯気が立ちのぼり、胸の奥までやわらかに届く、甘すぎない香り。

 紅いそれは白いカップの底まではっきりと見えるほどに透明で、紅茶というよりも、まるで宝石を溶かしたような輝きがあった。


 俺はソーサーごとカップを手に取り、いつの間にか正面に正座していたファレイに「い、頂きます……」と言ってから口をつける。すると唇の裏に、舌の先に触れた瞬間――俺は目を見開いた。


「……ど、どうでしょう……かっ。――あっ! 不味いようでしたら、すぐに入れ直しを……!!」


「……美味い。最高に美味いよ」


 低く、ぽつりと言ってふた口、三口と流し込み、喉を動かす。ファレイの歓喜の声と、なにやらまくし立てている言葉は、鼓動が激しくなったせいでうまく聞き取れない。


 俺は……、この【味わったことのない味を知っている】。

 知っている、どころかこれは……。【俺が作ったものだ】。それを教えたんだ。


 まず……に。次に……に。そして……に。最後にファレイに。……とは? 【だれたちのこと】だ? 名前は、顔は……――。


 紅茶を味わいつつ、表情かおは崩さぬまま思考し続けるが、意識が深まれば深まるほどに記憶は逃げてゆき、やがて破裂して消えた。


 ……どこまでも、お前は思い出せずにいろ、ってことなのか。記憶あぶく水面みなもへ増え続けているというのに、本体は欠片も見えずに……――。くそっ……!


 俺は楽しそうなファレイに気づかれぬように舌打ちし、かぶりを振る。そして溶けた宝石を再び見おろし、おおきくため息をついたところで、話し続ける彼女の言葉がようやく耳に入ってくる。


「……という感じに! 研究を続けまして! も、もちろんまだまだハーティ様には及ばないのですが……あっ!!」


 ファレイは慌てて口を押さえて、真っ青な顔になる。

 俺は訝しげに言った。


「……どうしたんだ。なにか不味かったのか?」


「あ、う、そ、その……! い、いまの……、き、聞かれまし……た……か?」


「いまのって、『ハーティ様に及ばない』ってヤツか?」


「……はい。その……」


 ファレイはうつむいた。俺は目を落とし、紅い輝きを見つめて言葉を投げる。


「……前にお前は、俺が過去のセイラルおれについて聞こうとしたら断ったよな。俺が記憶を思い出そうとするために、セイラルおれの私的なことを聞き出そうとしたら断れと命じられたからと。たぶんハーティというのも、俺の私的なことに深くかかわっている存在なんだろう」


 ファレイはなにも答えずに、青い顔で縮こまっていた。俺はため息をついて続ける。


「あのな。やらかした! みたいな感じになってるけども。ハーティってのは俺の元・従者なんだろう? お前の前にいた……。それはもう言ってたぞ、カミヤと戦ってるときに。まあ、言われても思い出せはしないんだけどさ。関係の深さも分からないし……。ともかくそういうことだから、命令違反というなら、すでにしてるんだよ」


     ◇


――そしてセイラル様の先代従者はかつて【最高のA】とうたわれ――――


――現在は【悪魔の3Sスリーエス】と畏怖される天才・ハーティ・グランベル様。――


     ◇


 あんな命がけの戦いの最中で、注意を払えっていうのも無理なことだろうしな……。

 しかし【最高のA】に、悪魔で天才か。男か女かすら思い出せないけど、相当ごつい感じか、きつい顔つきなんだろうな。……そりゃあ魔神とも呼ばれるだろうよ、過去のセイラルおれは。そんなのの主なんだから。


 ともあれファレイと同じ従者だったってことは、身のまわりの世話だけでなく、たぶんセイラルおれから魔術についても習っていたのだろう。ファレイも【最強のA】とか言われてたし。自分が達人だっただけでなく、教える側としても優れていたということか。……ますますセイラルおれが人間界に来た理由が分からなくなってくる。そんなエリートとでもいうべき存在が……。


「……? ――えっ……」


 なんとはなしに顔を上げて見るとファレイがいない。と思ったら座卓の下で土下座して泣いていた。死ぬとか言わないだけマシなんだけどさあ……。


「……おい。ちょっと。ちょうどいい機会だから言っておくけど」


「!!?? はっ! もっ! ももももももしかして契約解除と、いう……!!?? そ、それだけはどうか、どうか……っ!!」


 きれいなカーペットに額をぐりぐりこすりつけて連呼する。俺は盛大なため息をついて、首をさすった。

 【間違いなく大人なのに、どこから見ても子供】だな、ほんとう。……セイラルおれの前ではさ。


「俺はお前との主従契約を解除する気なんてない。だから、そういう話ではなくて【記憶】のことだ」


「き、おく……?」


 ファレイは顔を上げて、涙で赤くなった目を見せてつぶやいた。

 俺は紅茶のカップを持ち上げて言葉をつむいだ。


「前にも言ったように、俺はセイラルとしての記憶を思い出したい。しかし過去のセイラルおれはそうした態度をよく思っていない。忘れたならそのままで、人間としての生を謳歌しろと。だから『『つまらぬ詮索』で貴重な時間を費やす必要はない』とお前に言っていたのかもしれない。……が、もし人間界にやってきたあの理由がフェイクならば――。【記憶を失くした場合、それを取り戻そうとし始めたら自分の計画に支障が出る】と考えた可能性もある」


 セイラルおれは立体映像で、【ほんらいならば、17歳の誕生日に、魔力と記憶が復活するはずだった】と言っていた。つまりいまの状態は失敗、ということになる。

 だが想定内の失敗だ。そして【そのルートでは】、いちいち記憶を掘り起こそうとするのはよくないと考えている。ラノベ的な青春を謳歌するために人間として生き直す、というのがほんとうの目的でなければ。


 計画の時間リミット的には。17歳というのを起点にして、たとえばその50年後が終点となるとは考えにくいから、おそらくそんなに遠くない未来に【正解は】分かるはずだ。なにもせず、ただ人間として生きているだけで。……事前の、【頭の中だけの計画通りなら】ば。


 だがセイラルおれよ、お前はそんな【性分タマ】か?


 たとえそれが【自分の命令けいかく】だろうとも、言われるままに『はいはい』と従って。自分の意、信念にそぐわない、【正しいとされる】ルートを進むような男じゃないだろう? はっきり同一人物と実感したいまなら分かる。


 人間となり、記憶を失った俺が逆らって、真実に向かおうとするのもセイラルおれは想定済みだ。

 手のひらで踊りつつ、手をぶち破る。そこまで求めて実行したはずだ。

 すべてのことは覚悟のうえで。


 だから、【正解】ではなく、【真実】にたどり着きたいのならば。俺のすべきこと、やるべきことは――。


     ◇


「……だけど。現在いまセイラルおれは――。そうした考えが真実に近づくとは思っていない。たとえ過去のセイラルおれが人間について多くの知識や理解を持っていたとしても、【じっさいに人間として生きた経験とは違う】。緑川晴おれが得たものは……過去のセイラルおれは知らないんだ。だから緑川晴おれは、いまの俺がすべきことをする。……記憶はきっと、俺なりの手段で取り戻す」


 ファレイは俺を見つめていた。苦しそうな表情かおで……。

 自分には過去のセイラルおれから受けた命がある。だから記憶を取り戻す手伝いはできない。

 けれどできれば、できるのならば――。という気持ちが全身からあふれていた。

 それは現在いまセイラルおれに対しての忠誠心もあるかもしれないが、それ以上に。

 彼女も、セイラルおれに記憶を取り戻してほしいからだ。


 ふつうに考えれば分かる。ずっとセイラルおれに会いたがっていたのだから。

 想い出深いのだろう、紅茶を頼んだ時の嬉しそうな様子からも、気持ちの強さが伝わってきた。

 だから緑川晴おれは――そんな彼女の想いにも報いたいとも思った。

 

「……紅茶。もとは俺が作ったんだろう? それをお前に教えた。そして恐らく、先代の従者であるハーティにも。その前の従者にも、……いちばんさいしょの従者にも」


「……!!? セ、セイラル様……っ!! そ、それは……!!」


「悪いが思い出したのは、紅茶の作者が俺であることだけだ。よく味を知っていたからな。それを四人に教えたことも思い出したが、はっきり浮かんだのは最後にお前、ということだけ。それでたぶん、その四人は歴代の従者で、順に、代々教えていったのだろうと推測したんだ。……合ってるかどうかは、答えられないだろうから答えなくていいぞ」


「はい……! 申し訳ございません……!! 答えられません……! 答えら……れ……っ!」


 ファレイは泣きじゃくり、腕で何度も涙をぬぐう。

 悲しい色ではないものを……。それが答えになっていた。

 俺はしばらくその泣き顔を見つめたあと、紅茶の残りを飲み干して、ハンカチを彼女に差し出した。


「……さ。日も落ちたことだし。腹減った! 料理を作ろうぜ。それがきょうのメインなんだからな。っていうか教えるんだっけか。……まず、なにを教わりたい?」


「は、は、はいっ!! で、ではかっ……――唐揚げをっ!! どうかよろしくお願いいたしますっ!!」


 ファレイは身を乗り出して、自身のカップから紅茶がこぼれ出るのも構わずにそう言った。

 そして涙はぬぐわずに、こちらをまっすぐに見つめて……。


 俺のハンカチを、子供と大人の笑顔で抱きしめた。


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