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177章 舞台に飽きし天邪


「何だ、これは……」


 暴虐の嵐に磨り潰されていく配下の妖魔達。

 天災のように圧倒的としかいえないその光景を見ながら、

 終末の軍団、王都侵攻方面司令官を努める闇妖精ロンダルは茫然と呟く。

 偉大なる神ヘルエヌ様より授かった銃器で武装した栄光の第二師団。

 忌まわしき人族共を薙ぎ倒し、この世界に我等の王国をと誓い合った仲間達。

 辛き時も手を取り、時には利用し合った同志たち。

 それが今や……無慈悲で無造作に薙ぎ払われ、喰らいつくされる。

 あの、突如して戦域に現れた巨大な八頭の大蛇に。

 山が胎動したとしか形容できない程の大きさ。

 それが鎌首を擡げ軍勢に喰らい付いたのだ。

 各々応戦するもその巨体に銃器が何の役に立とう。

 砲撃支援を頼んだものの、爆発すらあの大蛇の前には意味を為さない。

 この戦場にいるモノは今やただの獲物にしか過ぎない。

 縦横無尽に暴れ回る大蛇を見ながら、ロンダルは被害を最小限に食い止めるべく一時撤退を指示するのだった。





「ふむ……こんなものか」


 八頭の大蛇が終末の軍団を壊滅していく様を丘の上から見下ろしながら、男は呟いた。

 その口調にはどこか面白がるようなニュアンスが含まれている。

 幾重にも丁寧に染められた布で織られた衣。

 それはその男の身分が高貴なものであることを表していた。

 しかし男はそんな衣を作法など無粋とばかりに粋に着崩し纏っている。

 天邪鬼ことアマノサクガミであった。

 世界に仇為す禍津神の宗主。

 その手には指が一本しか残されてない。


「我が八本指の力の顕現、八岐大蛇。

 なかなかよい手駒だな。

 このペースなら目標に達成できるだろう。

 現状で戦力比は32対1。

 大蛇の削りなら半壊までは持ち込める。

 これなら丁度戦力差は16対1。

 まだマシな戦いとなろう」


 一人呟く天邪鬼。

 その手に光が燈ると一本だけ指が再生された。


「ほう……王都に向かわせた煙羅煙羅を討伐するか。

 爆発させずアレを倒せるのは竜桔公主かその娘、

 あるいは神名担の勇者カムナくらいだが……

 ふむ、なるほど。

 あ奴か。

 念法だけでなく、必滅の理を視るのか。

 くくく……面白い。

 愉快な男だ、アルティア・ノルン。

 この我を飽きさせぬ」


 肩を揺らし陰鬱に嗤いながら天邪鬼は楽しそうに呟く。


「結果が分かっているものほど退屈なものはない。

 だからこその天秤の計り。

 どちらに加担する訳ではない。

 だが拮抗すべく調整はさせてもらった。

 愚者が即興劇を踊るこの舞台……

 精々我を楽しませてもらおうか

 なあ、サクヤ……そしてヘルエヌよ」


 潰走する終末の軍団を見下ろしながら、天邪鬼はどこか皮肉げに口元を歪ませるのだった。





 こりなく新しいシリーズを書いてます。

 ノルン家三兄妹の末っ子、ユナティアの話になります。

 定番の異世界転生モノなのでよかったらご覧ください。

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