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146章 暴露に悶える女給


 託宣の間に合ったテーブルに一同は腰掛ける事となった。

 何を聞けばいいのか少々気が逸る俺。

 そんな俺を心配そうに窘め、声を掛けてくれるミーヌ。

 うん。ちょっと今のは余裕がなかったな。

 深呼吸をゆっくりひとつ。

 よし、ばっちりだ。

 ミーヌに笑って「ありがとう」と伝える。

 お澄まし顔で「どういたしまして」と応じるミーヌだったが、軽く耳元で囁いた為か身体が震え顔が赤くなっていくのは止められないようだった。

 まったく……本人は意固地なのに体は正直である。

 俺は意地悪げに口元を邪悪に歪ませる。

 後でじっくりミーヌに訊いてみよう。

 主にその肢体に。

 何を感じ取ったのかゾクゾクと背筋をそばだてるミーヌ。

 なかなか勘が鋭い(ちっ)。

 こういった俺達のやり取りをニマニマと含み笑うサクヤも気に喰わない。

 頭も冷静になった事だし、色々尋ねてみることにするか。


「さて……そろそろ準備はいいかな?」

「ええ、自分はいつでも」

「拙者もOKでござる」

「ああ、俺も」

「はい、私も大丈夫です」

「じゃあ始めるね……

 まずは皆、無事にカムナガラに辿り着いてくれたようでお疲れ様でした」

「いやいやそんな」

「皆や他の神名担の勇者達の活躍があったから、カムナガラはこうして何とか国の体裁を保ってられるんだよ?

 ホントに感謝しなくっちゃ。ありがとう」


 小さな頭を下げ精一杯の謝辞を行うサクヤ。

 その身はコノハの身体を借りている身とはいえ矮小な人間である俺達に真神たる旧神が頭を下げてるのだ。

 如何に今回の事態をサクヤが重く見てるかが分かる。


「気にすんな、って。こうやって再会できたんだ。

 全然問題ないよ。な?」

「ええ。アルの言う通りですよ、幻朧姫様。

 幸いなことに自分は神名の恩寵により現実世界の意識を維持出来てましたし」

「ん? そうだったのか、恭介」

「ええ。だからこの世界でも最初かっら正気……

 というのも何ですが、確固たる自分であり続けられました。

 王都へ来る道中かつての降魔省東北支部の仲間を捜索し、遭遇しながら活を入れていったのです。

 システムから脱却し、正気に戻るように」

「それが恭介が無事だった秘密か」

「ええ。本来なら楓の様にすぽ~んと現界の事を忘れてしまうのですよ。

 まあ誰かさんは思い出せない方が幸せだったかもしれませんが」

「そういえば、この世界で楓は何をしてたんだ?」

「へ? 拙者ですか!?

 実は、そのう……」

「フッ……笑える事に無駄に身体能力の高いウエイトレスさんをしてました。

 猫耳にメイド服という少々特殊な王都の食堂で、ですが。

 偶然遭遇した時は本当にびっくりしましたよ。

 良く似た別人かと」

「言うな、あの時のことは」


 地雷なのか?

 何故か急激にプルプル震え始める楓。


「だって、ねえ?

『いらっしゃいませ、ご主人様☆』

 って萌え萌え台詞と媚びた動作で猫招きされたらを爆笑せざるを得ませんよ」

「言うなぁああああああああああああああああああああああああ!!」

「『あのね、きょーちゃん。

 かーたんね、あつ~いお注射が』……」

「わあああああああああああああああああああああああああ!!

 言うなったら言うなああああああ!!!」


 本気で取り乱し錯乱する楓。

 何やら人としてのプライドに関わるものがあるのだろう。


「ほらな、楓。

 恥ずかしい過去を他人に暴露されるのって辛いだろ?

 これに懲りたらもう恭介の過去を詮索暴露するなよ」

「うううううううう猛省致しますうううううううううう」


 泣きながらテーブルに突っ伏す楓であった。


「まあ程々時間を置いてから自分が神名を叩き込みました」

 正気に返ってからの楓の羞恥っぷりが見物でしたが」

「ううう……今日は厄日だ」

「まあ楓の消息はこうして分かった訳だが……

 残りの明日香は?」

「明日香も勿論無事ですよ。

 自分達と無事合流して、今は西方地方の解放に尽力してます。

 時にアルとミーヌさん」

「ん?」

「はい」

「霊峰ザオウの件、本当にありがとうございました。

 自分達も気に掛けてはいたのですが、手が回らなかったのですよ。

 遮礎神たる岐神様の結界もあるから大丈夫と高を括っていましたが、聞いた感じかなり酷い状態だったらしいですね。

 王都防衛が最優先とはいえ申し訳ございません」

「何を言ってるんだ、恭介。

 王都の人達の人命だって大事だろ?」

「それはそうですが……」

「幸いな事に丁度都合よく俺達がいた。

 そして無事対応できた。

 今は……それでいいじゃないか。

 な、ミーヌ?」

「うん。アルだけじゃなく、恭介も色々背負い込み過ぎだと思う。

 上手に肩の力を抜かないと潰れちゃうよ?

 まあ私も強く人の事言えないけど」


 言って明るく自嘲するように苦笑するミーヌ。

 俺も賛同しながら苦笑する。


「そうですかね?」

「そうです」

「んだな」

「じゃあまあ……気にしない様にしますよ」

「そうだな……っと、ちょいと悪かったな。

 サクヤの話を遮っちまったか」

「ううん。大丈夫。

 続きいい?」

「ああ。でもその前に」

「うん。分かってるってば。

 まずおにーちゃん達があたしに訊きたい事はアレでしょ?」

「ああ、あの銃器を持った妖魔はなんだ?

 何でこの世界にあんなものがある?」

「あれはね、ヘルエヌがこの世界に持ち込んだ概念。

 それは仮想世界を侵食し、世界法則さえ歪めようとしている……」

「何なんだよ、それは」

「ヘルエヌはね、最北の地に強大な邪神として降臨した。

 居を構え、新しき絶望を醸し出す為に画策し始めたの。

 手始めは今回昼間に遭ったように、侵略行為。

 それがヘルエヌ達の自己証明だから。

 アルは彼等の正体が推察できる?

 ミーヌさんはうっすらと感じてるみたいだけど」

「いや、分からない」

「ヘルエヌはね、あんな若作りしてるけど古の戦争の生き残りなの。

 彼の目的はいつの日にか還り咲かん人を待ち詫びるだけじゃく意欲的に関わる事。

 それが彼の正体……総統に忠誠を誓った最も狂気に駆られた集団」

「いったい何だ、それは」

「かの者達の名は<終末ラスト軍団バタリオン>。

 禍津神や眷属に並ぶ脅威、第三の帝国として北方地方を支配下に治めているの」


 そう俺達に告げるサクヤ。

 美麗なコノハの容姿が、この時ばかりは不吉を告げる鴉の様に思えた。 







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