132章 化身に感嘆す勇者
復活した岐神の力によりナトゥリ周辺の妖魔は完全に抑えられてるようだ。
本来ならここ一月ほどは飛行型妖魔の跳梁が鬱陶しかったとの事。
亜神とはいえ、改めて岐神の力を思い知る。
颯天による空の旅は順調快調。
途中眼下に手を振る人々を見つけ、振り返す。
特にわざわざ寄ってもらったヤクサの村ではムトー老やアーヤ達を含む村人達総出で大歓迎を受けた。
上空からだったから良かったものの、普通に村を訪れてたら大宴会に巻き込まれ三日は引き摺りこまれただろう。
あれは俺用なのか?
酒が杯でも瓶でもなく樽で用意されてる歓迎会場と垂れ幕。
『勇者様はどこまでいけるのか? さあ賭けよう♪』
等と不穏な言動が連なるそれらと樽の数々を上から見て、颯天と共に来た幸せをゆっくり実感する。
皆と語りたいし、二人には念入りに礼を述べたい。
だが名残惜しいが、先を急ぐ身。
皆に別れを告げ俺達は出発する。
大歓声で見送ってくれる村人達。
正直悪い気はしない。
ささやかな達成感を噛み締める俺達。
その後は大したトラブルもなく、昼過ぎには王都まであと数刻というとこまで来ていた。
現在は颯天の薦めもあり、見晴らしのいい山の上で休憩中である。
収納袋から軽食やクッキー、水やジュースなどを取り出し遅めの昼食とする。
大鷲の姿のままでは目立つ颯天だったが、これは仮の姿。
何と人間体にもなれるとのこと。
コミュニケーションも捗るし、出来たら一緒に休憩をしてもらいたい。
ということで、ミーヌと二人掛かりで拝み倒し何とか化身してもらう。
「うあ……」
「渋いな」
感嘆を洩らすミーヌに俺も相槌を打つ。
人間体の颯天は歳の頃は30前後の偉丈夫だった。
流れる白い長髪。
鍛え込まれた肢体。
俊敏そうな印象を受ける鋭利な容貌。
これに渋い声が加わるのである。
俺が女性だったら絶対放っておかないだろう。
街中でも10人に7人は振り返りそうだ。
まあ色々ぐだぐだ言うより、要約するなら颯天は、
「ザ・イケメン!」
「よくそう言われるのだが……
不快ではないも、どう反応してよいか困る」
ビシッと指差す俺に当惑する颯天。
見た目通り堅物なのか、ノリはイマイチのようだ。
「それに顔で岐神様に仕えている訳ではない。
忠誠を以ってあの方に奉仕するのが我が使命だ。
まあ汝らにも恩義は尽きぬがな」
苦笑し応じる颯天。
休憩中ということで軽食などを勧めるも、頑なに固辞する。
まあ自分なりのケジメなのだろう。
敬愛する岐神に頼まれた任務中でもあるしな。
俺は軽食を勧めるのを諦め、代わりに雑談を行うことにした。
「なあ、颯天」
「何かな、客人」
「王都って、どんなとこなんだ?」
「千年王国とも揶揄されるゼンダインはこのカムナガラの象徴ともいえるな。
聖王マサムネによって切り開かれたこの王国は壮麗にして玲瓏。
質実でありながら剛健。
そこに住む人々はまさに絢爛豪華たる心の輝きを持つ。
カムナガラ最強の戦力を有しながら地方の統括自治を認めてるのも大きな要因だろう。
この世界に住む者達にとって王都は聖都。
不可侵な聖域であるな」
「へ~それは凄いな」
「無論この世界の守護者たるコノハ姫の力も大きいが」
「コノハ姫?」
「ああ、人の身でありながら神に至る力を持った方である。
聖王の直系でもあるコノハ姫はこのカムナガラの礎。
人々の心の拠り所だな」
「そんなに凄いとこなのか、王都ゼンダインは」
「うむ。汝ら客人にも是非夕陽に染まるゼンダインを見てもらいたい。
全てが緋に染まるその様は筆舌に値する」
そう言って笑う颯天。
俺達も「それは楽しみだ」と告げ、再度化身してもらいそそくさと旅立つ。
この時はまだ旅を楽しむ余裕があった。
そして時は流れ数時間後。
「こ、これはどういう事だ……!?」
夜も間近に迫った王都ゼンダイン。
夕陽に染まる姿を是非見せたい、と。
颯天が俺達に語った、風光明媚たるその王都は……
壊滅していた。
風邪をひきました。
皆様も体調不良にはお気を付け下さい。
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