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一話
私は彼のことが好きではない。
しかし、嫌いでもない。
そもそも、私は彼の存在すらほとんど知らなかったのだ。
それがなんだ。
いきなり告白なんて。
しかもメールか。
なんて意気地のない男なんだ。
そうは思ったが、私も女である。
しかも、彼氏など今までに一度も出来たことがないとくれば、付き合うというものに興味くらいはあるのが当然だろう。
思えば、ただの好奇心で彼の好意を受け入れたことになり、それ故に後々私は罪悪感と戦うことになるのだが。
それはまあ、私の自業自得というわけだ。
なぜああも軽々しく彼女になってしまったのか。
何度も後悔したことだ。
私という女はなんて最低なのか。
何度も責めたことだ。
私は彼氏がいる。
しかし、好きな人もいる。
これは変えようのない事実だった。