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白亜の檻と、不敗の零(ゼロ)

【前回の答え】

B. 大名に対して、勝手な城の修築や婚姻を制限するため。

武家諸法度は大名を統制するための法律です。Aは「田畑永代売買禁止令」、Cは「禁中並公家諸法度」ですね。繭のような高レートの裁定者でも、焦りとハッキングに頼りすぎると、こうした基礎的な歴史用語の混同を引き起こしてしまう……というわけです。

1.格差の配給

「特区101」での激闘を終えた僕たちを待っていたのは、窓一つない無機質な自動走行ポッドだった。

「けい、これ、馬も御者もいないのに動いてるぞ! 誰かが透明化して押してるのか? それとも中でハムスターが死ぬ気で走ってるとか?」

「……ただの磁気浮上式だよ、太郎。それより、少し静かにしてくれ。脳が、沸騰したヤカンみたいに鳴ってるんだ」

九条のノイズ、三村の残響、そして繭との思考の読み合い。一日で三回もの「盤外戦」を繰り広げた僕の精神は、すでに限界を通り越して、逆に冴え渡っていた。

案内された宿泊施設『アイボリー・レジデンス』は、外観こそ白亜の高級ホテルのようだが、入り口では厳重な生体認証とレートの照合が行われる。

「レート2949、天智慧あまち・けい様。最上階の特別室へご案内します。同伴者の鈴木太郎様は……記録なし。地下のメンテナンス・ドミトリーへ」

コンシェルジュの無機質な声を聞き、僕は太郎に目配せをした。

「太郎、一旦地下に行って様子を見てきてくれないか? 下の方が『特区の生の声』が集まってそうだしな。一通り探ったら、僕の部屋に忍び込んでくればいい。君なら簡単だろう?」

「へへ、分かったぜ。お前の言う『生の声』ってのが、旨い生ハムに変わることを祈ってるよ」

太郎を地下へ送り出し、僕は一人、静寂に包まれた最上階へと向かった。


2.地下からの手土産

部屋は、皮肉なほど完璧だった。

全自動のシャワー、管理された室温、そして冷蔵庫には僕の好みの銘柄の炭酸水が並んでいる。だが、そのすべてが「僕のレート」という数字に媚びを売っているようで反吐が出る。

一時間後、窓のない壁から、陽気な口笛と共に太郎が「透過」して現れた。この世界に来てから太郎の魔法力が上がっているような気がする……その手には、どこからか調達してきたらしい安っぽいサラミの袋が握られていた。

「けーい、面白い話を聞いてきたぜ。地下の連中は、死んだ魚のような目をして、ある『怪物』の噂話で持ち切りだった」

僕はベッドに深く沈み込みながら、炭酸水のボトルを開けた。

「……怪物? 三村や繭以上の『ハッカー』でもいるのかい?」

「いや、逆だ。そいつは『ゼロ』って呼ばれてる。特区ができた当初からトップに居座ってる、いわば生ける伝説だ。レートは……3500もあるらしい」

3500。

僕は思わずボトルを握り締めた。イロレーティングにおいて3500という数字は理論上の極北だ。三千を超えた三村や繭さえ、彼からすれば「効率の良い餌」に過ぎない。

「一番ヤバいのはな、そいつ、何の特殊能力も使わないらしいんだ」

「……何だって?」

「三村みたいな声盗みも、繭みたいな思考盗みもしない。ただ、出された問題に対して、誰よりも早く、正確に、ただそれだけで全員を叩き潰すんだと。レートが上がりすぎて、もう誰も挑まなくなった頃……高レートの獲物が現れたときだけ、上の階から『収穫』に降りてくるらしいぜ」


3.デバッガーの覚悟

「能力を使わずに、純粋なクイズの速さと正確さだけで3500……」

絶望的なまでの「力」だ。

この特区がシステムの穴を突く者たちの掃き溜めだとしたら、その頂点にいるのは、その穴を必要としないほどの「純粋な暴力としての知性」ということになる。

「……面白いじゃないか」

僕は眼鏡を拭き、不敵に口角を上げた。

三村や繭のような「ズル」を封じるために、僕は太郎の魔法を論理の盾へと変換した。でも、それはあくまで相手の不正を無効化するためのものだ。

「僕が身につけた『認識の優先順位(論理の盾)』があれば、少なくとも盤外戦術でハメられる心配はない。その上で、3500の『絶対的な強さ』に挑める……。特区の頂点に、そんな純粋な壁が待っているなら、登る価値がある」

「けい、お前、さっきまで死にそうな顔してたのに、その『零』って奴の話を聞いた途端、目がギラギラしてるぞ」

太郎が呆れたようにサラミを放り投げた。

「……太郎、明日も付き合ってもらうよ。三千は通過点だ。僕は、この世界の頂点にいる『クイズの神様』に、一泡吹かせてやりたいんだ」

僕は太郎の差し出した、安っぽいサラミを受け取り、噛み締めた。

疲労は極限だったが、頭の中ではすでに、3500という巨大な数字をどう崩すかのシミュレーションが始まっていた。

特区の秘密。管理された知性。その頂点へ続く階段を、僕は自分の足で踏み出した。



【問題】

劇中で「3500」という驚異的な数値として登場した「レート(イロレーティング)」。このシステムにおいて、レート差が「400」ある相手と対戦した場合、高い方のプレイヤーが勝つ確率は統計的に約何%と設定されている?

A. 約40%

B. 約65%

C. 約87%


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