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こんな良い女、現実にいるわけがない  ―詰んだ中年男が「取りに行かない恋」で人生をやり直すまで  作者: 早乙女リク


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第9話 やっぱりダメだと思った、最初の数分 (里緒視点)

 最初の数分で、

 やっぱりダメだと思った。


 席に着いて、

 メニューを開いて、

 何を飲むか決めるまで。


 その間に、

 結論はほぼ出ていた。



 神崎は、

 落ち着いてはいるけれど、

 余裕がない。


 言葉にする前に、

 一拍置く癖がある。


 考えている、というより、

 選んでいる感じだ。


 失敗しない言葉を。



 こういう人は、

 一緒にいると疲れる。


 相手に気を遣わせないために

 こちらが先に調整する必要がある。


 私は、

 そういう関係を

 もう望んでいない。



 店の雰囲気は悪くない。


 仕事帰りの人が多く、

 会話も静かだ。


 選んだ店自体は、

 間違っていなかった。


 間違っていたのは、

 この席に座っている理由だ。



 私は、

 早めに切る準備を始める。


 必要以上に話さない。

 深入りしない。


 感情を動かさない。



 「最近、お仕事はどうですか?」


 形式的な質問。


 相手の近況を知りたいわけじゃない。

 会話の流れを作るためだけのものだ。



 神崎は、

 少し考えてから答えた。


 「正直、

  あまり良くないです」


 それだけ。


 理由も、

 改善策も、

 前向きな言葉もない。



 私は、

 内心で息を吐く。


 やっぱり、

 そういう答え方をする。


 ここで

 「でも今は〜」と続けない人は、

 現実的に厳しい。



 これは、

 悪意の話じゃない。


 生活の話だ。


 一緒に生きることを考えた時、

 不安が先に立つ。



 神崎は、

 自分を大きく見せようとしない。


 それは誠実だ。


 でも、

 誠実さだけでは

 関係は続かない。



 私は、

 判断を固めかける。


 ――ここで終わらせよう。


 早い方がいい。


 曖昧に続ける方が、

 相手にも失礼だ。



 そう思った、

 その時だった。


 神崎が、

 こちらを見て言った。


 「今日は、

  評価をしに来たわけじゃないですよね」


 声は、

 静かだった。


 探る感じも、

 責める感じもない。



 私は、

 一瞬、言葉に詰まる。


 図星だった。


 でも、

 それを言葉にされるとは

 思っていなかった。



 「……どうして、そう思ったんですか」


 聞き返しながら、

 少しだけ警戒する。



 神崎は、

 肩をすくめた。


 「なんとなくです。

  もしそうなら、

  それでいいと思ってます」


 言い訳しない。

 引き留めない。


 この人は、

 本当に、

 取りに来ない。



 私は、

 そこで初めて

 判断を止めた。


 やっぱりダメだ、

 と思ったはずなのに。


 その結論を、

 もう一度

 保留にしてしまった。



 この男は、

 ダメだと思う。


 条件も、

 現実も、

 甘くない。


 それでも、

 私が慣れている

 「ダメさ」とは、

 少し違う。


 それが、

 一番、厄介だった。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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