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こんな良い女、現実にいるわけがない  ―詰んだ中年男が「取りに行かない恋」で人生をやり直すまで  作者: 早乙女リク


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第7話 会う前から、評価を終わらせにいく (里緒視点)

 日程を決めたあと、

 私は自分の行動を少しだけ冷静に眺めた。


 勢いではない。

 感情でもない。


 ちゃんと考えた上での選択だと、

 自分に言い聞かせる。



 会う理由は、まだない。


 ただ、

 会わないまま終わらせると、

 判断が宙に浮いたままになる。


 それが、

 一番気持ちが悪い。



 神崎恒一に期待しているかと聞かれたら、

 即答で否定する。


 条件は揃っていない。

 年齢も、仕事も、生活も。


 現実的に考えれば、

 可能性は低い。


 だからこそ、

 私は今回、

 評価を終わらせに行く。



 店は、

 仕事帰りに寄れる場所にした。


 特別感のない、

 普通の店。


 ここで特別な感情が生まれたら、

 それはそれで問題だ。



 会う前に、

 頭の中で基準を整理する。


 曖昧な話し方をするか。

 自分を大きく見せようとするか。

 こちらの反応を探ってくるか。


 どれか一つでも強ければ、

 そこで終わり。



 私は、

 恋愛に期待しているわけじゃない。


 むしろ、

 期待しないための確認だ。


 「ダメだった」と

 納得するための時間。



 電車の中で、

 ふと思う。


 私は、

 なぜここまで慎重なのか。


 答えは簡単だ。


 過去に、

 “条件を無視した選択”をして、

 痛い目を見ている。


 同じことは、

 繰り返さない。



 神崎は、

 悪い人ではないと思う。


 それは、

 もう分かっている。


 でも、

 悪くないだけでは、

 続けられない。



 だから、

 私は最初から

 期待を持たない。


 期待しなければ、

 失望もしない。


 これは、

 自分を守るための態度だ。



 待ち合わせ時間が近づく。


 私は、

 深呼吸を一つする。


 今日の目的は、

 判断を終わらせること。


 好意を確認することでも、

 距離を縮めることでもない。



 もし、

 「やっぱりダメだ」と思えたら、

 それでいい。


 その時は、

 きちんと切る。


 曖昧なまま続けるより、

 よほど誠実だ。



 私は、

 自分にそう言い聞かせて、

 改札を出た。


 この先にあるのは、

 未来じゃない。


 結論だ。


 そう思っていた。


 ――この時点では。

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