第17話 私はもう、中心にいない (里緒視点)
朝から会議が続いていた。
決めることが多い。
判断を求められる場面も多い。
私は、
いつもの役割に戻っている。
*
資料に目を通し、
意見をまとめ、
必要なところで口を開く。
迷いはない。
少なくとも、
仕事の上では。
*
ふとした瞬間に、
神崎のことを考えていない自分に
気づく。
意識して避けているわけじゃない。
ただ、
中心にいない。
*
以前は、
一日のどこかに
引っかかりがあった。
連絡が来ないこと。
何も起きない時間。
それらが、
思考の端を占めていた。
*
今は違う。
思い出せば、
そこにある。
でも、
思い出さなければ、
そのまま流れていく。
*
私は、
それを悪いことだとは思わない。
生活とは、
そういうものだ。
中心に置かれない関係は、
自然に薄まる。
*
昼休み、
同僚と他愛のない話をする。
仕事の愚痴。
近況。
予定の話。
神崎の名前は出ない。
出す理由がない。
*
それでいい。
私は、
誰かを中心に
日常を組み立てる立場に
もういない。
*
午後の仕事を終え、
帰り道を歩く。
スマートフォンを
何気なく確認する。
通知はない。
それを見て、
胸が動かない。
*
安心でも、
落胆でもない。
ただ、
確認しただけだ。
*
私は、
この感覚を
ちゃんと覚えておこうと思う。
神崎との関係は、
始まっていない。
だから、
終わってもいない。
でも、
中心ではない。
*
それは、
選択の結果だ。
彼が動かなかったからでも、
私が我慢したからでもない。
私が、
自分の生活を
前に出しただけ。
*
強がりではない。
これが、
私の通常運転だ。
*
家に着き、
バッグを置く。
一日の終わりに、
今日を振り返る。
神崎のことを
考えた時間は、
ほんのわずかだ。
*
私は、
それを確認して、
少しだけ頷く。
私はもう、
中心にいない。
それでいい。
少なくとも、
今は。
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